常々自覚はあったのですよ。自分の女子力のなさに。
だが、しかし、かつてここまで自分の女子力のなさを突き付けられたことがあっただろうか。いや、ない。

思わず反語法で語ってしまうくらいの衝撃を、今朝私は受けたのでした。

それは、枕が変わるとよく寝れる私が、「めんどくさいな~、うだうだ。」と思いながらやっとの思いでベッドから這い出し、朝食を食べにレストランへ行くべく化粧をしようとした時のことでした。
化粧ポーチを開けて、「!」
ファンデーションがありません!

例えば口紅がない、チークがない、シャドウがない、ハイライトがない…。
大勢に支障はありません。ええ。口紅がなくても。
アイライナーとか、アイブロウなど、その辺のものは最初から持っていませんから、ノー問題です。
だがしかし、ファンデーションがないのはまずいでしょ。

玄関先に宅急便をとりに行くのにも、すっぴんでは行かない娘と違って、割とあちこちにすっぴんで出かけている私ですが、今回は出張です。
仕事で来ているのです。
いわゆるひとつのオフィシャルです。

慌てて下地クリームだけを塗ってホテルのロビーに降りて行くと、こんなときに限って同僚とばったり会います。(ロビーの先にはホテルの出口とホテルのレストランがあるのです)
まじまじと私の顔を眺めたまま無言の彼。
「ど…どうしました…?(どきどき)」
「…。…。お前…一番遅いぞ。」
あ、そっちか。6時半からやってる朝食バイキングに6時半から行く人の気が知れないよ。早すぎるって。

不審に思われないようにレストランに入り(すっぴんで)、朝食バイキングのとろろご飯を流し込み、ホテル近くのコンビニへ。ファンデーションない!
昨日飲みに行った店の近くにもあったはず。
急ぎ足で次のコンビニに行き、無事購入。この時点で、すでに女子ではないと思われる。
自分が日ごろ使っている化粧品に、一片のこだわりもないからね。

それでもさすがに自分に愛想が尽きたわ。
お昼は仕事会場にあったカフェでカフェランチ。
多少女子らしく振舞ってみたものの、夜は北の屋台村で、速攻親父化。
私の女子力をアップしてくれる研究があったら、ぜひマピノーベル賞を差し上げたいと思います。


本日の読書:波の上の魔術師 石田衣良

カバー裏より
『俺とこの町のすべての銀行被害者の憎しみのターゲットはメガバンク。マーケットという名のジャングルでは、数が歌いグラフが踊る。仕掛けた罠で銀行の株価を奈落の底までたたき落とす。それが俺たちのちょっと洗練された形の復讐なのだ。痛快コンゲーム小説。』

テンポもよく、主人公たちのモチベーションには十分共感できるので面白かったです。
でも、なんかねえ、主人公が格好良すぎるのよ。

地方から出てきてそこそこの大学に一浪して入り、5年かけて卒業したものの半年もの間就職浪人してパチンコで日銭を稼ぐ。
よれよれのスエットを着てちびたスニーカーを履いて過ごす毎日。
そんな主人公が、ちょっと見ただけでオーダーメイドのスーツの出来について語り、クラシックの曲や演奏について語り、当たり前のようにその家具のデザイナーについて語る。

そういう人がいないとは言わない。
地方から出てきたってスーツや音楽や家具に造詣の深い人はいるだろう。
だけどこれ、フィクションなのよ。小説なの。
そんな主人公が、下から這い上がってきた人物だと読者は思うだろうか。
なぜわざわざそんな人を主人公に据えたのかな。

どうにも作者の顔がちらついてしょうがなかった。

同じように若くてちょっと世間をかじっただけの若者が、その道のプロに導かれて偽札作りの腕を磨いていく小説「奪取」には、そんなこと感じなかったんだけど。
もちろん作者真保裕一の顔は知っている。でも。

かっこ悪いやつがかっこ悪く這い登っていく話だったら、もっと私は面白く読めたのにな、と残念。
これはあくまで私の趣味ですから。
格好良い若者が、まじめに一生懸命に株式の勉強をして恋をして世の中を知っていく話。
どんでん返しももちろんあります。
仕掛けはうまくいくのか、復讐は成し遂げられるのか。
そもそも誰の復讐なのか。
上手い小説です。