麦わら海賊団と、小説と、たまに自分の日常。

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 大雨のため、本日の小説更新は中止となりました――

 というわけではありませんw 少し遅くなってしまいましたが更新します(謝)

 

↓以下本文

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「鈴木(すずき)。悪い、飲み物買って来てくれるか?」

 

 蒸し暑い体育館には、ボールの音が響いている。

 先輩の手には、空になったペットボトルが握られていた。

 

「俺のバッグそこにあるから、勝手に財布とって」

「あ、はいっ」

 

 バスケ部のマネージャーとしては2年目だったが、

 真夏の体育館は相変わらずの地獄で、立っているだけでも

 苦しくなってしまうほどだった。今日はとくに暑かった。

 元気なのは、外でうるさく鳴いているセミたちだけだ。

 気づけば先輩はボールを手にコートの中に戻っていた――

 

 

 

 

 

 

 

 

「財布、財布……」

 

 先輩のバッグの中を漁って財布を見つける。

 それを開けば必要な分のお金を取って、すぐにまた仕舞った。

 こんな風に荷物やお金を勝手にとらせていいのかなんて

 最初は思っていたけれど、佐藤(さとう) 先輩は

 そういうことをまったく気にしないらしい。

 

 たまにこうして買い物を頼まれるのだが、その度に、

 見ちゃいけないものが入っていたらどうしようなどと

 ドキドキしてしまう。いや、佐藤先輩に限ってそんなものは――

 

「彼氏のために買い物か?」

「ひぃっ!?」

 

 急に声を掛けられ思わず声を上げる。

 振り抜くとそこには 三橋(みはし) 先輩が立っていた。

 自分がしゃがんでいるので、彼が尚更大きく見える。

 いつも通り人を食ったようなニヤつき顔で、

 こちらを見下ろしている。

 

「彼氏とか、そういうのじゃないです。仕事です!」

「ハハ、冗談だって。相変わらずミカちゃんはイジリ甲斐があるなあ」

 

 言葉を続けても勝てる気はしない。

 話を終わらせようと、立ち上がってから訊く。

 

「……あの、先輩のも、飲み物買ってきましょうか?」

「ほらほら、俺のことはいいから、早く佐藤に買っていってやれって」

 

 子どもを窘めるような口調で言われ、思わず口をとがらせる。

 もういいです、とだけ言って体育館を出れば、

 少し歩いたところにある自販機へと向かう。

 迷うことなくいつものスポーツ飲料を買えば、すぐに戻って。

 

 外の風を感じられたのも束の間、再びムッとした

 空気の充満する体育館へと入る。

 冷たいペットボトルはあっという間に汗をかいていた。

 体育館の向こう側の入り口に、先輩が座っているのが見えた。

 テーピングを治しているのかもしれない。

 

 私は体育館の端を通って、その入り口の方へと向かうと、

 飲み物を渡そうと近づいた。ふと、悪戯心が芽生え

 後ろを向いて座っている先輩の首元に、キンキンに冷えた

 ペットボトルを押し当てた。

 

 思わず口元が緩む。

 別にふざけているわけではない。

 この前のお返しだ。

 

「先輩、買ってきました――」

 

 その瞬間、先輩の肩がビクリとはねた。

 そして、そのままスローモーションのようにして、

 ゆっくりと前に倒れ、入り口前の硬い床の上に崩れた。

 

「せ、先輩……?」

 

 受け身を取るわけでもなく、

 倒れただけの状態で、床に伏している。

 

「え?」

 

 まるで力の入っていない手足を見て、息を飲んだ。

 

「う、嘘……」

 

 近づいて、揺さぶってみる。

 最初は静かに、気付けば大きく揺さぶっていた。

 

「せ、先輩ッ! だ、誰か! 誰か、来て!!」

 

 私の叫び声に人が集まってくる。

 彼らの目の前に、私が見ているのと同じ先輩の

 姿が見えただろう。全く反応のない、その姿を。

 

「佐藤っ!?」

「何があったんだよ、これ……」

「誰か先生呼んで来い!」

「馬鹿っ、救急車だ。救急車を呼べ!!」

 

 校舎から駆け付けた保健の先生が、

 先輩の傍に膝をつき、その状態を調べている。

 さりげなく伸ばしたその手は、脈を確かめているのだろうか。

 

 心臓が?

 あんなことで、心臓が……

 

 誰かが持ってきたAEDをすぐに開いて処置を施す。

 救急車が到着する間際、保健の先生が小さく首を振るのが見えた。

 

 嘘、嘘……

 嘘だって言ってよ。

 

 嘘でしょ。こんなの、聞いたこと無い。

 こんな、ことで――

 

「何があったの?」

 

 保健の先生が私の隣で訊く。

 私はまだ、冷えたペットボトルをもっていることに気づき、

 反射的にそれを手放した。私の足元に、露が付き

 びしょびしょに濡れたペットボトルが転がる。

 

「違う、違うんです……」

 

 気づけば私は泣いていた。

 わけが分からなかった。

 

「ちょっと、落ち着いて。鈴木さん」

 

 何で? どうして?

 

「違う。違う。違う……」

「違うじゃわからないわ。鈴木さん、何があったのか教えて」

 

 嘘。嘘でしょ?

 こんなことって……

 

 

「違うっ、違うっ! 私は――」

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――
<完>

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