辰五郎がそこまで言うと「いや、辰五郎さん、仕事中、手を止めさせてしまって悪かった。老いぼれはちょっと家で休んどるよ。ハッハハハ……」

   惣八は笑いながら、背中を見せてさっさと行ってしまった。



 辰五郎は、惣八のうしろ姿を目で追いながら、店先に出て来たきせにポツリと呟いた。

「なあ、母さん。手嶋組が解散した時、何か問題が起きていたかなぁ?」


「いいえ、別に……、何もなかったんじゃないですか。もう十何年も前のことですからうる覚えですけど……。まあ、あの時はあまりに突然の事だったんで、みんなびっくりしましたけど。それがどうかしたんですか?」

   きせは何で今頃そんな昔のことを言い出すのかと不思議な顔をして辰五郎を見た。


「うん、米寿さんがこの間、ちょっと気になることを言ったんだよ。手嶋組を解散に追い込んだのは、まるで自分のせいみたいなことをね……。今そのことを何の気なく親方に尋ねたら、逃げるように家に帰ってしまったんだ。まあ、私たちの知らない世界のことだ。何かあってもおかしくないんだろうが……。ちょっとそれが気になってね」


 するときせは思い出したように「そういえば解散をするといって、惣八さんが私たちの家一軒一軒に義理堅く挨拶に来ましたけど、七人衆の若い人たちは来ませんでしたよねぇ。どんな時も惣八さんと行動を共にしていたのに……」と辰五郎をじっと見た。


「うむ、そういえばそうだった。確か親方は『あいつらは早く足を洗って、定職につかせるためにそれぞれの田舎に帰した』と言っていたなぁ。あの時は、別に不思議にも思わなかったが……」


 辰五郎もきせも昔を思い出しながら、4月の空を仰いだ。もうすぐオレンジ色の太陽が西に傾き始める。

    よねはそんな二人を見ながら、思い出したように麻美と急いで2階に上がって行った。


    明日の新学期の準備をするために。といってもお互い何を着て行こうかということだけで頭の中はいっぱいだ。




 今日は新学期初日。集団登校がなくなり、よねは久しぶりに麻美と二人きりで学校に行った。


    よねも麻美もそれぞれ水色とピンクのブラウスを着たがったが、きせにレースのついた白のブラウスにしなさい、と言われしぶしぶお揃いの格好となった。

    それに春といっても風が少し冷たい。紺のカーディガンを重ねた。


    隣が洋服屋だったので、格安でよねたちは好きな洋服を作ってもらえたが、自分たちが主役でないときはいつも質素だ。


 学校が近づくにつれ、ベレー帽をかぶった可愛い小学生に何人も出会った。

    新入生だ。紺のジャンパースカートをはいてる子や、チェックのスカートや生意気にネクタイをしめてる女の子もいた。


    男の子は、半ズボンの子は黒いタイツをはいている。やはりベレー帽をかぶっているので、小さなエロ河童がいっぱいいるような感じがして、よねは少しおかしくなった。


 校門には大きな日の丸がはためいている。よねも麻美も校門から校庭に入るときに一礼をして、すぐに二宮金次郎の銅像がある所へと急いだ。


    そこには、大きなベニヤ板に各学年のクラス編成と担任の先生の名前が張り出してあるのだ。


 よねは自分の名前を探した。手っ取り早く5年3組に目を動かした。

(あった、あった!  しっかりと。出席番号も15番のままだわ)


    よねは少し小躍りしながら、麻美に目をやった。すると麻美もニコニコしている。

 「お姉ちゃんと同じ3組になった。直子ちゃんも一緒だ」と喜んでいる。


「で、担任の先生は?」

    よねがそう聞くと、麻美の顔がみるみる暗くなった。


 「先生は……、槙田(まきた)先生」

    麻美の声が小さくなった。

 「あら、槙田先生、いいじゃない。だって体操の先生よ。いろんな運動教えてもらえるかもよ」


「お姉ちゃんはいいよ、体操が得意だから……。私は苦手だもん」

    麻美は今にも泣き出しそうな憂鬱な顔になっている。


    槙田先生は、アルドボールの顧問もやっている筋肉ムキムキの先生だ。

「平気、平気!体操の先生って言ったって一日中、体操してるんじゃないし、普通の授業だってやってくれるんだから……」


 そう言っている所へ「土志田、おはよう!」と槙田先生が通りがかった。噂をすれば影だ。


「おはようございます」

    よねは元気に、そして麻美はちょっと伏目がちに挨拶をした。




ワカバよもやまコーナー 

(80)


巨匠逝く…

鳥山明さん…68歳…あまりにお若い…


   ドラゴンボールファンのワカバとしては…

そして、アラレちゃん以前から鳥山明さんの大ファンの父にとっては茫然自失…


   いつの日か、鳥山明さんのことを書きたく思っていましたが、この数日間…テレビ、新聞、ネットで多く取り上げられているので、ここでは父とワカバが大事にしている雑誌、フィギュアで鳥山明さんを偲ばせていただきます悲しい


   父の宝物 下矢印

    コミックスと比べると大きさがわかる〜


   気に入ったイラストが一点しかないなんて…

でも、この本は30年前ですからね流れ星


   当時のその気に入ってる一点がこちら 下矢印


   父から「鳥山明さんはイラストとしての評価は高かったけど、漫画としての繋がりに欠ける…って当時の編集から言われたそうだよ」と小さい時に聞きました。


   いわゆる、1枚のイラストとしては素晴らしいけど、紙芝居になってはダメだということ…


   厳しい編集者さんがいらしたからこその鳥山ワールドの完成キラキラ




   父が大事にているコミックス…



   鳥山明さんはドラゴンボールが7つ集まったら、打ち切りにしようと思っていたそうですが…


   まさか、悟空(カカロット)のお父さん・バーダックまで登場する大河漫画になるとは、想像もしていなかったでしょうねぇ 下矢印



   そのバーダックを殺した憎きフリーザ 下矢印

(このフィギュアは、開けてはいけないと父…ワカバのなのに〜…まぁ、支払いは父ですけど…笑)


   父が大事にしているフリーザのお皿…下矢印

 

   バーダックは死の瞬間、息子がフリーザと合間見える場面が脳裏を過ぎり死んでいく〜悲しい



   悟空は…というと、カプセルに乗って地球にやって来ましたねぇ



   香港の友達から父が、お土産で貰ったコミックス 下矢印

                      (汚れてる部分、消しました ↑)


    綺麗に校正されてる〜


   鳥山明さんのエロ?コメント…笑


   ワカバが初めて喋った言葉…それは「ママでもパバでもなくて…」
「ン、クウ」でした

   最初、両親は私が「ン、クウ…ン、クウ…」と繰り返しているので、何か食べたいのかと思ったそうです。
   でも、暫くしてやっとで分かったって…
ワカバは「ゴクウ…ゴクウ…」と言ってたんです 笑

   ワカバのベビーベッドのそばに、テレビがあり、父はワカバをあやしながら、ドラゴンボールを観ていたそうな…

   テレビでは、悟空の相棒のクリリンが「おーい、ゴクウ!ゴクウ!!」と良く叫んでいたんです

   「ゴ」が言えないワカバは、それでも一生懸命にクリリンを真似して「ン、クウ…ン、クウ…」と悟空を呼んでいたんですね 笑


……つづく



第17章「ちょっと不安なそれぞれの新学期」③  へつづく

※ 一部 SNS よりお借りした画像があります。




「およねさん」


 今回の主な登場人物…


土志田(どしだ)よね…この物語の主人公。土志田家次女。朝美台(あさみだい)尋常小学校4年生。まだ自分にもわからない未知の能力を秘めている切れ長の目を持つ10歳の女の子。


土志田 辰五郎 (たつごろう)… よねの父親。下駄屋を営む。よねの小学校の風紀委員。


手嶋(てじま)惣八(そうはち)…よねの家の裏手で材木屋を営む元やくざの親分。昔、手嶋七人衆を抱えていた。この物語の鍵を握る。


(ブログは毎週火曜日0時2分に更新予定です)