第3086回【判例】手術なしで性別変更を認める裁判の判例。
2024年2月16日金曜日の投稿です。
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今日のお話は、女性が生殖機能を無くする外科手術を
行わなくても、戸籍を女性から男性に変更出来ることになった
と言う全国の裁判所で初めての審判についての解説です。
〇事件番号 非公表【家事事件手続法 第四十七条に基づき非公表】
〇事件名 家事審判事件
〇原告 A
〇被告 地方自治体 B
〇裁判所名 岡山家庭裁判所津山支部
〇裁判長 工藤優希裁判官
〇判決日 令和6年【2024年】2月7日水曜日
〇判決文
家事審判申立人の申し立てを許可する。
最高裁判所の判決を踏襲し生殖能力要件は不要と
判断し、外観要件も含めて審判申立人は、
「性別変更に必要な要件を全て充足する。」
☆事件の主な経緯。
岡山県内に住む女性のA子さんは、住んでいる地域の
地方自治体 B の役所を訪れ、戸籍の女性の性別を
男性にしてほしいと懇願したが、地方自治体 Bの
窓口で前例がないので認められないと却下された。
それで、岡山家庭裁判所津山支部に家事審判を弁護士と
一緒に出向いて、申し立ての書類を提出し、戸籍を女性から
男性に変更するように申し立てを行った。
書類審査と、面接などで慎重に審理を行った上で、
岡山家庭裁判所津山支部は、女性の戸籍を男性に変更する
ように審判を下した。
☆法律の検討
〇平成十五年 法律 第百十一号
性同一性障害者の性別の取り扱いの特例に関する法律
第三条【性別の取り扱いの変更の審判】
➀ 18才以上であること。
➁ 婚姻していないこと。
③ 未成年の子がいないこと。
④ 生殖機能が無いこと。
⑤ 変更後の性別の性器部分に似た外観があること。
➀~⑤の要件を満たせば、家庭裁判所の審判を経て
変更が認められる。
※2名以上の医師から性同一障害者と診断され、
診断書が必要である。
☆ 法律の解説。
審判申立人のA子さんは、性同一性障害者の性別の取り扱い
の特例に関する法律の第三条に基づいて、どうなのかと言う
事なのですが、第三条の4項と5項の部分を満たす為に、
現在、外科手術を行って、それらしい外観と、女性の性器
の切除を行う必要性が過去の判例に基づくとあったのですが、
それを行う必要は無いと言う画期的な審判の判決でした。
この判決の根拠となっているのが、2023年10月に
最高裁判所で、希望者が性同一性障害者の性別取扱い
の特例に関する法律の第三条の4項の生殖機能が無い
と言う法律に基づいて、希望者が外科手術を強制されるのは
憲法に違反するとの判決が出されていて、それを踏まえて、
4項と5項の法律について、緩やかに考えた判決だった
ようです。
☆結語。
日本の裁判所で初めて女性が外科手術を行って、男に
似た外観となって、戸籍を女性から男性に変更していた
のですが、その外科手術を行うことなく、性別の変更を
行う事を申し渡した裁判所の司法判断でした。
その後は、性同一障害者の性別の取扱いの
特例に関する法律の第四条【性別の取扱いの変更の審判
を受けた者に関する法令上の取り扱い】と言う法律に
基づいて、Bと言う岡山県内の地方自治体は、Aさんの
戸籍を女性から男性に変更する手続きを行う必要が
発生します。
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