はじめての方、ようこそ。再来、応援してくださっている方にありがとうございます。ハクジュと申します。集団ストーカー被害記録と、趣味のファンタジーといろんなジャンル書いてます。ご興味のある方はこちら。
 
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前回までのあらすじ。

ハーメルンは、友の会と対決し、友の会鶴ヶ峰支部、港南区支部を陥落した。ひまりはハーメルン隊員、が助けてくれたことを知った。

 

設定

※友の会……集団ストーカー行為を行う。ターゲットを統合失調に仕立て、実験体の拷問データを各国の学者、盗撮データを世界中の変質者に売りさばいて財源にする。会は別名、死の商人と呼ばれる。

 ※ハーメルン……友の会と対決する組織。ターゲットになった被害者を救っている。

 

登場人物

※立川ひまり……二十代。友の会のテクノロジーハラスメントにより、脳の血管が破裂し、身体障害者になった。ハーメルンに救われる。

※浅野美晴……二十代。友の会のテクノロジーハラスメント、睡眠妨害に追い詰められ、過食に苦しんでいた。ハーメルンに救われる。

※舵涼子……ハーメルン第三部隊員の美魔女。最初にひまりを事故から救った。

凪(ミカド・ナギ)……二十代。ハーメルン第三部隊員。ひまりを二度目の事故から救った。

※若鷺仁(ワカサギ・ジン)……二十代。ハーメルン第三部隊員。美晴を救った。

 

【狂気のビート4-2】

 

 真冬の季節が来た。凪は勤務中、制服の下に発熱素材の衣類。仲間と一緒にすっかり重装備である。最近の女性のファッションではパステルカラーの装いに、自己主張の強いマゼンタピンクをネイルやマフラーなどのアクセントとして少しだけ使うのが流行している。

 本部で浅野美晴の相談相手になっている仁を見かけた。美晴は失恋したと聞くが、立ち直りが早く、すっかり仁のファンに収まっているようだった。凪は凪で、長いこと孤立していた立川ひまりが気になる。しかし仕事外で何かできるとは思えない。どうしたものか考えていると、ある時、同じ本部で被害者支援をしている三十代の元被害者、林奈美恵に声をかけられた。

 「立川さんと個人的に仲良くなって一緒に映画に行く予定だったんだけど、私の都合が悪くなってしまったの」

 「それは残念でしたね」

 「帝君、チケットあげるから、代わりにエスコートしてあげてくれない?」

 「ええっ?」

 「彼女ね、この映画本当に楽しみにしてたの。あなたのこと、よく知ってるようだし」

 「わかりました」

 

 凪は本部中庭にひまりを見つけた。彼女はカウンセリングを受けにハーメルンに通っている。マゼンタピンクの手袋がまぶしい。彼は声をかけた。彼女は彼の申し出に嬉しそうだった。

 「連れてってくれるんですか」

 「僕が代理でよろしければ」

  翌週の凪の非番の日、二人は映画鑑賞に出かけた。ピッチコックの泣きが入る鉄板ホラー。映画館にとどろく凪たちの悲鳴。

 「うわぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ?!」

 二人でがっちと抱き合って大絶叫。

 

 仁は日の暮れた仕事帰りに、二人の帰り道に遭遇した。

 「“ザ、恐怖”見てきたんですか。強いですね」

 「最っ高に面白かった」

 幸福な放心状態の立川の隣で、凪がべそかいて袖で目をこすっている。仁がツッコむ。

 「何でホラーをチョイスしたんだよ」

 「おれじゃない」

 

 翌日、仁が本部第三部隊詰め所に出勤して席についた後、凪が泣きはらした目で現れた。彼がホラー映画のせいで眠れなかったことは、あまりにも面白かったので誰かが言いふらしたらしく、またたくまに仲間内に知れ渡っていた。凪は仁に言った。

 「仁、今日、お前んちで寝ていい?」

 「ふざけんなよ」

 凪はあっさりあきらめ、流れ作業のように先輩隊員のところに行く。

 「涼子さん、今日一緒に寝ていいですか」

 「いいですよ。はちみつミルク温めましょうね」

 涼子がママのようににっこり答える。凪、相手にされてない。しかし何か間違いがあるといけない。仁が彼女の安全のために立ち上がる。

 「凪、アホンダラ! もーいーから、おれん家泊まれ!」

 凪は振り返って口を尖らせた。

 「お前、はちみつミルクくれないじゃないか」

 仁はカチンときて片腕を薙ぎ払った。

 「出しゃいいんだろ!」

 近くにいた壮年、巨体の隊長が、パパのように首を90度に傾けて凪の顔をのぞき込んだ。

 「どうしてそんなにONとOFFが違うんだ?」

 「僕はいつもクールです」

 

 桜の季節がやってきた。仁は非番の日の昼下がり、横浜駅構内を散歩していた。食料品店では桜スイーツが競い合い、女子は黄色い声で喜んでいる。女性が生き生きしてると町は楽しいものだ。今年の春の女性ファッションの流行も桜色らしい。冬の燃えるようなマゼンタピンクより優しくなった。

 横浜駅構内は旧出口に西口側と東口側があったが、改装工事で出口が増えた。まだ工事は終わっていない。仁はそんなに構内で遊んでいないので、新しい出口をまだ覚えていなかった。旧い知識で説明すると、西口は十数番まで出口があり、地下街を楽しんでいると駅から相当離れてしまっても、西口出口ということになる。

 彼はファッションに詳しくなかったが、東口近辺の駅ビル、パミネは若い女性の衣類を多く扱っている。そこの女子トイレが大変行き届いているらしく、こだわりのある女性はパミネに用事がなくとも利用するらしい。

 しかし、そこでスマホや財布を置き忘れてしまった女性は、西口十数番出口付近で気が付いた時、雄叫びを上げながら全力疾走しなければならない死のルールがある。パミネどころか東口ゴルタやザゴウで物を忘れた女性はボルトになると言われている。そういうわけで、横浜駅周辺の求人情報で、立地条件が駅から二分と書いてあっても、結構危険な時があるのだ。

 

 仁は西口十数番出口付近から地上階に出た時、立川ひまりを見かけた。彼女は華美でない桜色ビーズのネックレスをつけて幸福そうな表情だ。でも出てきたのはパソコンスクールの建物だった。

 「立川さん」

 「若鷺さん、こんなところで」

 彼女は案の定びっくりしていた。彼は彼女に歩み寄った。

 「お勉強なさっていたのですか」

 「はい」

 彼女はキラキラと輝いていた。

 「お元気ですか」

 「はい。とっても」

 「かわいいネックレスですね」

 彼女は笑ってちょっとの間、ネックレスをつまんだ。

 「これ美晴ちゃんが作ってくれたんです。彼女、器用ですごく優しくて、大好き」

 彼は被害者達が立ち直って嬉しかったが、さらに彼女のおこぼれにあずかりたくなった。

 「どうしてそんなに嬉しそうなんですか? 僕にも教えてください」

 「私、恋してるんです」

 彼女は教科書の入っているらしいカバンを口元にくっつけて、いとおしそうに微笑んでいた。

 「資格取ったら帝さんに告白します」

 仁は何一つ隠さない彼女を爽快に感じた。

 「あいつは子供っぽいけど、実は手ごわいですよ」

 「わかってます」

 桜の木の下で風の子が躍る。若い親子連れが仁たちの近くを通った。幼児の手から赤い風船が逃げて、ママのところに帰る時のように嬉しそう天に昇ってゆく。仁とひまりはじんわり笑顔を共有して、この日から共犯になった。

 (終わり)

 

【中間の後書き】

 

たくさんの応援ありがとうございました。次回は後書きです。ご覧くださった方に感謝。

 

 

 

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