はじめての方、ようこそ。再来、応援してくださっている方にありがとうございます。ハクジュと申します。

私の記事の紹介です。内容の振れ幅が大きいので、ご興味を持たれた方はまずこちらをどうぞ。

前回までのあらすじ。
ーー僕はシンデレラ、二十歳。家ではしょっちゅう性奴隷。ある朝、魔法使いメノアプトさんに会い、何故か怒られた。その後、舞踏会に出席するためにカボチャの車に乗せられて、メノさんとお城に向かったーー。

詳しくお読みくださる方にはこちら。
以下は続きです。

[シンデレラ②]

カボチャの車の前で、豆のようだったお城はどんどん膨れ上がった。金と銀と宝石を散りばめられたあでやかな建造物が迫って来ると、僕は夢を見てるみたいだった。

城門の前に着いた。メノさんはお城で顔が利くようで、門番は礼を正すと一発で開門した。カボチャの車は城門をくぐって庭園を走り、お城の正門前に着く。

僕とメノさんが下車すると、お城の使用人達が次々と礼をした。彼らに段取り良く案内され、僕たちはお城の中の客間に通された。

そこでは若い女性がきらびやかなドレスをまとって待っていた。僕より一つ年下ぐらい。
「メノさま、お会いしとうごさいました」
「お久しぶりです、カレン様。急に押しかけてしまってすみません」
メノさんはカレン様に僕を紹介した。
「こちらはチュンテル王国リガッシュ公爵ご子息、シンデレラ様です。仲のいい公爵様のおかげんが悪かったので、私が代わりに舞踏会にお連れいたしました。シンデレラ様、カレン姫様です」
僕はカレン様と挨拶した。
「よろしくお願いします」
「こちらこそ」
メノさんはカレン様に説明した。
「乗り合わせが良すぎて、予定外の速さで着いてしまいました」
カレン様は気持ち良く受けあってくれた。
「かまいませんよ。長旅ご苦労様でした。朝食はお済みですか? よろしかったらご一緒しませんか」
メノさんが丁寧に答えた。
「嬉しいお言葉、ありがとうございます。けれどご一緒出来るのはシンデレラ様だけです。私はこれから用事がありまして」
「それはそれは、お忙しかったのですね。またお会いしとうございます」
「私もです」
メノさんはカレン様とあつく抱擁を交わすと風のように去って行ってしまった。

僕はカレン様と朝食をとり、その後、城内を案内された。
「シンデレラ様、こちらは薔薇園です。庭師が端正込めて育ててますの。ここで飲むハーブティーは格別ですよ。お掛けください」
僕は彼女とベンチに座った。彼女が、持参したバスケットから魔法瓶とティーカップ、各種ハーブを出した。
「シンデレラ様、好きなハーブを選びましょう」
「はい」
二人一緒にカモミールに興味を出してしまい、手が触れあった。
「あっ」
あわてて手を引く。僕と彼女は気まずくなって、互いに目をそらしてしまった。
「失礼」
「こちらこそ」
彼女が真っ赤になってる。かわいい。僕の頭にも血がのぼるし、シンゾーはバクバクした。

その時、知らない人の声がした。
「あらカレン、その方は」
「パンドラ女王陛下」
カレン様が即座に立ち上がり礼をした。僕がそちらの方を見ると、年齢不詳の女性が立っていた。カレン様より壮麗なドレス。女王陛下と聞いたので、僕も立って礼をした。

こっちが姫様であっちが女王様といっても、二人の歳が近すぎて母娘には見えなかった。親戚にあたるのかな? カレン様はパンドラ様に僕を紹介した。
「こちらは今夜の舞踏会にいらした、リガッシュ公爵ご子息、シンデレラ様です」
「あらようこそ、リガッシュJr.様。カレンの前に私とご一緒しませんこと」
「よろこんでー。」
僕はカレン様と別れて、パンドラ様の寝室に連れ込まれた。
「まあJr.、かわいいお顔なさっているのね。私とお医者さんごっこいたしませんこと?」
「よろこんでー。」
僕はお城でもお仕事をした。

終わって服を直していると、ノックがあった。パンドラ様の許可でメイドさんが入室してきた。神経質そうに顔をひきつらせている。恐い。
「リガッシュJr.様に急な伝令でございます。お父上様のきれ痔について、内密にお耳に入れたい事が」
パンドラ様はメイドさんが恐くないようだった。
「そうですか。ではJr.様、行ってらして」
「失礼します」
僕はパンドラ様に挨拶して、メイドさんについていった。
「それで痔がどうしたんですか」
寝室を出るなりメイドさんは煙になり、代わりにメノさんが立っていた。怒ってる。
「何をやっておんじゃ!」
「性奴隷。」
「カレンを狙え」
「でもパンドラ様に呼ばれちゃったから」
メノさんは辟易とした顔で両手を腰にあてた。
「あのねえ、彼女は彼氏つくらないのっ」
「変わってるね。どうして」
メノさんは勢いのあるため息をついた。
「国と結婚したんだ。あの歳で旦那持たない政治家だよ。女王だけど中身は国王だ」
「凄い」
僕は感嘆した。
「彼女をやり過ごして、カレンを狙いなさい」
「どうして?」
メノさんがブチキレた。
「命令だ! 聞かなきゃその服の代金もらうよ」

何だよ。メノさんたら、ジャーキー食べてる最中にオスにちょっかい出されたメスのマルチーズみたいに怒って。僕はパンドラ様の部屋に戻った。
「どうして結婚しないんですか」
パンドラ様はアンニュイにベッドに寝転がって答えた。
「政治とジェンダーは両立出来ないのさ」
「ジェンダーってそんなに大変なんですか」
「女は身も心も美しくて、男に都合良くないといけないんだ。そんなのやってたら政治出来ないよ」
「でも一人になるでしょう」
「いいさ。一生一人だ」
僕はいいこと思いついた。
「僕、弟になります」
パンドラ様は身体を起こすと僕の手を引いた。
「それは良かった。もう一回欲しかったところなの」
「あっ。」
僕はまたお仕事をした。

食事はとった記憶があるんだけど、結局二人でスケジュールを忘却し、翌朝まで爆睡してしまった。舞踏会に出席するためにお城に来たらパワハラに遭うわ、本命の舞踏会には出られないわ、踏んだり蹴ったりの展開に。

僕は暗いうちに起きて部屋つきのシャワーを借りた。日の出の頃になるとパンドラ様が目覚めたので、僕は窓のカーテンを開けた。同時に寝室にノックがあった。

パンドラ様が許すと知らないメイドさんが入って来る。カリカリひきつった顔をしていた。
「リガッシュJr.様に急な伝令です。お父上様はツエツエバエに刺され、命に別条はないものの七転八倒しており、ついにサーベルを振り回し始めたので、内密にお耳に入れたい事が」
「行っておいで」
「はーい」
僕はパンドラ様に許されてメイドさんについて行った。寝室を出るなりメイドさんは煙になって、メノさんが立っていた。
「カレンを狙えと言うとろーが!」
「でもパンドラ様、誰かいないと気の毒だよ」
「ほっとけ、あの年増は。いいからやり過ごして部屋から出て来い」