ベルリン・フィル初の女性首席指揮者で現代の音楽シーンをリードしているリディア・ターの栄枯盛衰を描いた秀作。
ターを演じるケイト・ブランシェットは、自身のキャリア・ハイとも言える名演、いや怪演だ。

オーソドックスな作り方をすれば、万人受けするストーリーの面白さを有している本作だが、トッド・フィールド監督は長回しに長セリフ、意味深な伏線回収などあげるときりが無いくらいに奇抜な手法で観客の度肝を抜く。
ここが、賛否の分かれるところだと推察する。
物語の中盤以降、ターの地位と名声が揺らぎ始めたあたりから、ブランシェットの怪演が奏功し観る者を惹きつけてはなさい。

1度観賞して拒絶反応を示さなかった方は、是非2度目の観賞をお薦めする。
間違いなく、観賞回数を重ねれば重ねるほど新発見が約束された作品だ。
なお、公園をランニングするターが聞く女性の悲鳴は、1999年に公開された某ホラー映画のラストシーンの悲鳴が使用されているとのこと。
 

☆☆☆☆☆(星5つ・満点)【5月12日観賞】