A子さんは、お父さんの事が大嫌いでした。
 A子さんのお父さんはいつも大暴れをしてお母さんのことを殴るのをよく見ていたからです。
 A子さんのお父さんが亡くなった時A子さんはあまり悲しくありませんでした。
 お父さんが亡くなった後小さな蜘蛛を家の中で見かけると
 死んだお父さんかも
 と思いました。


 A子さんは清掃の仕事を始めました。
 夏には蜘蛛の巣を除去するという仕事をします。
 2時間ぐらい半屋外の場所で首も腕もいたくなりながら、柄の長いブラシで蜘蛛をとっていきます。
 目をこらして、神経を集中して小さい小さい蜘蛛を透明に近い蜘蛛の巣を取り除いていくのですが
 どうしても全部は取りきれず
 残っていると厳しい指導を受けました。
 貧血で倒れそうになりました。
 
 小さいゴミを見落としても厳しい指導を受けました。
 怒鳴られることもしばしばありました。
 毎日毎日怯えるように働いていました。


 A子さんはネットの世界に救いを求めました。
 その中で潜在意識が大急ぎで伝えたい事があると怒鳴られるというブログを読みました。
 また違う人のブログでは
 根底に悲しみがあるから怒っているという文を読みました。


 A子さんは、ずっと、父親を怒っていました。
 当然です。あんな暴れてばかりいる人
 嫌に決まってるでしょう。
 暴力をふるうから、嫌いなんだと思っていました。
 でもその怒りの根底にはちがう感情があるの?
 それは悲しみなの?
 私は何を悲しんでいるの?
 
 職場で蜘蛛の巣が残っていると
 ゴミの見落としがあると
 「もっとちゃんと見て!
  よく見て!」
 そう怒られました。
 怒鳴られました。
  
  私は見ていないところが沢山あるの?
  私の潜在意識はそう私に教えようとしているの?

 A子さんは霊能者の人に
 「お父さんが謝ってますよ
  お父さんが愛してるって言ってますよ」
 と言われたことがあるのを思い出しました。

 私はお父さんに愛されてないと思って怒っていたのか?
 私はお父さんに愛されたいと思っていたのか?
 私は愛が足りないと怒っていたのか?
 それまで【愛】なんて、小っ恥ずかしいこと本気で考えたことありませんでした。

 愛なのか?
 愛されてないと私は悲しんでいたのか?
 私は本当に愛されてなかったのか?
 そんなことをぐるぐる考えていたら突然
A子さんの娘が生き物係の
 
 ♪愛してるーと伝えたくてー♪

 と歌い始めました。
 ぎょっとしました。
 まるで死んだ父親が娘の口を借りて伝えてると思いました。


 実は父親が死んでから何回か父親が夢に出てきてました。
 A子ぉぉぉ
 呼んでいるけど
 「あっち行って!」
 自分の寝言で起きたこともあります。

 お父さんは私に気づいて欲しかったのか
 私はお父さんの一部分だけ見て嫌っていた。
 お母さんにも悪いところあったはず。
 そこを、見ないで一方的にお父さんを悪者にした。
 私には沢山沢山見ていないところがある。
 それをお父さんは言いたかった?
 私の潜在意識は教えたかった?


 A子さんは今年今の職場で3回目の夏を迎えます。
 またあの体力気力マックス使う
 蜘蛛の巣取りの季節が来たと思っていたら
 今年から蜘蛛の巣除去の仕事がなくなりました。
 他の部署でやることになり拍子抜けしました。
 怒られることもほとんどなくなりました。
 
 私が見えてないことが沢山あると気づいたから
 愛は最初からあったのに、ないと思っていたことに気づいたから
 だから
 蜘蛛の巣除去の仕事がなくなったのか?
 怒られる必要もなくなったのか?
 私が気づいたから現実が変わったのか?!

 全部偶然といえば、それまでの  
 A子さんの頭の中の妄想ストーリー


 最近A子さんは娘と台所で食器を洗っていたら
洗剤が弾けて
 小さなシャボン玉がふわふわと娘の周りを舞いました。
 「おじいちゃんかもよ」
 と娘に言ったら娘は泣きました。


 前は蜘蛛を見て父親かもしれないと思ったのに
 シャボン玉を見て父親だと思うなんて
 私ずいぶん変わったな
 A子さんはそう思いました。