(いよいよだわ!)

   よねは心の中で気合いを入れた。



   夢の中で老人に言われた一言……

「はじめて話をした者から重要な言葉を聞く。その言葉を記憶しておくのじゃ」を実行するために。


   音羽先生が喋ったことは一言一句洩らさずノートに書き込んでやる!

   よねは鉛筆がしっかり揃っているか、折れている鉛筆はないか、もう一度筆箱の中を確認した。


 コッ、コッという革靴の音が廊下の向こうから響いてきた。その音がだんだん近づいてくる。教室中に走る緊張感を味わっていたのは、よねだけではなかったろう。


 あの銀幕スターの音羽時次郎が、この学校に、それもこの教室に入ってこようというのだ。緊張しない方がおかしいではないか。


   それに「演劇学」の授業は、このクラスが最初なのだ。一体、音羽先生はどんな風に入ってくるのだろう?  みんなにニコニコと手を振りながら、愛想を振りまいて入ってくるのだろうか。

   それとも音羽先生も緊張をして、むずかしい顔をして入ってくるのだろうか。


 ガラガラッと、教室の扉が開いた。

   紺の背広に身を包んだ、スラッとした男性が入ってきた。紛れもなく音羽時次郎だ。


   甘いマスクなのに、凛々しさを感じさせる眉と目、真っ直ぐに伸びた鼻筋、そしてキリッと引き締まった口元。時次郎とそんなに年が違わない兄の正司と、よねは頭の中で比べてしまい(比べる方が間違ってるわ)と頭を振った。


 それにしても、時次郎は意外と地味な服装だ。大スターといわれるくらいだから、燕尾服とかタキシードでビシッときめてくるのかとよねは思っていたからだ。


(まっ、いくら何でもそれはないか)よねはあらぬ想像をした自分を心の中で笑った。


「きりーつ!」石坂タカの甲高い号令が教室中に響いた。江岡は号令をどうやら石坂に譲ったらしい。


(江岡君もいいとこあるじゃない)

   よねはそう思いながら、ふとサチを見ると、さっきまではあんなに緊張しまくっていたのに、いつの間にやら頬を薄いピンク色に染め、うっとりと時次郎が歩く方向を追っている。


(まあ、サッちゃんがホの字になるのも無理はないわね)

   別に時次郎のファンでも何でもない私でさえ、ドキドキしちゃうもの。よねはそう思って時次郎が教壇に上がるのを姿勢を正して見ていた。


 時次郎が生徒たちと向かい合い、手に持っている何冊かの本を教卓に置くのと同時に「礼!」と石坂が号令をかけた。


   みんなの礼と少し間を置いて、時次郎がスッとお辞儀をすると前髪がサラッと落ち、顔を上げるのと同時に頭をサッと斜め横に振ると髪の乱れは一瞬にして元に戻っていた。


「着席!」という石坂の声が、さっきよりも上ずっているようだ。よねは違う件でこの授業を緊張しているのだが、周りをチラッチラッと見ると、女子のほとんど、いや全員がウットリとした眼差しを時次郎に送っているのがよくわかる。


 時次郎がニコニコッとした。真っ白い歯がキラキラッと光る。

「えーっ、こういう場でみなさんと話をするのがはじめてで……、何だか非常に緊張をしていますが……」


   そこまで言うと、時次郎は一回唾を飲み込んだ。喉が渇いてしまい次の言葉が出てこないようだった。時次郎が緊張している姿がよねにも伝わってきた。


「僕が今まで学んできた、そしてこれからも一生を懸けて学んでいく『演劇』というものを、みなさんと今日から1年間、共に勉強していきたいと思います」


   時次郎がただそう言っただけで、誰からともなく、拍手が沸き起こった。

   単なる挨拶ではあったけれど、よねは時次郎がいま言ったことをノートにせっせと書いていた。


   よねは時次郎が喋っていることはすべてノートに書き写すつもりでこの授業に望んでいるのだ。せっかくノートに執っていたのにと思いつつ、よねも仕方なく書く手を休めて、みんなと一緒に拍手をした。


 時次郎は白い歯をこぼしながら、みんなの拍手を手で制した。

「僕が話をするたびに拍手をしていたら、みんなの可愛い手の平が腫れてしまう。拍手はよそう」




ワカバよもやまコーナー 

(102)


   以前からワカバは、お役に立ちたいと思っていたことがあります。

   それは「子ども食堂」!

   この日本で…十分な食事を摂取出来ないでいる子どもたちがいる。最初は信じられませんでした。


   外国で大食いして周りを驚かせているバラエティー番組があるやん❗️ワカバは最初、この画像を面白おかしく掲載しようと思っていました。

   でも、やめました。その代わり「子ども食堂」に関することを載せたいと思ったんです。


   でも残念ながら、ワカバの住む篠竹村に「子ども食堂」はありません。

   それを大叔父に相談したら、すぐに大叔父の住む街の「子ども食堂」に行けることとなりました。毎週水曜日の週1回午後5時半〜7時まで開かれる「子ども食堂」だそうです。


   そのような折にMayuさんが「Mayuさんのブログ」で、次のように書かれていました。

   Mayuさんの了解を頂き、リブログさせていただきます ⬇️



   ちょうど同じ時期にMayuさんのブログと出会えて、素敵なご縁です💖

   Mayu さん、ありがとう🌸🌟🌸🌟🌸🌟🌸🌟🌸🌟


   そして先週、大叔父がワカバを連れて「子ども食堂」へ連れて行ってくれる事となりました。ボランティア活動は出来ないけど、寄付も大歓迎との事なので、それでは寄付させていただこう…とその日を楽しみにしてたのに…やはり、大々残業💦


   結局、大叔父が1人で行ってくれました。

   大叔父がワカバの代わりにいろいろ聞いて来てくれました ⬇️(大叔父さん、ありがとう)


① 食事代は、子ども100円、大人200円


②「子ども食堂」の拠点…社会福祉協議会のビルは、キッチンが無く、火気厳禁のためガスコンロを使えないとの事。


③ 去年のクリスマスの写真掲載OKをもらえたよ〜って🎄🎁🎅🌟



④ 調理に火を使えないので、卓上IHコンロで具沢山お味噌汁を作っているそうです。肉と野菜がドッサリ入っていて美味しかったって✨💖✨💖



⑤ ⬆️ 手作りランチョンマットは、当日の誕生日のお花と週替わりポケモンの絵 ⬇️



⑥ 先日、ピザーラさんからピザの寄付があり、昨年のクリスマスには、セブンイレブンさんからチキン200本の寄付があったそうです🍗⸒⸒


   今度はワカバも子どもたちの笑顔を見に行こうと思います☺️☺️☺️☺️



第20章「音羽時次郎のオーディション」⑤  へつづく

※ 一部 SNS よりお借りした画像があります。

「およねさん」


 今回の主な登場人物…


土志田(どしだ)よね…この物語の主人公。土志田家次女。朝美台(あさみだい)尋常小学校4年生。まだ自分にもわからない未知の能力を秘めている切れ長の目を持つ10歳の女の子。


音羽 時次郎 …23歳の時代劇若手スター。朝美台小の「演劇学」講師となる。秘密の過去を持つ。


(ブログは毎週火曜日0時2分に更新予定です)