(2024/2/22 徳井丞次 信州大学教授 日経記事より)

 

日本生産性本部が公表した労働生産性の国際比較において、日本はOECD38カ国中31位に転落した、とのことです。昨日 (22日) 日経平均株価が34年ぶりに最高値を更新したのとは対照的です。

 

筆者によれば、都道府県別の労働生産性を比較すると、トップの東京都と最下位県の差異は57%との開きがあるとのことで、これは、16位のフィンランドから34位のギリシア位の開きがあるとのことです。さらに、この30年間で国内の地域間生産格差は益々拡大しているとのこと。

 

原因を分析すると、地域間生産格差の大部分は、サービス産業により生じており、研究開発集約度の地域間格差も生産性に大きく影響していることが判明した、とされています。その上で筆者は、「地方の研究開発力を底上げするために、地域で新たなビジネスを創造する起業家精神に富んだ人財を育成し、各地域に根付いた産業育成支援策を検討すべし」 と提言されています。

 

小生は、この提言の意味するところは理解するものの、おそらくマクロ的には実効性はないと推測します。筆者も指摘している通り、サービス業は、本質的に提供財を在庫することができず (美容室を例にとれば明らかですが、髪のカットサービスの提供=即消費、となります) また、それを利用する顧客の集積が多いほど効率が上がる性質を持っています。また、技術開発にしても、情報通信技術と、それを有効に活用した新しいサービス分野へと変化しています。様々なサービス企業やIT企業が東京圏に集積していることがその証左となります。イノベーションも人の密な直接交流から発生することを考えると、経済のソフト化に伴う都市の優位性は明らかです。

 

小生は、地方の衰退、東京圏の人口の飛躍的増加は、今後20年の間に益々加速すると予測していますので、日本の競争力を向上させるためにはむしろ東京圏へ投資を加速し、地方は県の広域合併、中核都市への人口集中・効率化、コンパクトシティーの実現を図っていかなければ、インフラ維持もできない居住不可能な地域が多数出現することになります。 

 

小生は和歌山県出身ですが、数年前に、老朽化を原因とした水道橋 (水道管) の崩落事件が発生し、地震が来たわけでもないのに紀北地域が1か月間も断水したことを見て、もはや地方振興等といって漫然と予算を使う時代ではなくなった、強い地域をさらに強くしなければ国際競争にも勝てないとの考えを益々確信するに至りました。