作品の感想はとにかく

上手い!!

ってことですかね。
もちろん面白くて次から次へとページをめくり
続きがどんどん気になっていっちゃうんだけど
それよりも何よりも
上手いな~、と思いましたよ。

そんな感想を持ったのは
安芸まくらさんの「明日も愛してる 」以来かな~。

吉原理恵子さんや綺月陣さんは
読後も後を引く感じのが多いのね。
で、木原さんも同じなんだけど

吉原さんや綺月さんが負や陰なイメージで
読後も引いてしまうのとはちと違う。
かといってハートフルな感じで幸せ気分で後を引くのとも違う。

何というのかな~
良くも悪くも初恋の人ってずっと忘れられないでいるの的な?
それとも靴に小石が入っちゃって
こんなちっこいのにとっても気になって仕方ない!的な?

ま、そんな感じ!
(どんな感じかますますわからんっっ)


木原 音瀬著「さようなら、と君は手を振った」
さようなら、と君は手を振った (Holly NOVELS)/木原 音瀬
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従兄弟の氷見啓介が田舎から上京してきた。なし崩しに面倒を見ることになった誠一は、アパート探しを手伝いながらも、実は気まずい思いだった。十年前の夏、啓介に心酔した誠一は、「高校を卒業したら迎えにくる」と約束したまま、戻らなかったのだ。相変わらずのダサいメガネ、髪形、服装にうんざりしつつも、誠一は再び欲望のままに啓介を抱くようになる。しかし啓介は優しく受けとめるだけで。 責められないことで安心した誠一は、優しく抱き締め甘えさせてくれる啓介のもとに頻繁に通うようになり…。


とにかく誠一は我が儘、自己中、身勝手という3拍子揃った
どうしようもないオトコって感じなんだけど
どうしてかそんな誠一に好き勝手させる啓介。

もう、ホント、最初の話を読むと
この誠一のろくでなしぶりに腹を立たせ、小説の人物とはいえ
アッパーの一つや二つかましてやらないとパンチ!
気が済まないような最低最悪なオトコ。


自分がモヨオシたら啓介の意向はおかまいなしに押し倒しセ○クスする。
惚れた女がいながら自分の方を向かせる為に
わざと啓介に女装をさせ(これがどこから見てもイイ女)
相手の気を惹いて落とし
それでも啓介との体の関係を辞めようとせずにいる。
しかもHの最中に女からの携帯一つで
入れてるモノを抜きさっさと女のもとへいってしまうのだ。

極めつけは女との旅行費用を啓介を騙しださせたこと!

それでも笑顔で誠一のすべてを受け止める啓介。

私は誠一に腹を立てながらもそんな啓介が不思議でならなかった。
どこがいいんじゃ、こんなヤツ~。

ってね。

だから、そこは木原さんが上手い!というところなんだよね。

こんな最悪な人間がまるで聖母マリアの如く啓介の優しさに触れ
どんどん心に変化が起きてくるのだ。
もう2話目なんて同一人物とは思えないくらい
啓介一筋で、啓介のためにすべてが中心に周り
とにかく彼にひたすら優しい誠一がいるのだ。

恋ってなんだろう、愛するって何だろう

前に、「背徳のマリア 」のレビューで

愛することっていったい何だろう。
愛とエゴって何が違うんだろう。

って書いたけど、これもまさにそう。
一見、誠一の方がエゴ丸出しに見えて
実は啓介はその上をいくんじゃないかと思う。

木原さんは以前この作品のあとがきに

「思うだけの恋とは?相手に何も求めない、与えるだけの恋愛とは?」

というのを書いてみたかった、と言ってるんですよね。

相手に何も求めないというのは結構残酷でもあるのだ。
実際にそれで誠一は傷つくのだし。
(コイツの場合は自業自得の部分もあるけどさ)

これは究極の自己満足でしかないようにも思えるんだよ。

作中にも啓介は

のめり込む恋愛は恐ろしい、人として間違った選択をしてしまいそうで怖い

と思う場面がある。

「背徳のマリア」しかりこの作品しかり、
恋愛はやはりどんな形であれ
エゴイスティックにならざるを得ない部分が絶対あるのだ。

本編の他に啓介の息子の話が出てくる。
これもまた、
エゴを付き通した啓介と誠一のそばで育った息子が
難しい年頃を経て大人の恋愛をしていく過程が
描かれているんですけど
これはハッピーエンドかアンハッピーなのかは
読み手によって違ってくるのかな。
私はハッピーエンドだと思うけどね。

2人が上手くいく、いかない関係なく
一度この恋愛に決着をつけない限り
きっと彼は永遠にあの場に立ち尽くす子供のままでしか
いられないと思うんだよね~。

とにかく色々と感じてしまう一作でした!

H度ドキドキドキドキドキドキ
切なさ度星星星星

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