2008-11-27 08:37:17

過払と時効の準備書面(4)

テーマ:債務整理

過払と時効の準備書面の続きです。(PART4)


第3 過払金の確定日(取引終了時)を、消滅時効の起算点とした高等裁判所判決
 1 過払金の消滅時効の起算点を最終取引日とする高等裁判所判決の骨子
平成19年7月以降、高等裁判所において、過払金の消滅時効の起算点を取引の終了時とする判決が数多く下されている。
その判決の理由は、上記した最高裁昭和45年判決、平成8年判決を意識して、過払金債権の権利の性質を考慮した上で、さらに平成6年判決を意識して取引が継続している間は借入れと返済が繰り返されて過払金の額は変動して確定しないこと、また平成15年判決を意識して取引が終了するまでは、客観的状況から過払金債権の行使を現実に期待できないような特段の事情があるとして、消滅時効の起算点を取引の終了時と判断している点で、すべて共通している。
すなわち、以下のような内容である。
(ア)連続した貸付取引では、将来の貸付金を過払金に①充当する合意があり、借入と返済が反覆継続し、②過払金額も変動を繰り返して、権利が確定しないという権利の性質に着目し、権利が確定しない取引の途中で、過払金の返還を求めることは現実に期待できない。
(イ)したがって、③過払金の額が確定する取引の終了時が、過払金の消滅時効の起算点となる。
(ウ)これを、文章でまとめれば、「一個の連続した貸付取引においては、過払金を次の貸付金に充当する旨の合意が存在し、取引が継続している間は、過払金は新たな借入金に充当される結果、その額は変動して確定しないという権利の性質上、取引が継続している間は借主に権利を行使することは現実に期待できず、取引が終了した時点においてはじめて過払金の額も確定し、現実に権利の行使も可能になる」と言えよう。

 2 高等裁判所判決の抜粋
高等裁判所判決は、①将来の貸付金を過払金に充当する合意が存在する→②取引が終了するまで過払金額が変動するという権利の性質(権利の行使は現実に期待できない)→③権利が確定したときが消滅時効の起算点となることで共通している。
以下、判決を抜粋しながら述べる。

 (1)東京高判平成19年7月19日(上告不受理・最小三決平成19年12月4日)〔対CFJ〕
「制限超過部分を元本に充当してもなお過払金が存する場合、この過払金は民法489条及び491条の規定に従って弁済当時存在する一個の一連の取引中の他の借入金債務に充当され、また、弁済当時他の借入金債務が存在しない場合には、その後に発生したその一連の取引中の借入金債務に充当(①)されるものと解するのが相当である。」・・・/「各取引の途中で発生した各過払金の額は上記充当によって増減(②)を繰り返すことになるから、取引終了前のある時点において過払金に係る不当利得返還請求権が発生し、そして、その後これが消滅するに至ることがないままに取引の終了を迎えたとしても、一連の取引継続中にこの不当利得返還請求権を行使することは困難であるというべきであり、その行使を期待することは社会通念上難きを強いるものとして相当でないから、過払金額を特定(③)してその不当利得返還請求権を行使することが現実的に可能となった時から消滅時効が進行するものと解するのが相当である。そして、その時とは、一連の取引が終了した時点となる。」

 (2)名古屋高判民事第2部平成19年10月31日(確定)〔対プロミス〕
「本件各貸付は、本件基本契約に基づく1個の連続した貸付取引であり、本件基本契約に基づく債務の弁済は、各貸付ごとに個別的な対応関係をもって行われることが予定されているものではなく、本件基本契約に基づく借入金の全体に対して行われ、充当の対象となるものも全体としての借入金債務であると認められる。そして、本件基本契約に基づく各借入金債務に対する各弁済金のうち制限超過部分を元本に充当した結果、過払金が発生した場合には、当該過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当(①)する旨の合意を含んでいるものと認められる。そうすると、本件において過払金の不当利得返還請求権の金額が確定(③)し、消滅時効が進行するのも、1個の連続した貸付取引の終了時であると解することが相当である。」

(3)東京高判平成19年12月13日(東日本信販上告)〔対東日本信販〕
「本件の金銭の貸借関係が、一個の基本契約に基づき継続的に貸付けと返済が繰り返されている金銭消費貸借取引によるものであることは、当事者間に争いがなく、弁論の全趣旨によれば、上記基本契約は、借入債務に対する各弁済金のうち利息制限法所定の制限を超過する部分を元本に充当した結果、過払金が発生した場合には、上記過払金を、弁済当時存在する他の借入債務に充当することはもとより、弁済当時他の借入債務が存在しないときでも後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含むものと認められる。そして、上記のような過払金の充当に関する合意を含む継続的取引においては、その取引の途中で発生した各過払金は上記充当によって弁済当時存在する貸付金ないしその後の新たな貸付金に充当することにより清算するものとされており、こうした充当関係が存在する限り、その過程で各過払金の不当利得返還請求権を個別に行使することは予定されていないというべきである。したがって上記合意の趣旨に照らせば、上記基本契約に基づく取引が継続していて、先に生じた過払金を充当すべき新たな貸付金がある限り、借主が各過払金の不当利得返還請求権を行使することは予定されておらず、その権利行使を期待することは難きを強いるもので相当でないから、その間は、同返還請求権の時効は進行しないと解するのが相当である。」

 (4)名古屋高判民事第3部平成19年12月19日(確定)〔対アコム〕
 「このような1個の連続した貸付取引においては、当事者は、1つの貸付を行う際に、切替え及び貸増しのために次の貸付を行うことを想定しているのであり、複数の権利関係が発生するような事態が生ずることを望まないのが通常であることに照らしても、制限超過部分を元本に充当した結果、過払金が発生した場合には、その後に発生する新たな借入金債務に充当(①)する合意が存在するのと同様の法律関係を認めることができる。・・・/本件取引は、1個の連続した貸付であるところ、上記一連の貸付から生じた過払金は弁済や新たな貸付が繰り返されることによってその額の増減(②)を繰り返すことになり、その額が確定(③)しないし、過払金返還請求権の性質上、取引終了時までこれを現実に行使することは期待できないので、過払金返還請求権は取引の終了時を消滅時効の起算点とするのが相当である。」

 (5)東京高判平成20年1月30日(確定)〔対三和ファイナンス〕
「控訴人と被控訴人らとの間の取引は、継続的に借入れと返済を繰り(②)返しており、それぞれ同一の基本契約に基づくものかどうか、そうでないとしても1個の連続した貸付取引であると認めるのが相当であって、制限超過部分を元本に充当した結果、過払金が発生した場合には、その後に発生する新たな借入金債務に充当(①)することが予定されている取引というべきであるから、取引が終了するまでは過払金返還債務についての時効が進行せず、控訴人の被控訴人らに対する過払金返還債務についての消滅時効は、それぞれ被控訴人らと控訴人との間の取引が終了した時点(略)から進行するものと解するのが相当である。」

 (6)名古屋高判民事第2部平成20年2月27日(確定)〔対プロミス〕
 「本件基本契約に基づく借入金全体に対して行われるのであって、充当の対象となるのは、このような全体としての借入金債務であると解される。そして、このような基本契約に基づく一個の連続した貸付取引において、当事者は、一つの貸付けを行う際に、次の個別の貸付けを行うことを想定しているのが通常であることに照らしても、本件基本契約はこれに基づく弁済金のうち制限超過部分を元本に充当した結果、過払金が発生した場合には、その後に発生する新たな借入金債務に充当(①)する旨の合意を含んでいるものと解するのが相当である。
 したがって、このような充当についての合意により、本件基本契約に基づく貸付取引の継続中は、弁済や新たな貸付けが繰り返されることによって、過払金の額も増減(②)を繰り返して確定しないこととなるのであって、取引の終了する前に過払金の返還を求めるようなことは現実には期待できないものである。
 本件基本契約および本件充当合意のもとでは、基本契約の終了ないしこれに基づく一個の連続した貸付取引の終了により過払金額が確定(③)した時点で、過払金返還請求権の行使が可能になるものと解すべきである。したがって過払金返還請求権についての消滅時効が進行を始めるのは、本件基本契約の終了ないしこれに基づく一個の連続した貸付取引の終了時である。」

 (7)名古屋高判民事第1部平成20年2月28日(確定)〔対プロミス〕
「リボルビング式金銭消費貸借契約に係る基本契約は、継続的に金銭の借入れとその弁済が繰り返されることを予定する契約であり、このような基本契約に基づく取引においては、基本契約が継続している限り、新たに借入れと弁済が繰り返されることによって過払金の額が増減(②)を繰り返して、その額は確定せず、基本契約に基づく取引が終了し、同契約に基づき新たな借入れが行われることがないことが確定した時点においてはじめて、過払金の額も確定すると解するのが相当である。したがって、リボルビング式金銭消費貸借に基づく取引から生じた過払金返還請求権は、その債権額が確定(③)する時点である取引終了時から権利の行使が可能となり、同時点が消滅時効の起算点となると解すべきである。」

 (8)広島高判岡山支部平成20年3月14日(確定)〔対レタスカード〕
 各「取引に係る基本契約は、弁済当時他の借入金債務が存在しないときでもその後に発生する新たな借入金債務に充当(①)する旨の合意を含んでいるものと解するのが相当である。このように、ある時点で一時的に過払金が生じたとしても、その過払金は後に発生する新たな貸付に係る債務に充当される可能性があるので、弁済によって過払金が発生する度に別個の不当利得返還請求権が発生すると解すべきではなく、本件取引が継続する限り、不当利得返還請求権は1個であり、弁済や新たな貸付によって不当利得返還請求権の元本が増減(②)するに過ぎないと解するのが相当である。そうすると、過払金返還請求権は、取引が終了し、もはや新たな貸付に係る債務への充当の対象でなくなった時点で初めて債権額が確定(③)し、現実に返還請求が可能な1個の債権として認識できるというべきである。」として、消滅時効の起算点を取引の終了の時とした。

 (9)大阪高判平成20年3月28日(確定)〔対CFJ〕
「1個の連続した貸付取引においては、当事者は、1つの貸付を行う際に、次の貸付を行うことを想定しているのであり、複数の権利関係が発生するような事態が生ずることを望まないのが通常であることに照らせば、制限超過部分を元本に充当した結果、過払金が発生した場合には、その過払金はその後の新たな貸付金債務に充当(①)されるものと解すべきである。このように、いったん過払金が発生しても、これがその後の貸付にかかる債務に充当される可能性がある状態(②)が継続することになるから、それぞれの取引が完済扱いとなったり、あるいは、借主が以後の追加貸付を受けることを断念して明確に取引を終了させて過払金返還請求をするなどしない限り、取引継続中の個々の過払金請求権の消滅時効は進行しないものと解するのが相当である。」

(10)大阪高判平成20年4月15日(確定)〔対アコム〕
「発生した過払金は、後の借入金債務に充当(①)される可能性もあり、また、継続的に分割弁済が予定された契約において、借主は、少なくとも一連の取引が終了するまでは、各分割弁済を契約上の義務の履行として行う旨の認識のもとで弁済を継続していいると考えられる(そうでないと、借主が分割弁済を継続することはありえない。)から、事実上一個であると評価できる一連の取引が終了する以前に、当該借主に不当利得返還請求権の権利行使を期待することは現実に困難であり、かつ、その権利行使をしないからといって、当該借主が必ずしも権利の上に眠れるものであるとは即断できない。そうであれば、このような取引から発生した過払金返還請求権の消滅時効の起算点、即ち、当該借主が過払金返還請求権を行使できるのは、事実上一個の取引であると評価できる一連の取引が終了した時点であると解するのが最も実態に即したものと言わねばならない。」

(11)大阪高判平成20年4月18日(プロミス上告)〔対プロミス〕
「本件各貸付は、基本契約に基づく連続した貸付取引であり、債務の弁済は各貸付毎に個別的な対応関係をもって行われることが予定されているものではなく、基本契約に基づく借入金全体に対して行われ、充当(①)の対象となるものも全体としての借入金債務であると認められ、過払金の不当利得返還請求権の金額や内容は、後の貸付への充当が行われないこととなる取引の終了時以降に確定(③)するのであり、当該時点から当該請求権を行使し得ることとなるから、同時点から消滅時効が進行するというのが相当である。」とした。

(12)広島高判平成20年6月26日(確定)〔対プロミス〕
 「本件基本契約に基づく貸付が繰り返しなされることが予定され、それを前提とする本件充当合意(①)が上記のような内容であることからすれば、ある時期において一定の過払額が計算上発生するにしても、これは浮動的(②)なものであって、直ちに返還請求の対象となることが予定されてはおらず、過払額が確定(③)し請求が可能となるのは本件基本契約が終了するか、これと同視できる事由が生じた時点(以下「清算到来時」という。)と解するのが当事者の合理的意思に合致する。
    けだし、本件基本契約は、契約当事者双方が、上記のような内容に意義を認めて合意したと認めるべきであるから、借主としては、同契約を継続しながら必要に応じて新たな借入を起こすものであり(これは、過払金の返還を清算到来時まで猶予する意思を含んでいるとみることもできる。)、一方貸主としても、それを前提に返済を受け入れ、新たな貸付に応じているものと解される。」

(13)東京高判平成20年8月27日(確定)〔対三和ファイナンス〕
 本件取引のような1個の連続した貸付取引においては、当事者は1つの貸付けを行う際に、切替え及び貸増しのための次の貸付けを行うことを想定しているのであり、複数の権利関係が発生するような事態が生じることを望まないのが通常であることに照らし、本件取引は、制限超過部分を元本に充当した結果、過払金が発生した場合には、その後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在する取引であると解すべきであるから(最高裁平成18年(受)第1534号同19年7月19日第一小法廷判決・民集61巻5号2175頁参照)、最終取引日である平成19年11月11日まで過払金返還請求権について消滅時効が進行しないと解するのが相当である」


(続く)


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