第5部 M&A編
第1章 事業承継とM&A
第1 総論
M&Aとは、Merger and Acquisitionの略称であり、Mergerとは合併、また、Acquisitionとは買収を意味します。親族や社内等に事業を承継する適当な後継者がいない場合には、会社そのものを売却し、第三者に経営してもらうことも選択肢の一つです。これまでM&Aといえば、大企業同士の大型案件が取り上げられてきました。しかし、少子高齢化社会の進展、M&Aにまつわる法制度の整備等を受けて、最近では中小企業が事業承継の手法としてM&Aを採用するケースも増えてきています。
M&Aを活用することにより、買い手企業にとっては、効率的に事業の拡大・多角化を図れるうえ、売り手企業にとっては以下のメリットがあると考えられます。
(ⅰ)後継者問題の解消
日本の中小企業の多くの企業が後継者問題に直面しています。少子高齢化社会の進展に伴い経営者に後継者となるべき子供がいない場合や、いたとしても跡を継ぎたくないか不適格である場合が増えてきています。 M&Aを活用することにより、後継者がいないがゆえに廃業せざるを得ない事態を避けることができます。
(ⅱ)創業者利益の確保
創業者は、保有する株式の売却により、創業者利益を得られます。ハッピーリタイアが実現したり、売却により得られた資金を元に新たな事業に取り組むことも可能になり選択肢が広がります。
(ⅲ)事業の選択と集中
成長の見込めない不採算事業を整理したり、これから会社のコアコンピタンスとなる事業に経営資源を集中させたりすることができます。
(ⅳ)雇用・技術・ノウハウの継承
従業員の雇用、技術、ノウハウを承継先に引き継ぐことができます。後継者の不在等により廃業した場合には、従業員は職場を失い、培った技術やノウハウも消失してしまうこととなり、当該会社にとってはもちろん社会的にも多大な損失になります。また、取引先企業等の利害関係人へも影響少なくありません。M&Aを行うことにより、雇用、技術、ノウハウを間断なく承継することが可能になります。
他方、経営者個人が会社の債務を連帯保証している場合や経営者個人が所有する不動産に担保設定している場合には、M&Aに際して債権者や買い手側との協議を整えてこれらの切り離し(連帯保証契約の解除、抵当権設定登記の抹消手続等)ができるかどうかが問題となります。また、M&Aは取引額が大きくその取引も複雑になりがちなので、適当な買い手を見つけることが簡単ではありません。最近では、M&A取引の仲介を専門に行う業者も増えてきているので、準備段階からクロージングにいたるまでこうしたM&A仲介専門業者の助言を得つつ自社に最適な方法の選択と実行をするべきでしょう。何れの方法が自社に最適であるかという問題は、それぞれの会社の事情によって異なるでしょうが、業績の善し悪し、特許等の技術の有無、営業力の高低、従業員の質や能力、優良顧客の有無等の要素を総合的に勘案して決めることとなります。
なお、東京商工会議所では東商M&Aサポートシステムを整備しています。事業の譲渡・売却を希望する中小企業と事業の譲受・買収を希望する企業の情報を東京商工会議所に登録し、M&A仲介専門機関である登録アドバイザーの協力を得ながら多数の企業同士の交渉の機会を提供するものです。
http://www.tokyo-cci.or.jp/venture/manda/bussiness.html