シェイム | ファットマンの松山B級グルメ日記

・5月31日鑑賞

・大街道シネマサンシャイン


R18指定作品。セックス依存症の男と、彼のマンションに転がり込んだ妹のアブノーマルな関係などという前宣伝から、正直なところ野次馬的な興味がなかったとは言わない。

しかしながら、意外にもというか登場人物はまっとうな人間ばかり。セックス描写にも扇情的なテイストはほとんど感じられず。あまりにも生真面目な作品にどう対処していいのか迷っているというのが正直な感想。頭の中がはてなマークだらけといったところだろうか。


独身のエリートニューヨーカーといった風情のブランドン。IT関連らしき一流オフィスで働き、高層マンションに暮らす。娼婦を自宅に呼んだり、酒場でハントした女と一夜だけの関係を結んだりと孤独な独身生活を謳歌しているが、とりたてて異常に思える範疇ではない。

そのマンションに恋人と別れて住むところのないジャズシンガーの妹シシーが転がり込む。シシーはブランドンの上司でこれも女好きのデビッドと、知り合ったその日のうちにそれもブランドンのマンションで関係を結ぶ。ブランドンは生活のペースを乱され、しだいに精神的な苦痛に感じるようになっていく。


本質的には破滅型の人間は一人も登場しない。ブランドンは、妹が会社の上司で妻帯者のデビッドと関係を結んだことを問題視している。デビッドはブランドンの業務用のパソコンにエロチックなデータが入っていることを注意したりする。シシーは孤独感にさいなまれ常に恋人を必要としている。一見してアブノーマルに見えながら、みな私たちの日常感覚で理解できる人たちのように思う。


唯一真剣な交際に発展しそうな雰囲気だった同僚の黒人女性とベッドを共にしながら性的不能に陥ってショックを受けるブランドン。自暴自棄になって性的な遊びの限りを尽くして朝帰りする。そしてリストカットして自殺未遂を図ったシシーを発見する。シシーは一命をとりとめ、兄妹は和解してお互いの大切さを再確認する。

そしてラストシーン。冒頭に電車の中で誘惑しようとして果たせなかった女が、今度は逆に誘いをかけてくるのをブランドンが拒否する。なんとも分かりやすい結末なのだが、本当に額面通り受け取っていいのだろうかという困惑は否めない。

ブランドンとシシー兄妹の近親相姦願望とそこからの再生の物語なのだと書いた評論もあった。シャワーを浴びているシシーが帰宅したブランドンと全裸で長々と話をする場面などはそれらしい雰囲気も漂うが、それはそれで理屈落ちにすぎるようにも思う。


映画館に来てスティーブ・マックィーン監督という名前を知り少し困惑してしまったが、これはもちろん同姓同名の別人。こちらのスティーブ・マックィーン氏は英国人でブラック。この作品で主演のマイケル・ファスベンダーがベネチア国際映画祭の主演男優賞を受賞したりして、気鋭の新進監督といったところだろうか。

異常ともいえる長回しがとても印象的。同僚の黒人女性とのベッドシーンは完全にワンカットで描かれていて、唯一この映画の中でとても扇情的。シシーがジャズクラブで「ニューヨーク・ニューヨーク」を歌うシーンがほぼ彼女の顔のアップだけでフルコーラス使われているのは、歩道を歩きながらの兄妹の長台詞と合わせて、なにか彼女に対する思い入れの表現なのだろうか。何日か、あるいは何年か後になって思い当ることがある映画なのかもしれない。