会計には大きく分けると、非営利会計と企業会計の二種類になる。非営利会計は非営利企業であるNPO(non profit organization)等で使われている会計である。企業会計とは営利企業で使われている会計で、財務会計と管理会計の二種類存在する。財務会計は株主等の利害関係者であるステイクホルダー(stakeholder)に会社の会計情報を開示する会計である。株主のみの場合は(shareholder)とも呼ぶ。管理会計は社内の経営者に会計情報を報告する会計である。
 会社の会計は3つの法律で規制がされている。会社法、金融商品取引法、法人税法である。この3つの体制をトライアングル体制と呼ぶ人もいる。企業の資金の調達方法には直接金融と間接金融がある。直接金融は株式による資金調達方法であり、間接金融は銀行から資金を借りて調達する方法である。かつては間接金融の企業が多かったが、最近は直接金融の企業が多くなっている。金融商品取引法は旧証券取引法から2006年8月に名前を変えた企業の会計情報の開示義務を定めた法律である。会社法は2005年に商法から独立した形で現れた法律である。企業は企業活動で得た所得にかかる税金を国に支払わなければならない。これを法人税といい、このような規則を定めた法律が法人税法なのである。企業の財務状態を表した会計情報を貸借対照表(balance sheet B / S)という。企業の経営成績を表した会計情報を損益計算書(profit and loss statement P/L or income statement)という。これらをまとめて財務諸表(financial statements)という。なお、財務諸表は会社法では計算書類と呼んでいる。
 財務会計の証券市場に関して、2001年にノーベル経済学賞を受賞したアカロフの1970年に発表した「レモンの市場」で説明できる。アメリカでは車検制度がないが、中古車市場でデイラーは低品質、低価格の車と高品質、高価格の車を売るとする。デイラーが懸命に高価格、高品質の車について、説明しても、購入者は低品質、低価格の車ではないか、と本当に高品質、高価格の車かどうか判断できない。よって、高品質、高価格の車も低価格で売らざるを得なくなるので、高品質の車は売らずに自分で乗った方が良くなる。反対に低品質な車は相対的に高価格で売れるので、デイラーは売る動機が非常にあることになる。すると、中古車市場には低品質な車しか存在しなくなるので、件の市場は崩壊する。証券市場も同じことが言える。証券会社は株式の詳細について、よく知っているが、投資家には証券の価値が分かりにくい。そのために、証券市場には低品質な証券しか出回らず、中古車市場と同様の結果となる。
 財務会計の会計は複式簿記(double entry book  keeping)が使われる。複式簿記は1494年に数学者のルカパチョーリ(ルカパチオリ)によって作られた。1994年には、複式簿記の誕生500年記念祭が行われた。こういった記述が500年も続くことはあまりなく、複式簿記の有用性が窺える。では、複式簿記は完璧なものだろうか。三式簿記という興味深い研究をする人がいる。カーネギーメロン大学の井尻雄士教授である。彼は複式簿記に利速(利益の速度)を加えた概念の研究をしている。500年以上続く複式簿記が三式簿記にとって変わるときが来るか。
 会計には、企業会計基準と企業会計原則というものがある。企業会計基準は2002年に第一号が制定された。企業会計原則は1949年に設けられ、企業会計原則は一般原則、貸借対照表原則、損益計算書原則に分けられる。一般原則は貸借対照表原則と損益計算書原則の共通のルールを定めたもので、7つの原則がある。損益計算書原則は損益などに関することを表示した原則である。貸借対照表原則は資産、負債、純資産を表示したりする原則である。
 現金主義会計とは、現金の収入で収益を認識し、現金の支出で費用を認識する基準である。発生主義会計は多くの企業で使われている基準である。現金支出は関係なく、サービスや企業活動の消費時に支出を計上する。この基準を消費基準という。現金収入時ではなく、企業活動の時の収益を計上する基準を実現基準という。なお、販売時に収益を計上するので、販売基準とも言う。
 企業には、親会社、子会社、関連会社がある。子会社とは、重要な機関を親会社に支配されている会社である。子会社に対する株式の持ち分率が過半数ならば、子会社になる。また、過半数以上でなくても、実質的に子会社の重要な機関を支配していてもよい。関連会社とは、重要な機関の議決権のある株式の持ち分率が20%以上50%以下の状態の株式を親会社(子会社と協力することがある)が持っていて、重要な影響を与える会社である。議決権のある株式が20%未満でも関連会社に実質的に重要な影響を与えていても問題ない。
 企業集団(親会社、子会社、関連会社)の中で、合わさった財務諸表を連結財務諸表(会社法では連結計算書類)といい、各々の財務諸表を個別財務諸表という。その中で企業集団で合わさった貸借対照表を連結貸借対照表といい、各々の貸借対照表は個別貸借対照表という。企業集団で合わさった損益計算書を連結損益計算書といい、各々の損益計算書を個別損益計算書という。
 会社の買収に関する決まりにはパーチェス法と持ち分プーリング法がある。パーチェス法は立場の弱い企業を買収し、その企業の機能が失われる方法である。持ち分プーリング法は合併した2つの会社がほぼ対等で、双方の機能がなくならない方法である。かつては持ち分プーリング法も使われていたが、最近の基準により、パーチェス法のみが使われるようになっている。

 参考文献
・桜井久勝 財務会計・入門
      財務会計講義
      会計学入門
・黒沼悦郎 金融商品取引法入門
・大阪市立大学商学部編 ビジネスエッセンシャルズ会計