カバー裏より
『開業にあたり調査事務所〈紺屋S&R〉が想定した業務内容は、ただ一種類。犬だ。犬捜しをするのだ。―それなのに舞い込んだ依頼は、失踪人捜しと古文書の解読。しかも調査の過程で、このふたつはなぜか微妙にクロスして……いったいこの事件の全体像とは?犬捜し専門(希望)、25歳の私立探偵、最初の事件。新世代ミステリの旗手が新境地に挑み喝采を浴びた私立探偵小説の傑作。』
ほほほう、そう〆ましたか。
調査事務所を開業して、立て続けに入った依頼。
失踪人捜しと、古文書の解読。
そして押しかけ探偵希望者。
やる気に溢れていない主人公が解いた謎は、すっきり解決するものではなく、どちらかと言うと読後感がもやもやとしてしょうがない。
主人公はやる気だけでなく、正義感にも溢れていないからなあ。
人の悪意って、ひどく気持ちが悪い。
自分だけが正義であるという思い込みを押し付けることは、悪意ではないのかもしれないけれど、でもそれは、決して善い意識ではない。
プライドの高さで自分を守るのは、ある意味しょうがない部分もあるけれど、高すぎるプライドを過剰に防衛するのも、やっぱり善い意識とは言えない。
チャラチャラしてるのに、妙に仕事ができるハンペー。
主人公の思惑とはかみ合わない口コミを広めてくれる大南君。
主人公とネットでしかつながっていないけど、一番頼りになるGENさん。
なかなか好感度の高いキャラクターたちが次々登場し、シリーズ物の第一作としては成功していると思うけれど、10年以上たっても第二作がいっこうに出版されないのは、読後に感じるもやもやが甚だしいせいかもしれない。
ライトな語り口でかなりビターな後味。
だけど読ませる技術は天下一品なんだよなあ。


