数十年前に開成中不合格だったある友人の話 | 2022中学受験を目指して -A stitch in time saves nine-

2022中学受験を目指して -A stitch in time saves nine-

2022中学受験男子を持つ父のブログ
淡々と息子の学習(主にテスト)の記録をつけていくブログです。

まず、今年の中学受験、良い結果が出た保護者の皆様、大変おめでとうございます。最初にこの記事は皆様の努力の成果を貶めるような意図は一切無いことをお断りしておきます。

 

さて、この記事は、残念ながらお子様が不本意な結果となった方に向けて書こうと思います。ところどころ身バレ防止のため変更を加えていますが、大筋は実話です。

 

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遡ること数十年前、四谷大塚に通っていた私には大変優秀な友人がたくさんいました。その中で、特に仲良くしていた友人にO君がいます。

 

O君との出会いは、私が四谷大塚に通い始めた5年生の後半でした。たまたま隣に座ったO君が、テスト用紙に自宅の住所を書くのを何の気なしに見たら、なんと私の自宅のかなり近くに住んでいたことが解ったのです(注:かつて四谷大塚は自宅に日曜テストの採点済み答案を郵送するため、テストの日に住所と宛名を受験生自身でテスト用紙に記入していた)。それでテストが終わった時に話しかけて、一緒に帰宅することになりました。子供ですし、中学受験という同じ目標を共有しているので、仲良くなるのに時間はかかりませんでした。

 

O君は四谷大塚の会員の中でも、最上位校舎である中野校の常連で、6年生の時は一度も下の校舎に落ちなかったと思います。今で言えばサピックス東京校のα上位から一度も落ちなかった、というイメージです。テスト結果の掲載される「週報」では毎回のように上位に名前が載っていました。

 

友達になってすぐに、O君は「開成中を目指してる」と私に言ってきました。私自身はまだ志望中学などなく、ぼんやりしていた時期です。開成中に行きたい理由をいろいろと私に言っていました。親に押しつけられたわけではなく、ああO君は本当に開成に行きたいんだな、と思いました。

 

先に書いたように、O君の成績はずっと上位で安定していましたし、開成合格に向けて凄く努力していました。私なんて到底及びもつかないくらい、一生懸命勉強していたと思います。成績のアップダウンが激しい私にとっては羨望の対象です。当時から超難関だった開成中でしたが、O君は鉄板だろうと思っていました。

 

ところが蓋を開けてみると、O君は開成中に不合格だったのです。理由はわかりません。数年後にO君に聞いても、体調も良好だったし、感触もそんなに悪くなかったんだけどな、と言っていました。あまりにも予想外の結果に、試験の怖さを思い知りました。

 

そしてO君は、当時4つあった学芸大の附属中学の一つに入学しました。今よりもずっと学芸大附属中学のレベルは高く、いい学校でしたが(今ももちろんいい学校です)、O君は開成中を熱望していたので、意に沿わない進学であったことは察せられます。

 

O君と私は自宅の最寄り駅が同じなので、中学入学後もちょくちょく駅で顔を合わせ、途中まで一緒に通学することもありました。中1の最初のころは覇気がないように感じましたが、会う度にみるみる元気なっていったのを覚えています。O君はサッカー部に入ったと言っていて、真っ黒に日焼けしていました。O君の通う学芸大の附属中は、当時サッカー部の層が薄く、小学生の頃、受験直前期を除きずっとサッカーをやっていたO君は1年生からレギュラーに抜擢されたらしいのです。部活や大会の話をするO君はとても生き生きとしていました。

 

また、学芸大の附属中は共学です。共学といえばやはり女子の話が出てきます。サッカー部で活躍するO君は女子から結構モテたらしく、バレンタインの頃は正直会いたくないと思いました。何個チョコもらった、みたいな話を聞かされ、男子校に通う私は嫉み以外の感情が起こりませんでした(笑)。

 

O君は成績の自慢などしないタイプでしたが、中学での成績が抜群にいいであろうことは想像できました。

 

中学2年頃になると、O君は「俺、負け惜しみじゃなく、今の中学に入ってほんと良かったと思うよ」と言うようになりました。私は中学受験後の落ち込んだO君の様子を知っていたので、それを聞いて嬉しくなったのを覚えています。

 

さて、この手の話はだいたいここまでですが、この話はここでは終わりません。続きがあります。

 

学芸大の附属中は完全中高一貫校ではなく、ご存知のとおり附属高校への内部進学時にも受験をする必要があります。現在の仕組みはよく知りませんが、O君の話からすると、附属高校には附属中学の生徒の半分くらいしか行けないということでした。また、生徒は当然不合格だった時のことを考えて、一般の高校受験生と同様に受験勉強をした上で、他の私立や都立高校にも願書を提出するということでした。

 

そんな話を聞くと、中高一貫のモラトリアムを満喫していた私は、O君に悪いと思いながらも、ああ中高一貫でよかったと内心思っていました。ただ一方で、サッカーをやりながら高校受験のための塾に通い、勉強も頑張っている(そして女子にもモテている・笑)O君を尊敬するような気持ちもありました(決してO君にはそうは言いませんでしたが)。

 

そして、高校受験の時期が迫ったある日、O君は私に言いました。

「俺、学芸大附属高校を受験しないことにした。今の中学は楽しいし、友達もたくさんできた。少なくとも友達の半分は附属高校に行くし、きっと楽しいと思う。でも、高校受験の勉強がてら、うちの高校以外のいろんな高校についても調べたんだ。そして、中学受験の時は1次の抽選で落ちたけど、筑駒に行きたいと強く思うようになった。筑駒を受験するためには、同じ日に高校受験のあるうちの附属高校は受けられないんだ。」

 

その話を聞いた時、当時の私はO君への尊敬を通り越して、もはやなんて変わった奴なんだという印象を持ちました(笑)。おそらくO君にとっては、附属高校に内部進学するのは朝飯前だっただろうし、友人も大勢進学するのに、なぜあえて茨の道を選択するのだろう、と思っていました。確かに筑駒高校は、今も昔も高校受験界の最高峰です。しかし、学芸大附属高校も、一般入試は非常に難しく、超難関と言っていい高校です。そのような高校に容易に内部進学できる権利をフイにしてまで筑駒を目指すなんて、常識的な考え方からはありえないものでした(今にして思えば、よく親御さんが許したものだと思います)。O君が当時どれだけの成績をとっていたのか私は知りませんでしたが、さすがにリスクが高すぎるんじゃないかと思いました。

 

後からO君に聞いた話ですが、筑駒への思いは、当時O君が通っていた高校受験の塾の先輩への憧れによるものからきていたそうです。その先輩が、筑駒は本当にいい学校だから、O君も是非こいと強く誘っていたそうなのです。また、その塾で極めて成績がよかったO君は、自分の力を最難関高校を受験することで試したい、という気持ちもあったといいます。

 

そして中学3年生の3月、また駅でO君に会いました。受験の結果は、灘・開成・筑駒に合格し、筑駒に進学する、ということでした。こいつ、本当にやりやがった。。と驚嘆しました。数十年前であっても、いまと変わらず灘・開成・筑駒の3つの高校全てに合格するのは至難の業です。サッカー部でレギュラーを張りながらそれを成し遂げることは、並外れた才能と努力が必要な筈です。

 

ちなみに開成高校については、合格した上で袖にする、という形になったので、下世話な私はさぞ気分がよかったんじゃないかと本人に聞いたことがあります。本人曰く、中学生活が楽しかったので、中学受験で開成に落ちたことはもうとっくに自分の中で消化していて、また高校受験の第一志望は筑駒だったので、あまり開成への執着はなかったそうです。ただ、折角だからリベンジしてやろうという気持ちがないと言ったらウソになるね、と言っていました(笑)。

 

その後、筑駒に進学したO君は、複数の部活を掛け持ちし、楽しい学校生活を送っていたようです。そして当然のように現役で東大に入学し、今も社会人として大活躍しています。

 

そして、私との腐れ縁も続いています。

O君は私と飲みに行くとよくこう言います。

 

「中学受験で開成に合格してたら、今の自分はなかった。」

 

「中学受験で開成中に合格していたら、学芸大附属中と筑駒で過ごした日々はなかったし、勉強と部活の両方で充実したあの時間は得られなかったかもしれない。高校受験を経験できたのも自分にとっては大きかった。何より、一旦挫折しても、努力を続ければそれ以上の成果をあげるチャンスがある、ということを人生の早い段階で学ぶことができた。」

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中学受験の準備をした3年間、あるいはそれ以上の期間の努力が結果に結びつかなければ、残念な気持ちになるのは当然だと思います。また、特にお子様は気持ちの整理をするのに、長い時間がかかることもあると思います。

 

私はまだ息子の中学受験を経験していないので、不本意な結果となった保護者の皆様のお気持ちを完全に理解できていないと思いますし、お子様のケアの方法など何のノウハウもありません。そのような立場の私が何かを申し上げるのは僭越かと思います。

 

ただ、仮に息子が不本意な結果しか得られなかった時には、このO君の話をしようと常々思っています。今年、不本意な結果だった保護者の皆様にとっても、もしかすると何かの参考になるかもしれないと思い、憚りながらも記事にすることとしました。

 

 

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