『特捜部Qシリーズ』 2 いくつかの作品について ユッシ・エーズラ・オールスン作 | ミステリ好き村昌の本好き通信

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『特捜部Qシリーズ』  いくつかの作品について

 

 それぞれ良い作品であるが、その中でもローセ初登場の第2作『キジ殺し』は凄惨で、人間が内面に持っている狂気が全編を覆っている。

 かって寄宿学校で、性と暴力を共有した仲間同士が、後年憎しみ合う間柄になるが、特捜部Qのメンバーの尽力で、事件が解明され、犯人たちが全員破滅していく。

 そのすさまじさとストーリー展開の面白さは、特筆ものである。

 

 また第4作『カルテ番号64』は、デンマークという国の恥部ともいえるようなある法律(日本にも同じような法律が平成年代初期まで残っていた)に翻弄され一生を終えた、事件のカギを握る女性を中心とした、社会性とミステリが見事に融合した秀作だと思う。

 

 第7作『自撮りする女たち』は福祉国家として、世界有数の国デンマークの社会保障制度を物語の柱にして、それを利用して生きていく若い女性たちと、ソーシャルワーカーの女性との心理的確執、そこから起こる事件を描いた作品である。

 そこに、特捜部Qの活躍や、ローセのこれまでの人生を支配してきたトラウマの解明などの顛末が重層的に絡んで、最終的にはそれ等の全てが、読者の納得できる形の幕切れとなって、完結する‥。作者の手腕に脱帽である。

 

 登場人物の名前の覚えにくさや、やや冗漫な章立て等に不満を感じる方もおられるかもしれない。が、それを補ってあまりあるストーリーの面白さとテンポ感は、東野圭吾、池井戸潤等の日本人作家の比ではない。

 シリーズのどの作品からでもよいので、まずは、一読することをおすすめする。