変形労働時間制の適用および監視断続業務に当たらないとして,時間外労働等手当の支払い(約738万円 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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変形労働時間制の適用および監視断続業務に当たらないとして,時間外労働等手当の支払い(約738万円)が命じられた例

 

岡山地方裁判所判決平成23年1月21日

学校法人関西学園事件

従業員地位確認等請求事件

【判示事項】 1 寮監の業務から高校教諭への配置換えを命じられたにもかかわらず,それに従わず年休を取得して入院した原告Xに対して,職場放棄に近い行為があったとして学校法人である被告Y学園が行った休職処分につき,正当事由を欠くものとして無効とされた例

2 生徒に対する暴行行為や保護者とのトラブルなど8項目について,事実が存在しないか,またはXに非があると評価することは困難であるなど,いずれも教職員としての資質に欠ける事由には当たらないとして,Xに対する解雇処分が無効とされ地位確認請求が認容された例

3 Y学園の就業規則において労働時間の特定など変形労働時間制の要件を満たしていないとして,寮監の業務につき変形労働時間制の適用がないとされた例

4 寮監の宿直勤務における仮眠時間が労働時間に当たるとされた例

5 変形労働時間制の適用および監視断続業務に当たらないとして,時間外労働等手当の支払い(約738万円)が命じられた例

6 付加金の支払いが1部(約516万円)認容された例

7 違法な休職処分および解雇処分による慰謝料として100万円が相当とされた例

【掲載誌】  労働判例1025号47頁

(1) 事件の概要 被告Y学園は,高等学校,中学校を設置する学校法人であり,原告Xは寮監職として採用され,剣道や社会科を担当したこともあったが,主として寮監職(寮生の生活指導)を務めていた。

  Y学園は平成19年2月23日(以下の日付はいずれも同年),校長を通じてXに対し,口頭で,4月1日付で寮監職から教諭職に配置換えし,高等学校で社会科教諭として稼働するよう伝えた。なお,正式な辞令交付はされていない。これに対しXは,長期間教職から離れていたこと,高校の教諭として教えたこともなく,同高校が進学校でもあることから6か月ないし1年程度の準備期間がほしいと応答した。

  Xは3月下旬になって,不眠症を理由に年次有給休暇(以下,「年休」)を取得する旨の届出をして受理された。さらに,入院するので出勤できない旨告げるとともに,不眠症,適応障害の診断書を郵送して,3月31日から5月13日までIクリニックに入院した。Xは,入院中に,弁護士会仲裁センターへの和解あっせん申立をした。

  Y学園は,Xに対し社会科教諭として勤務するよう内定していたのに,Xが同勤務に就かなかったことから,職場放棄に近い行為があったという理由で,4月16日Y学園の就業規則37条3号の「その他特別の事由がある場合」に基づき,期間を定めずに休職処分を行った(以下,「本件休職処分」)。

  さらにY学園は,Xの生徒に対する暴力行為や保護者とのトラブル,喫茶店での料理長としての勤務,休暇中の仲裁センターへの和解あっせん申立などを理由に,Xには職場放棄の疑いがあり,教職員としての資質に著しく欠けるとして,Y学園の就業規則41条1号に基づき,Xに対し,6月15日付で解雇予告を通知したうえで,7月20日をもって解雇する旨の意思表示をした(以下,「本件解雇処分」)。

  Xは,Y学園による本件休職処分および本件解雇処分はいずれも合理的理由がないから無効である等と主張して,本件休職処分の無効確認,本件解雇処分については地位確認を求めるとともに,時間外労働に対する未払賃金の支払いなどを求めて提訴した。

  本件の争点は,処分関係では,①本件休職処分の有効性,②本件解雇処分の有効性,③本件各処分が無効とされた場合にXが受領すベき月額給料等の額である。未払賃金関係では,④Y学園主張の変形労働時間制の有効性,⑤寮監の仮眠時間の労働時間性および手当,⑥時間外勤務手当等の額,⑦付加金の支払いの可否および額,⑧慰謝料の額である。