ミステリクラシック  ③『黒いハンカチ』  ④『笑う警官』 | ミステリ好き村昌の本好き通信

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ミステリクラシック 2  ③『黒いハンカチ』 【小沼 丹 作】

 

 昭和30年代に入り、太平洋戦争の傷跡が薄れはじめる兆しが見えるようになってきた日本。

 その頃日本に登場した、コージーミステリの元祖(日本の)と言われている作品である。

 

 A女学院の若い英語教師ニシ‣アズマが、教員生活の日々の中で遭遇した「日常の謎」的な事件や出来事を、持ち前のカンの良さと洞察力で解決していく連作短編集である。

 作者は【小沼 丹(おぬま たん)】大学教授で、作家としても、幾つかの文学賞を受賞している人である。

 本作は1年間婦人雑誌に掲載されたものであり、謎自体はそれほど驚くことはない。が、昭和30年代のホワイトカラーや上流階級の家庭の雰囲気がよく表現されているとともに、当時の東京の風俗や世相も生き生きと描かれている。

 主人公ニシ‣アズマのお嬢様っぽい言動もイヤミがなく、微笑ましい。肩の凝らない作品である。

 

     ④『笑う警官』 【M・シューヴァル P・ヴァール 作】

 

 世界ミステリ史上あまりにも有名なこの作品を、このコーナーで取り上げるのはいかがなものかと思いながらも、、久しぶりに読み直して、改めて自分が感じた事もあったので、この作品を紹介したいと思う。

 

 北欧ミステリのレジェンンドとでも言うべき本作(1960年代シューヴァル、ヴァールのコンビが書いた『刑事マルティン・ベックシリーズ』の代表作)は、まことに素晴らしい!美しい!の一語に尽きる。(捜査の過程から真犯人の確定と事件解決という作品構成とその完成度が)

 1967年冬のストックホルムー夜11時頃ある市営バスの車中で発生した大量虐殺事件ー被害者の中に非番の刑事がいた。しかもピストルを持って‥‥ー。

 なぜその刑事はバスに乗っていたのか?乗客、運転手の全員が殺害され、(即死を免れた一人の乗客は病院で死ぬ)目撃者もいない。本庁殺人課捜査主任の主人公マルティン・ベックとその仲間たちがこの難事件に挑み、紆余曲折のすえ、真犯人を見つけ出す。警察小説の王道的なミステリである。

 地道な捜査のほんの些細な手がかりが、真相に辿り着くヒントになる。刑事一人一人の存在感と人間性の描き方もリアルでとてもよい。ぜひ読んでいただきたい。