市原悦子さん急死　８２歳

心不全　虫垂炎発表直後の訃報

「家政婦」「日本昔ばなし」で独特の声

ドラマ「家政婦は見た！」や「まんが日本昔ばなし」の

声優など幅広く活躍した女優の市原悦子さんが12日の

午後1時31分、心不全のため都内の病院で死去した。

82歳。千葉市出身。自己免疫性脊髄炎を発症し

リハビリに努めながら一時は仕事を再開させたが

本格復帰はならなかった。

あまりに突然だった。語りを務めていた

NHK「おやすみ日本　眠いいね！」が13日未明に

放送され市原さんが虫垂炎を患っていることと

「こんな年になって盲腸になるなんてイヤだわ」との

コメントが発表されたその日の訃報。同局広報部は

「番組放送時は市原さんが亡くなられたことを

　知らなかった」と説明。驚きと悲しみが広がった。

関係者によると昨年12月上旬に体調不良を訴えて検査を

受けたところ、虫垂炎と診断されて入院。手術はせずに

投薬治療を続け同21日には「おやすみ…」の収録に

参加できるまでに回復した。年末年始は自宅で

過ごしたが再び体調を崩し今月５日に再入院。

７日に予定していた収録は見送っておりその後に

容体が急変。19日からは女優観月ありさの

主演舞台「悪魔と天使」に声で出演予定だった。

2016年11月には手足のしびれなど体調不良を訴え

自己免疫性脊髄炎と診断されて入院。2018年3月に

「おやすみ…」で仕事復帰を果たしたものの体調を

崩すことが多かったという。2018年の

NHK大河ドラマ「西郷どん」のナレーションも降板。

1957年に俳優座に入団し「りこうなお嫁さん」で

デビュー。1971年に俳優座を退団、1972年に

番衆プロを設立。1975年には常田富士男さんと２人で

登場人物の声を演じ分ける「まんが日本昔ばなし」が

スタート。昨年７月に常田さんが亡くなると

「かなりショックを受けていた」という。

1983年からは代表作の「家政婦は見た！」が始まった。

「市原の家政婦か、家政婦の市原か」というほどの

当たり役。市原さんは「女優は家政婦さんと同じく

自分だけが頼りの仕事。大好きなシリーズです」と

話していた。周囲によると

「監督のＯＫが出ても自分が納得できるまで

　演技にこだわった。ただ、現場の空気が

　ピリピリすることはなく市原さんがいると

　いつも穏やかでした」という。演技力の高さには

定評があり岩崎加根子、渡辺美佐子とともに

「俳優座が生んだ三大新劇女優」ともいわれた。

1961年に舞台演出家の塩見哲さんと結婚。２度の

流産で子供はいなかったがおしどり夫婦として知られ

2014年に夫に先立たれた。“おばさん然”とした

演技とは違いプライベートでは運動神経抜群でテニスや

ボクシング通。麻雀をこよなく愛し酒を飲みながら

俳優仲間と卓を囲むのが大好きだった。

昨年他界した演出家の浅利慶太氏に

「戦後の新劇界が生んだ最高の女優」と絶賛された

市原さん。のぞき見する家政婦役の恐ろしいほどの

演技力から1990代後半には女子高生の間で

“エツラー”と呼ばれＣＤや写真集を出すなど

お茶の間にも愛された。サスペンスドラマでの役柄通り

衝撃的な展開での悲報。世間を驚かせて旅立った。

◆市原悦子（本名塩見悦子＝しおみ・えつこ）

1936年1月24日生まれ、千葉県出身。1957年に

俳優座へ入団。1959年に「千鳥」で芸術祭賞奨励賞、

1964年に「ハムレット」でゴールデンアロー賞新人賞を

受賞。今村昌平監督がメガホンを取った1989年公開の

映画「黒い雨」では最優秀助演女優賞に輝いた。

▼まんが日本昔ばなし

1975年〜1994年まで全952回、1468話が放送。

全放送回の平均視聴率は18.1％で最高は

1981年1月10日に記録した33.6％。2005年には過去の

放送分をデジタル処理し11年ぶりにゴールデンタイムに

復活した。

▼家政婦は見た！

1983年〜2008年にテレビ朝日「土曜ワイド劇場」で

26作放送。家政婦の石崎秋子が派遣された

エリート家庭でドロドロとした人間関係を

のぞき見る内容。シリーズ最高視聴率は1984年10月の

２作目に記録した30.9。1997年には全11回の

連続ドラマも放送。

市原悦子、死去 享年82歳

市原悦子、死去　享年82歳