はじめての方、ようこそ。再来、応援してくださっている方にありがとうございます。ハクジュと申します。

私の記事の紹介です。メッセージボードとほぼ同じです。内容の振れ幅が大きいので、スマホユーザーでご興味を持たれた方はこちらをどうぞ。

前回までのあらすじ。
マルコは18歳。母のアネモネをデモンのアレンにさらわれた。マルコは母を取り戻す旅に出る。彼は旅の途中、大挙して押し寄せるおっぱいの誘惑に勝てるのか?! 明日はどっちだ?!

[マルコの冒険1‐4]

僕は旅を続けた。雨の日も風の日も歩いた。ある時小さな村にさしかかった。青いガラス工芸が名物で、子供や若い女性がペンダントやブローチ、ピアスで着飾っている。工芸だけでなく、乳製品も売りにしている。村から町になるのはそう遠くない、豊かな地域だった。

僕は雨上がりの気持ちのいい村を楽しんで歩いた。青い野の花たちが、雨粒に潤んでそよ風に揺れていた。ところが気分を台無しにする出来事に遭遇した。

村の中央で、女性達が一人を仲間外れにしていた。僕は割って入って被害者女性をかばった。
「いじめはやめるんだ!」
「何なのあなた」
「僕はマルコだ!」
加害者女性達は気に食わなそうに鼻を鳴らした。
「悪いのはカナコだよ」
「きれいだからってお高くとまっちゃってさ」
「そういうのをいじめというんだ!」
僕が言い返すと、女性達は悔しがった。
「何だよ、いつもカナコばかりいい男にかばわれて」
「くくくくく、私の勝ちのようね」
「えっ? カナコさん?」
僕が振り返ると、背後で被害者がどす黒く笑っていた。

カナコさんが僕の腕に全身を絡めてきた。
「マルコさん、助けてくれてありがとう。これ、私の気持ちです」
言って突然上着を脱いだ。真っ昼間なのに下着はボンテージだ。僕が面食らっていると、周りの女性達がどよめいた。
「カナコ許さない。私だってボンテージなんだから」
「私だって」
女性達が次々と上着をはだけはじめた。かろうじてスカートははいてるけど、意味があるのだろうか?
「ねえマルコさん、カナコより私のボンテージの方がおしゃれでしょ?」
「ジーナったら、マルコさん、私のおっぱいの方が大きいよね?」
「マルコさんは私が好きなの!」
「カナコばっかりずるい!」
次々と女性達が悩殺してくる。成年雑誌みたいな展開に。その時だった。
ーーパン!
頭に何か降ってきた。僕が振り返ると見たような顔の女性が立っていた。ワカメロングヘア。
「母さん!」
「母さんじゃない!」
彼女は相変わらずトレイを常備していた。
「どうやって脱出してるの?」
「そんなことはどうでもいい!」
僕は真面目に説明した。
「でもどのボンテージが正しいか、はっきりしないと」
「はっきりしなくていい!」
その時、黒煙とともにアレンが現れた。

母さんがトレイの一撃を繰り出すと、彼はまともに食らって、しばらく女座りでメソメソ泣いていた。次に立ち上がって右腕を凪ぎ払った。
「アネモネはもらってゆくぞ!」
「どうして逃がしちゃったんですか?!」
「ははははは」
「質問に答えてよ」
その時冷たい風が吹いた。
「キャァァァァ!」
母さんの声。僕が気がつくと、巨大な生き物が彼女を十数メートルも向こうにかっさらっていた。
「母さん!」
次にアレンが突進してきて僕のベルトをつかむなり宙に舞い上がった。
「何をする」
「花子が場所を変えたがっている。ついてこい」

アレン達はそこから山の上まで飛んで行った。野の花とは無縁の、荒れ果てた山だった。雨上がりの影響か、上空からは小さな地滑りの跡も見受けられた。

アレンは気に入った場所を見つけると、怪我しない程度の高さから僕を落とし、自分達も着地した。僕は辺りを見回した。アレンは荒れた山にしては広く平らな場所を見つけたようだ。
「アレン、花子って」
「彼女のことさ」
アレンは巨大生物の方に顎をしゃくった。母さんをさらって下ろさない相手だ。
ーー瞳はくるっと、お尻はぽってり。小さな翼が体重と釣り合ってないのに飛べる。僕はさとった。
「ラブリードラゴン!」
アレンが高らかに笑った。
「ははははは、彼女は氷の乙姫さ!」
「母さんを返せ」
「マルコ、遊んでやろう! これでも食らえ!」
ドラゴンが吠えると、その口から何かが飛んできた。
「うわ!」
僕が避けるとそれは地面に命中し、たちまち氷結した。つまり彼女は冷気を操るらしい。

花子は陰惨に笑って立て続けに攻撃を繰り出して来た。僕は逃げた。花子は攻撃をやめない。
「マルコ、さがっちゃだめ!」
母さんの声がした。僕は気がつくと断崖絶壁に追い詰められていた。肩に一撃を食らった瞬間、足を滑らせる。
「マルコー!」
僕は真っ逆さまに転落した。
(続く)