麦わら海賊団と、小説と、たまに自分の日常。

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 ※この物語の内容は、実在する人物・団体等には一切関係ありません

 ※童話ではありません。子どもへの読みきかせには使用しないでください

 

↓以下本文

―――――――――――――――――――――――――――――

 

 昔々あるところに、それはもう大きな城がありました。

 周囲の町から突き出して伸びる城は、その先が

 雲に届くほどでした。ただ大きいだけではなく、

 その建物には細かな装飾が施され、廊下から天井、

 部屋の隅々に至るまで、まるでひとつの芸術品のようでした。

 

 そして何より有名なのが、その城に住む姫君でした。

 彼女は大層美しく、いつも市民の注目の的で、

 ひとたび城下町を訪れようものなら、割れんばかりの喝采が

 起こり、市民たちの生活もままならないほどでした。

 

 今日も姫君は自室の窓から城下町を眺めています。

 金でつむがれたのかと思うような、輝く長い髪。

 絹のように白い肌。宝石のような目には笑みを湛え、

 見たことのない優美なドレスに身を包んで。

 

 執事や兵士たちもうっとりと彼女を眺めるばかりで、

 ふと気を抜けば護衛の仕事すら忘れてしまいそうでした。

 魂を抜かれたかのような彼らに姫が声をかけると、

 きまって彼らは息を吹き返したようにして、体を棒のように

 直立させました。それでもその目はまだ姫に魅せられたままなのです――

 

 

 

 

憧れの姫

 

 

 

 

 城には毎日、世界中から集めた綺麗な花が飾られました。

 使用人たちがせっせと古い花を摘み、新しい花に変えるのです。

 客間にも廊下にも、城の中にはいつだって色とりどりの花に

 囲まれていました。しかし、姫の部屋に花はありません。

 なぜなら、どんなに綺麗な花も、姫の美しさを目の当たりにすれば

 自分の姿が恥ずかしくなって、たちまち枯れてしまうからなのでした。

 

 城には毎日、様々な鳥が鳴いています。

 使用人たちが美しい声の鳥を集め、籠に入れてさえずらせているのです。

 客間にも廊下にも、城の中にはいつだって小鳥の唄う声が

 ささやかに聞こえていたのでした。しかし、姫の部屋に鳥はいません。

 なぜなら、どんな綺麗な声の鳥でも、姫の美しい声を聞けば

 自分の声が恥ずかしくなって、たちまち黙り込んでしまうからです。

 

 城には毎日、多くの王子がやってきます。

 姫の美しさを聞きつけ、一目見ようとやってくるのです。

 遠方からはるばる船で来る者がいれば、争いを抜け出してやってくる

 者もいました。姫には到底及びませんが、賢い者や富める者、

 強い者や美しい者など、ありとあらゆる国の王子が、

 姫の姿を目に入れるためだけに、全てを投げ出して城へと

 やってくるのでした。

 

 そんな彼らが、姫を目の当たりにして

 正気を保っていられる筈もありません。ひとりの例外もなく、

 彼女に魅了され、言葉を失い、鼓動を高めるのでした。

 気を失うものも、そのまま数刻動けぬままになる者もいますが、

 中には姫に結婚を申し込む王子もいました。彼らは、何としても

 自国に姫を連れ帰りたい一心で、熱意の言葉を振り絞りました。

 競うように叫び、かしずき、贈れるものならば何でも贈りました。

 中には姫に船を贈り、国へ戻れなくなってしまった者も、

 命を捧げ、この世を去ってしまった者もいました。

 

 しかし、この上なく美しい姫には、誰もが凡庸に見え

 どの王子の申し出も受けるようなことはありませんでした。

 それでも彼らは諦めず、美しく愛らしい姫の心を

 自分へと靡かせるため、それはもう必死に努力を続け

 

 

 

 

「姫、西国トシリアの王子より、婚約の申し出です」

 

 家来の声に彼女は顔を上げた。

 ペンを置き、彼の差し出す紙を手に取る。

 その紙には、大きな写真も一枚留められていた。

 もちろん、写真は王子のものであったが、

 それを見るなり、彼女は眉間にしわを寄せた。

 

「で、誰なの?」

「オイテル14世です」

 

 家来の返答に姫が舌打ちする。

 

「そうじゃない。この老いぼれは一体何なのって訊いてるの」

「西国トシリアの王子、オイテル14世、68歳でございます」

 

 恐縮したように答える家来。

 次の瞬間、姫は椅子を蹴飛ばして彼へと詰め寄った。

 相手の胸ぐらを掴むと、鬼の形相になっている顔を近づけ、叫んだ。

 

「ちーがーうーだーろ! 違うだろォッーーーー!!

 私が言ってるのは、こんな老いぼれの写真よこして

 どういうつもりだってことなんだよッ! 私を誰だと思ってる!?

 美しいお姫様なのよ! 身も心も美しい姫! 姫ッ!!

 それなのに何!? この身も心も見どころのないジジイは!?

 王子!? ざけんじゃねえよッ!! おーじ、じゃなくて、じーじだろッ!!」

 

 怯えた様子で 「やめてください」 と繰り返す家来の男。

 彼女の大声は小さな屋敷中に響き、庭の枯れ木を震わせていた。

 カラスが嘲るような声で鳴きながら飛び立つ。

 近隣に住む市民たちも、いつもの事かとため息をついていた。

 

 顔を強張らせながら家来が言う。

 

「じーじと言っても……姫と、あの、2つしか変わらないじゃ……」

「黙れ、このハゲーーーーッ!!」

 

 揺さぶられている家来が姫の机に手をつくと、

 机の上に置かれていた彼女の日記帳が床に落ちた。

 そんな事にも気づかず、叫び続ける彼女。

 床に落ちて広がった日記帳。そこに書かれていた

 作り話たちは彼女を見上げ、憐れんでいるように見えた――

 

―――――――――――――――――――――――――――――

<完>

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