ツナ缶、かつお節、宅配便運賃、でんぷん、オリーブオイル、食用油、小麦粉、電気・ガス料金……。

この半年の間にニュースとなった値上げ品目を並べてみました。

そう、春は値上げの季節でもあります。

 

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「値上げできない」

取材をしていると、多くの商人の皆さんから聞く言葉です。

とりわけ、自ら商品をつくる製造小売りに携わる方々からは悲鳴のような声が聞こえてきます。

事実、冒頭に挙げた品目以外にも多くの原材料、資材、コストが上がっています。

 

ならば、それに応じて価格を上げればいいのでは?

そう言おうものなら、彼らはこう答えます。

「お客さまに申し訳ない」

 

どのように申し訳ないのかを詳しく聞いてみると、こんな答えが返ってきます。

「これまでご愛顧くださっていたお客さまが離れるのではないか?」

「売れ行きが落ちるのではないか?」


私はこう伝えます。

「お客さまへの愛情、真実に裏打ちされた行い、そして利益、この3つを一致させるのが本当の商いではありませんか」

 

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メーカー、製造小売業者が値上げに際して採る方法は二つあります。

一つはシュリンクフレーション。

価格は変えずに内容量・数量を減らすという方法で、実質値上げ、ステルス値上げ、隠れ値上げと言われています。

 

食品分野で多く見られる値上げ手法ですが、話題となったのが「明治おいしい牛乳」です。

同製品は新容器への変更を機に、要領を1000mlから900mlに減量、新容器によっておいしさと利便性が向上したことをうたいました。

従来品に比べ横幅が約5ミリ小さいから「手が小さいお子さまや握力が弱い高齢者でも持ちやすい」、従来品に比べ筋肉への負担が1割軽減されるので「(従来品より)楽に注ぐことができる」とは同社のプレスリリースの弁。


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もう一つは売価変更、正面切っての値上げです

値上げをせざるを得ない理由を正直に顧客に伝え、誠実に理解を求める手法です。

たとえば冒頭の店頭告知は、広島・府中市の洋菓子店「パティスリーパンセ」のもの。

値上げの原因を正直に、「これからもずっとこの場所でこのまちの子供たちの成長と共に歩み続けられるお店である為に」という値上げの目的を誠実に伝えようとする意思が面から伝わってきます。


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こちらは兵庫・姫路市の人気ベーカリー「こぐまのプーさん」のもの。

やはり「美味しさや品質を落とさないために」という値上げの目的をうたっています。

 

あなたは、どちらの値上げを選択しますか?

個人的な見解ですが、前者には言い訳じみたものを、後者には共感をおぼえます。

そもそも、あなたの店は単に価格が安いから選ばれてきたのでしょうか?

 

お客さまは、価格の理由がわからなければ、その商品の価値を知らなければ、安いものを選ぶのが当然です。

そもそも、価格設定は商人の哲学の表われであり、意思表示です。

値上げの春、あなたの商品の価格をもう一度見直すときです。

そこには、価格の理由と伝える工夫がほどこされているでしょうか。


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