破産者であるA及び有限会社Bから破産手続の全般について委任を受けた司法書士である被告人 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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 高松高等裁判所判決/平成28年(う)第111号

平成29年2月7日

破産法違反幇助,破産法違反被告事件

【判示事項】 1 破産者であるA及び有限会社Bから破産手続の全般について委任を受けた司法書士である被告人が,破産者Aやその妻Cが破産申立前に他人名義口座に預金を移し換えるなどの財産行為隠匿行為をした際,予めCに対して資産隠匿方法を教示するなどして幇助したとする破産法違反幇助(以下事実という。),A及びCと共謀の上,破産管財人から,破産申立の際に提出した免責申立書添付の預貯金目録に甲銀行のB名義の口座を記載しなかった理由について説明を求められた際,虚偽の説明をしたとする破産法違反の事案(以下事実という。)において,C証言及び被告人の捜査段階の自白等から両事実を認定した原審に対し

2 被告人の捜査段階の自白調書には任意性がなく,取調べの必要性もなかったのであるからこれを採用したのは違法であるとする弁護人の主張に対し,同調書の任意性及び取調べの必要性を認めて,訴訟手続の法令違反はないとし

3 原審は,被告人から財産隠匿方法について教示を受けたとするCの公判証言について,被告人に責任を押し付けている疑いがあり,全てにおいて信用できないが,被告人の捜査段階の自白に符合している限度で信用できるとしたものの,全てにおいて信用できないとした事情は,A証言の信用性の根幹に関わるものである上,被告人のCに財産隠匿方法を教示したとの捜査段階の自白も信用できないから,事実については無罪とし

4 事実の有罪は維持したものの,原審が認定した罪となるべき事実について,身分犯について,非身分者が加功した事案であるので事実摘示が,不十分であるとして破棄自判した

事案である。

【判決要旨】 被告人の検察官調書には任意性が認められ,取調べの必要性も認められるから法令違反はない。原審がC証言の信用性を否定する事情としてあげる,Cの財産隠匿行為に被告人から受けたとする助言内容に止まらないものが少なからずあること,Cが助言を受けたとする時点においてはAやBの財産関係を詳らかにしておらず事実以上の財産隠匿方法の助言を受けたというのは不自然であること,被告人,C間に特別の計らいをするだけの人間関係や報酬の授受等があったとは認められないこと,被告人が司法書士の信用を失墜させる危険を冒してまでCらに巨額の財産隠しをさせる程の動機を認めるのは不自然であること,の事情はC証言の根幹部分ひいては被告人の自白の信用性に疑問を生じさせる事情である。そして,①の事情は,Cが財産隠匿の方法を即時に考え出すことができ,かつ,それを実行する強い意欲を有していたことを示している。また,被告人の自白は「Cに対し,『A名義の口座にある預金を取引のない銀行でA及びB以外の名義の口座に移しておくように指示した。』という漠然で曖昧なものでしかなく,被告人が「破産申立費や被告人の報酬,A家の当面の生活費などを確保するため,債権者以外の銀行に口座を1つは作っておく必要がある,そこに生活費や破産申立のための費用を入れておく必要があるということを告げただけである。捜査官の誘導によって供述内容を変更させられた。」旨弁解しているところ,別の口座に預金を移すこと自体は助言していた以上,隠匿口座を作るように指示したと誘導されて供述を変更したということも考えられるところであり,信用性を認めることはできない。したがって,被告人がAやCに対して財産隠匿方法を教示したという事実は認められず,無罪。他方,②事実については,客観証拠やC証言,被告人の自白等によって優に認められ,原審判断に誤りはない。ただし,同事実は身分犯としてのAらとの共犯であるから,原審の「A及びCと共謀の上」との記載は,罪となるべき事実の摘示として不十分で,理由不備の違法があるから,「Bの清算人でもあるA及びその妻であるCと共謀の上」に改める。

【参照条文】 破産法268-1

       破産法40-1

       刑法65-1

       刑法60

【掲載誌】  高等裁判所刑事裁判速報集平成29年364頁