カバー裏より
『”とびっきり旨い料理と美味い酒がここにある”―こだわりの末に手に入れられる食物の美、飲み方に食べ方、酒と肴についての話。英国で楽しむポオチド・エッグ、アメリカで通った酒場、そして広島の牡蠣、能登の岩海苔、甲府の鮑の煮貝、長崎の唐墨に近畿の松茸の話……。旨いものを求める旅に終りはない。吉田健一が守り通してきた食と酒への古びないポリシー。幸福な食エッセイ集。』
すごく楽しみで、読むのをとっていた吉田健一の本でしたが、読んだタイミングが悪かった。
細かな雑事に追われてゆっくり文章を楽しむ余裕が私の方になくって、もったいないことをしました。
再読の時はもっと落ち着いて、ゆったり構えて読もうと思います。
吉田健一の隠し玉もまだあるし。
本人は人から”偉い人”と目されるのが嫌で、ごくごく一般的な庶民を装っているけれど、幼い頃から好きなものをふんだんに食べることができた彼は、空腹であることが嫌いだし、酒が飲めないなんてえのはもっと嫌い。
アメリカに行ってくれと依頼されたときも、日当が一日三食が十分賄える金額と聞いて断る。
誰がシラフで日々を過ごせるか!存分に酒が飲める金額じゃないなら断る、と。
日々忙しく外で働く男性陣のために、たまに家にいるときは一日六食主義を採用すべきである。
なんておっしゃる健一氏は、今の世ならば即離婚ですな。
朝食を早めに食べて、10時に食べて、昼食を食べて、三時のおやつ(鱒鮨とかローストビーフを食わせろと言っているが)を食べて、晩ご飯を食べて、夜食を食べる。
なぜ太らん、吉田健一。
”お上品はいいことだというのが疑問で、古今東西、現在から未来に掛けてまで、お上品が他人に愉快な印象を与へるといふことはあり得ない。これは自分に対する気どりにすぎない”
お坊ちゃん育ちのくせに、さらっとこういうことを言うところが好きさ。
だからたくさん食わせろと言っているのだが。
あと、初出の年が書いていないので、いつの文章かわからないけれど、マグロが美味しいと褒めている。
江戸時代は下魚だった。
今でもそれほどのごちそうになってはいないらしいが、上等な牛肉に近いくらいうまいと絶賛。
もしかして、今のマグロ礼賛の風潮は、吉田健一が作ったのか?と思ったり。
大多数に迎合しない。
自分に素直。
だけど下品でないところが、実に愉快。
いつもいつも酒を飲んでいるけれど、文章が明晰なところを尊敬。
