仏さまの戒めを守ることによって、仏さまのお弟子になる、その証としての名前を戒名といいます。その戒名は空海・最澄・法然・道元・日蓮・親鸞・もう一つ上げればこのような祖師方に並べて例示するには恥ずかしいが亮昌もあって皆2文字であります。

その上の2文字や更にその上の院号等々はすべて飾りです。しかし、現在は飾りも含めて戒名と言っています。

その中の一文字に「遊」という字を使ったことがあります。寺報「光明院通信」にお悔やみ申し上げますと戒名と亡くなった日付、俗名、行年をご遺族にお聞きしてそのご許可で記しています。「遊」が入っていましたら、ある方が遊び人だったのかな?と言われてましたが、私の目の前でおっしゃったので直ぐにその場で真意を話せました。「遊」の入った戒名を見るとそう思う方がいらっしゃるかもしれないかな?とも思えました。

他の字でも、誤解される字もあるので一面仕方がないとも言えます。

通夜式や葬儀の折に、ご遺族には説明しているので、関係者には出来るだけ誤解されることは防いでいます。

 

でっ、その「遊」だが、漢字を独自の視点でひもといた白川静博士、彼が1番好きだった漢字がこの「遊」という文字だそうです。

 

福井市の白川氏生誕の地に建てられた石碑には「遊」という漢字とともに

【遊は絶対の自由と、豊かな創造の世界である。遊びとはなにものにもとらわれない柔軟な心で生きること、私たちもそんな遊びを存分に楽しむことができますように】

と直筆で刻まれているそうです。

 

この「遊」という字を戒名に15年前に1度、4年前に1度、2年前に1度の3回使いました。15年前の方は経済的にも余裕のある方で、ゴルフをはじめ大型ボートや乗馬なども楽しまれた方で、俗にいう遊び人ではないのですが、仕事とは別のものを楽しまれたことを思って「遊」という字を選んだ想い出があります。

 

後の2人は、分野は違うけれど芸術に関わるお仕事だった。絶対の自由と、豊かな創造の世界、なにものにもとらわれない柔軟な心を持ったお方とご遺族の方のお話から感じ取りました。そこで戒名に「遊」という字を選びました。

 

一文字の「遊」という漢字に、こんな深い意味があったのかと感じ入って、芸術に携わった2人に「遊」という字を戒名に付けました。