空のしっぽのブログ



拝啓


石垣 りん 様


ことばにも 時代の流れがありますね


消えたことばを思い出してみましょう


まずは お母さんの白い割烹着


舌を赤くして飲んだ粉末ジュース


真夏の夜の蚊帳


そうそう ちゃぶ台に家族の笑顔がありました


今の女の子には消えてしまったお・て・ん・ば


それから


行水


ポンプのまわりで井戸端会議


あと いくつ 思いだせるでしょうか


軋む雨戸


たらいと洗濯板と手ぬぐい


なつかしい匂いが


そこの路地から 近づいてきます


 

今日は盆迎え火


さあ、 消えたことば様 お布団を どうぞ


麦茶でもすすりながら


一日ゆったりと 昔ばなしに花を咲かせましょう


かってあったいい時代の思い出を たっぷりと


日暮れときには


表に 打ち水を ピシャと打ちましょう


もし お急ぎでなかったら


縁台に座り せかせかと行き交う人間たちを


夕涼みしませんか



今日は盆迎え火


影の領域が ことばのお化けをおんぶしています


あちこちで


「おひさしゅございます」飛び交い


いいお顔がなつかしく挨拶交わす日


りん様


色なき風がなつかしく吹くあの丘


その土の下に


この前まで生活の中にあったことばが


静かに眠っていますよ


                         敬具