「私は全3」

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はじめての方、ようこそ。再来、応援してくださっている方にありがとうございます。ハクジュと申します。集団ストーカー被害記録と、趣味のファンタジーといろんなジャンル書いてます。ご興味のある方はこちら。
 
ファンタジー過去作品はこちら。お時間のない方は作詞シリーズが短くてお手頃かと思います。

 

前回までのあらすじ

皐月は集団ストーカー被害で苦しんだ末に、精神科あさかの丘病院に入院させられた。病院から外出制限を受け、全ての情報を与えられず、保護者の兄からは虐待された。そして病院と兄から統合失調を認めるように、自白を強要された。

 

登場人物

片桐皐月(二十代)、片桐博隆(三十代)……母親に差別されて育った兄妹。博隆が皐月の見舞いに来るのは五か月に一回。

 

【私は全3】 

 

 皐月はある日の昼下がり、あさかの丘病院一階の相談室に向かった。四十代の美魔女、ベテランケースワーカー、北崎ゆかりに相談する。

 「兄から虐待を受けています」

 「事実はそうだって知ってるよ。でも医療関係者はそんな家庭あるわけない、何か理由があるはずだって自分をだますの。そして被害者患者には、家族も大変なんだって諭すの」

 「どうしてですか」

 北崎は正義にきらめく瞳で語った。

 「だって家族が憎みあうなんて悲しいじゃない。私たちは患者と家族が助け合うように、形だけは最善の努力をするの」

 「じゃあ兄の虐待から助けてください」

 「だから暴力から逃げるってことは、協力しあう義務からも逃げることだから、許されないの。助け合いの分担から逃げられるのは、家庭内で強い立場の加害者だけ。あなたには助かる権利なんかないし、助ける人もいないの」

 皐月は北崎が自分を憎んでいるのを感じた。

 「どうしてですか」

 「統合失調患者の具合が悪くなったら誰か責任を取る人が必要でしょ」

 北崎は自分の正義に不満を持つ患者が気に入らないのだろう。彼女の正義は歪んでいて、瞳の光り方もみるみる気味の悪いものになった。皐月は訊ねた。

 「私の人権は?」

 「ないね」

 北崎は皐月を殺すような目で微笑んだ。

 「まあ、健常者の家族側が暴力の被害者でも同じ。精神病患者を抱える家庭内では、誰かがやられ役を引き受けてくれないと区役所も医療関係者も面倒くさいの。傍観者は、家庭で利用されてる被害者がたとえ子供であっても、さらに便乗して責任者として将来まで利用するってわけ。合法的な暴力はいつだって楽しいよ。ざまあみろ」

 皐月は三年間の入院生活の後、病院関係者に祝福されて退院した。

 

 旭区のアパートで一人暮らしを始めて、自分の首以外の手術痕をさらに四か所見つけた。彼女は通院中、主治医に問いただしたが、横山市大のやったことだからわからないと聞かされた。皐月はあさかの丘病院の相談員という相談員に訴えた。

 「知る権利の侵害です」

 「え~、そんな馬鹿なあ」

 「真面目に聞いてください」

 「考えすぎじゃない? お薬はちゃんと飲んだかな?」

 この話を無関係の医療関係者が聞くと、たとえ患者が統合失調でもこんな対応はありえないと考えるだろう。しかし集団ストーカー被害者は常にこういった日常にさらされる。

 

 皐月が入院中、情報弱者に追い込まれ苦しんでいるうちに、カルテ開示の期限は過ぎてしまった。しかし請求権が残っていたとしても、皐月は横山市大と戦うつもりはなかった。家族が敵に回っている彼女に、さらに敵が増えても、苦しむのは皐月である。そして集団ストーカー被害者は自分が訴える方でも訴えられる方でも、裁判になったら必ず負ける。皐月はその後、ようやくスマホを手に入れ、被害告発記事を書き始めた。

 

 彼女はある年の一月末、自宅近くで鋼鉄線鶴ヶ峰駅ホームに沿った坂道を歩いていた。反対側では閑静な住宅街が並んでいる。この辺は園芸が趣味の人が多い。桜の時期ではないが、代わりによく似た白い花、吹雪の君が満開だ。

 坂道からは線路とホームが見え、鋼鉄線はネイビーの新型車両がデビューしたばかり。この場所は道路の舗装状態があまりよくないのだが、時々来る鉄道ファンの撮影スポットになっている。今日は天気がいいが彼らは見当たらなかった。

 ある時、強い風がどっと吹いた。吹雪の君の花吹雪に見舞われる。彼女は一瞬、袖で目を覆った。次に顔をあげると、目の前に見知らぬ若い男性が立っているのを見た。彼は花吹雪の司のようなまぶしい容貌で、コートと淡い黄色のロングスカート、ブーツをあくまで男性風に、ファッショナブルに着こなしていた。

 「あなたは」

 彼は小鬼のように面白そうに微笑した。

 「メリーポピンズだね」

 (続く)

 

 

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