第4章 M&Aの税務 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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4章 MAの税務

1 適格組織再編

1 経緯

平成125月の商法改正によって会社分割制度が導入され、これに引き続いて平成13年の税制改正において、企業組織再編税制が施行されました 。

企業組織再編税制の対象には、合併のほか、会社分割・現物出資・事後設立があります。一連の改正によって、組織再編の際に生ずる税務コストを軽減し、企業組織の再編を加速化することがその目的です。

また、会社法では、合併や分割は組織法であるのに対し、現物出資や事後設立は取引法であると区別されますが、法人税法ではこれらの手段に対する課税についてできるだけ統一的な取扱いがなされるよう諸規定が整備されました。その理由としては、資産の移転と株式の交付がなされる点において各手法は共通するので、課税の公平や中立性の観点から等しく扱う必要があるからです。


2 内容

企業はそれぞれの経営計画・事業戦略にあわせて、いずれかの組織再編手段を選択します。組織再編の直接の目的に課税問題があるわけではありませんが、その選択によって課税の内容が異なります。

企業組織再編税制の主な内容は、組織再編による資産と負債の移転に関する取扱いと繰越欠損金の引継ぎに関するものです。

まず、組織再編による資産と負債の移転に関する取扱いについては、所定の要件を充たし、再編前後において実質的な変更がないと認められれば、税務上は「適格」と判定され、認められなければ「非適格」と判定されることになります。税務上「適格」と判定された場合は、資産と負債は簿価で移転したものと考えられ、譲渡損益にかかる所得は発生しないことになります。これに対して、税務上「非適格」と判定された場合には、資産と負債は時価で移転したものと考えられ、譲渡損益が発生し、益がある場合には課税されることになります(法人税法621項)。

適格と認められる要件は、組織再編の手段によって細かい違いがありますが、共通する基本となる考え方があります。ここではその共通する考え方を中心に説明します。

適格要件は、株主保有要件(持株比率)によって大きく「企業グループの場合」と「共同事業の場合」とに分けることができます。そして、どちらに該当するかによって、充足すべき他の要件が異なることになります。

「企業グループの場合」とは、基本的には、完全に一体と考えられる持分割合のきわめて高い法人間で行う組織再編のことをいいます。ただし、企業グループとして一体的な経営が行われている単位という点を加味すれば、会社法上の親子会社のような関係にある法人間で行う組織再編についてもこの企業グループ内で行う組織再編と考えることができます。

以上のような考え方を受けて、持株比率が、100%の完全支配関係がある会社との再編行為は、特に要件を必要とすることなく、原則として適格となります。そして、持株比率が50%超100%未満の支配関係がある会社との再編行為は、資産の移転が独立した事業単位で行われていること、組織再編後も移転した事業が継続すること等の要件を充足した場合に限り適格となります。

次に、「共同事業の場合」とは、持株比率が50%未満である会社との再編行為であり、組織再編成により一つの法人組織で行うこととした事業が相互に関連性を有するものであること等等の要件を充足した場合に限り適格となります。

組織再編の手段により細かな要件が定められていますが背景となる以上の考え方をまずはおさえておくことが重要です

さらに、各組織再編手段の要件論を抑えたい場合には、拙著『MAの法務、主要法制の完全整理』第4部第3章をご参照ください。