ShortStory.453 夜の境内 | 小説のへや(※新世界航海中)

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 1話完結の短編小説を書いています。ぜひご一読ください!
  コメントいただけると嬉しいです。無断転載はご遠慮ください。

 

 今回はこんな話です!

 

↓以下本文

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「今の奴らは本当に気力が無いよなあ」

 

 高須(たかす)が愚痴る横で、横川(よこかわ)が苦笑した。

 薄暗い夜の境内。彼らはベンチに座っている。

 春だというのに空気は冷たかった。

 

「確かに、数年前の俺らだったら、もっとこう張り切って頑張ってた

 気がするな。そういうのが無いんだよ。どいつもこいつも

 ぼうっとしやがって。加えて、指示待ちクンばっかりときた」

 

「そうそう。言われるまでぼうっと突っ立ってるだけなんだよ。

 それ見て、相手がわあっとなったとしてだな、それで仕事を

 した気になってもらっても困るっつー話よ。まったく……」

 

 ため息をつく高須。横川は両手を頭の後ろに組んで

 空を見上げた。夜空には星が瞬いている。

 遠くに車の走る音が聞こえた――

 

 

 

 

境内

 

 

 

 

「この前、俺が見かねて説明してやったことがあってな。

 こういう風にやるんだって教えたら、新入りのそいつが

 浮かない顔して 『はあ……』 みたいな返事するんだよ」

 

「あるある。こちとら親切心で声かけてやってんのに、

 感謝ひとつできないやつだろう? むしろ迷惑そうにする

 感じ。余計なお世話とでも思ってるのかねえ」

 

「かもな。それでそいつも、言われたんでしょうがなく

 やってみますってな感じで俺の指示通りにするわけだ。

 案の定、失敗したね。ほら、あれだよ。わかるだろ?」

 

「ああ、何となくわかるよ。あれだろう? 指示通りに

 動いただけで、勢いも何もないんで、うまくいかなかった。

 そういうことだろう? ああ、わかるわかる。わかるよ」

 

 何度も頷く高須に、横川も笑って応じる。

 互いに似たような経験が多いのか、共感している

 のだろう。徐々に表情も明るくなる。

 

「そりゃあ、形だけやって上手くいく筈ねえよな。

 こういうのはさ、やっぱ心が大事なわけだ。意欲のないやつは

 駄目だ。きっと昔からそういう性格の奴だったんだろうな」

 

「変わらねえんだよなあ。人ってさ。ただ、俺も昔は

 恥ずかしがってたんだぜ。それをほら、何度もやってくうちに

 しっくりくるようになっていったんだ。要はその、心構えよ」

 

「そうそう、心構え。あと、思い切りだな。

 そういうのが無いんだよ。現代っこは。だから始終ぼうっとしてる。

 三つ子の魂、百までっつーけどな。あれは本当だぜ」

 

「百じゃねえ。永遠の間違いだろう」

 

 そこまで言って、2人は大声で笑った。

 

 そんな彼らの目の先。境内に上がってくる階段から、

 誰かの声が聞こえてきた。小高い所にあるこの神社には、

 百数段ある石の階段を上がってくる必要があるのだ。

 足音からすると、相手は複数人いるようだった。

 古びた外灯が、敷き詰められた砂利を冷たく照らしている。

 2人は顔を見合わせると、嬉しそうな表情になった。

 

「お、やっと来たな」

「ああ。待ちくたびれたぜ」

 

 彼らはすうっと立ち上がると、前を見た。

 階段を上がってきたのは、数人の男女だ。

 情報誌か何かを見てここへやってきたに違いなかった。

 もしかすると、ネットやSNSの噂が情報源かもしれない。

 ラフな服装の若者たちだ。ひとりがスマホで足元を照らしている。

 彼らは騒ぎながら、境内を進んでいく。

 この時間帯に来るのであれば、目的は知れていた。

 高須と横川は着々と仕事の準備を進めていく。

 

「後輩でも連れてくるべきだったかな」

「いや、いいさ。近くでただ突っ立っていられても困るからなあ」

 

 若者たちは境内の真ん中に固まって、

 こそこそと話しながら周囲を眺めている。

 

「なあ。これ、どうする?」

「着けた方が雰囲気が出るよなあ」

 

 彼らはそれを鉢巻のようにつけると、顔を見合わせた。

 興奮に、その頬はいっそう蒼ざめている。

 

「掛け声は?」

「もちろん、あれだ」

 

 草葉の陰で、2人は「せえの」と頷き合った。

 次の瞬間、彼らは草木をすり抜けて、若者たちの前へと躍り出た。

 

「「うらめしや~~~~!!」」

 

 三角布を頭に、叫ぶ高須と横川。

 足元は霞んでいるが、声はおどろおどろしくも明確に響いた。

 生前にも増して、生き生きとした表情の彼ら。

 夜の境内に、若者たちの悲鳴がこだました――

 

―――――――――――――――――――――――――――――
<完>