闘技場では、日夜、奴隷たちが剣や斧、槍などを持たされ、闘わされた。
時には、野にて捕らえられた猛獣や怪物などとも死合いを組まされる事もあった。
その勝敗は、「どちらかが死ぬ」まで決着がつくことはなく、
奴隷たちは、その日その日を生き延びる為、闘いの腕を磨き続ける他なかったのである。
彼らは「剣闘士(グラディエーター)」と呼ばれた。
…時が経ち、パルル王国に共和制が敷かれ、政治が形式上、民衆の手に移ると、
人種差別の是非が社会的に問われるようになり、
その最たる、「闘技場」の様相も、時代の変化と共に移り変わっていった。
奴隷を使った娯楽という要素は陰りを見せ、
代わりに、闘技場での闘いを「職業」として参加し、一攫千金を夢見る輩も、多く生まれた。
…その中でも、ずば抜けて、類い希なる強さを誇っていたのは、
やはり、「グラディエーター」達であったのである。
奴隷制度が廃止された後も、彼らの一部は、
闘技場での闘いを望んだ。
…剣を振るい、対面する敵を倒す…
彼らは、それ以外に、生きる術を知らなかったのである。
常に死と隣り合わせの境遇の中で磨き上げられ、淘汰された、その戦闘技術は、
彼らの手によって後生に伝承されていき、
遂には、「剣闘士」という一つの職業として、
冒険者を中心に、広まっていったのであった…。