『二月の勝者』と題材としての中学受験 | 2022中学受験(息子)と2027中学受験(姪) -A stitch in time saves nine-

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2022中学受験を終了した男子を持つ父のブログ
淡々と息子の学習(主にテスト)の記録をつけていたブログです。
息子は開成・筑駒をはじめ受験校全てに合格しました。
現在は2027年組の姪っこの中学受験アドバイザーです。

『二月の勝者』、このブログではこれまで触れていなかった。

 

単に読んでいなかっただけなのだが、中学受験生を持つ保護者は結構皆さん読まれていて、かなり評価も高いようなので読んでみた。

 

感想としては、かなり面白かった。中学受験塾や保護者の様子や人間関係をよく捉えているように思う。もちろんフィクションなので、全てが実話に根ざしたエピソードではないだろうが、いずれも現実にありそうなドラマが描かれていて、読者の共感を呼ぶのが人気の理由だろう。

 

ネタバレは御法度なので詳細は書かないが、出てくる生徒達がどのような結果になるのか先が気になる。受験を描いている以上、全員がハッピーエンドというのはありえないだろう。誰が志望校に合格し、誰が不合格なのか、その時の子供や保護者の気持ちの深いところまで描いてくれると期待したい。

 


さてこれまで中学受験漫画というのは聞いたことがない。しかし、よく考えるとこれほどまでに物語の題材として優れたものはなかなかないように思う。

 

ちょっと考えても①ある程度普遍性のある重大な目標に向け努力する姿と達成・挫折、②ライバルや仲間との人間関係、③両親との人間関係、④塾講師との人間関係、と、物語に必要な要素が詰まっているし、これらが絡みあうのが中学受験(の物語)だ。しかも各生徒によって背景やストーリーが全て異なるわけである。

 

例えば、中学生や高校生が、スポーツで全国大会優勝を目指して努力するいわゆるスポ根漫画や物語はこれまでも山ほどあるし、名作もたくさんある。ただそこには上記の①、②、④(監督や先生との関係)は含まれても、③の要素はなかなか濃密には描きにくい。中高生は親の手を離れつつあるからだ。

 

また、小学生の学校での物語を描いた漫画や小説もたくさんある。小学生を描く物語では、上記の②、④に加え、③の両親との関係は描きやすい。他方で、小学生において「ある程度普遍性のある重大な目標」というのは、なかなか難しい。スポーツ大会等はもちろんあるだろうが、甲子園を目指す、とか国立競技場を目指す、というものに比べると、小学生スポーツは題材になりにくい。従って、普通の小学校生活を描こうとすると、①の要素は入れにくい。

 

小学生にとっての「普遍性のある重大な目標」、という普通ではあまり考え難いもの、それが中学受験であり、上記①から④の要素を兼ね備えた世界ということができるかもしれない。

 

そこに着目できたのが『二月の勝者』の作者の勝因と言えるような気がする。

 

そう考えると、中学受験というのは特殊な世界だと改めて思う。小学生が、親子二人三脚で、ある重大な目標を目指す、しかもその目標には一定の普遍性がある、というのは他に思い付かない。それに実際に親として関わる経験は、実は何物にも代えがたいのかも知れない。

 

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