【感想】永3-Eimin-

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※女性向け短編フリーゲーム【永3-Eimin-】をプレイした感想です。
※本作に関してはプレイした事を前提としております
のでネタバレに配慮致しません。
※本記事を閲覧する前にプレイをおすすめいたします。

配信:https://www.freem.ne.jp/win/game/18207

時間:15分程度
環境:スマートフォン(機種:au/shv39 ブラウザ:Twitterのアプリ内ブラウザ)

プレイ前の注意
・事前情報無しにプレイしてください。
・(少なくとも私は)スマホからの方がテキストを読みやすいです。
・スマホの場合、音量の上げ下げは設定出来ますが、ミュートが仕事しません。

感想

まず懺悔させてください。
私、本作を一度プレイしようとして挫折しています。

「ウィンドウの文字が詰まり気味で読み辛くね?」
「目覚めて直ぐなのに発声がはっきりしすぎじゃね? 描写と矛盾してね?」
「共感性羞恥を膝に受けてしまってな……」


主にこの三点の理由から諦めました。

でも絶対これ好きそうな設定とストーリーなんだよなー!!!! 

シナリオだけめっちゃ読みたい!!!!!!

ブラウザじゃなくてDLしてシナリオデータだけ引っこ抜いて読めないかなー!!!!

と邪道極まりない事を考えて悶々としつつ(出来なかったので)諦めて再プレイに挑みました。

で、結果。

私が悪かった。

この作品はゲームという媒体だから面白さが増すんだなとオチを見て思いました。

ADVの利点って絵や音でストーリーを演出出来る事でなく、一度に読める文章量を製作者の側で設定して、作品に最適なリズム感(読む速度)を決められる事と、探偵小説を読むときにありがちなオチやあとがきから読んで結末を先取りする、なんて事が出来ない窮屈感にあると個人的に思っています。
(まどろっこしいと思わないでもないですが、紙一重ということで)

この永3はまさに私が思うADVの特性があるからこそオチに深みが増した作品だと思います。何度も書きますが、ゲームだから面白い。

別媒体で読んでも内容は変わりませんが、オチが示されるまでのドキドキ感とあーなるほどな! という腑に落ちる快感はADVならではな気がします。

もちろんこの面白さは、作家さんのストーリー構成力の高さがあってこそです。
構成の上手さも目を見張りますが、設定の膨らませ方にも目を瞠ります。

この作品の未来って私達の価値観からすると人権軽視では? 
と思うような設定や常識の中で人々が生活しているんですけど、見方を変えればある意味現代よりも人の権利は平等に与えられていて、視点がフラットなんですよね。

進行上の問題もあるんでしょうが、寧ろまだ現代に近いレムの思想の方が偏見に満ち溢れてて、その分キーヤの狂言回しとしての役割が際立つ。

レムがおかしいと感じた事柄を突っつけば突っつくほど、キーヤが冷静に説明してかわす、結果、キャラの特性がより伝わる。
し、更に世界観に具体感も増すしで役割分担がはっきりしていて良い組み合わせだなと話を進めるにつれ思いました。

キャラ配置が上手だし、キャラの立たせ方も無駄がない。
蛇足とも思える未来の科学技術の進歩への記述も全体を見れば必要なものに感じるし、この作品自体に興味を持つ大きなフックの役割を果たしていると思うんです。

例えば、作中にあった生体チップ(ベースはマイナンバー制度なのかな?)やVRとかって、今の制度や技術が発展したらのifから着想した設定な筈なんです。
素人考えですが、そういった現代の価値観に根付きつつ、もしもを膨らませる、良質でオーソドックスなサイエンス・フィクションらしいサイエンス・フィクションを読ませて頂いた気がして満足感でいっぱいです。

で、話が変わるようで変わらないんですけど、無駄なくキャラ立ちさせるという部分ではレムとキーヤとコンビニ店員とのやり取りが一番自然で、レムの気性を印象つけるシーンになったんじゃないかなと思います。
これは冒頭で書いた共感性羞恥を膝に受けた原因でもあるんですが、得意不得意とは別の部分でこれは絶対に語らないといけないなと思うくらい描写として上手いなと思ったのでn週目のプレイをされる方は注目して読んでほしい。

言葉の意味を取り違える勘違いネタって鉄板だし、特に作中にあった「おいくつですか?」で数を聞かれたのに年齢だと勘違いするってありがちなんですよ。
王道は強い。強いけど、ネタを引っ張らずに最小限で切り上げる事で諄さは薄いしこのネタが大丈夫な方にとっては面白いなで終われる、ちょうどよい長さだと思うんです。
台詞運びも端的で無駄がないし、未来の世界を目の当たりにして若干心細さで自信を無くしつつあるけど、それでも根本には私は選ばれた人間なんだというエリート意識はまだあると思うし、(未来人にとって)素体って珍しいでしょ、興味を引いて然るべきよね(もしかしたら容姿に自信があったりもするのかな?)という自意識の現れなのかと思う印象的なシーンですよね。
短い中でレムの性格が色濃く現れていた内容なんじゃないかと私の勝手な解釈ではありますが沿う感じました。

ただ残念なのは私は人様が恥をかく内容はどんなものであれ苦手という事! 素直に良いものを見たと言えない自分の矛盾が辛い。

でもそこを乗り越えたら面白いし作品の見方が変わるし、なんで最初に挫折したんだろうと後悔してしまう。
これは良い夢オチだし、見たあとでスタート画面で作品タイトルとレムの姿を見るとああ! そういうことか! と膝を打つしかないというかここまで計算に入れての作品つくりだったらりゆさん天才では!? と逆ギレしてしまいそう。

あと、本作に出演したキャストは自分の登場シーンに関連する部分の台本しか配布されていないそうなんです。
つまり、キーヤ役の中嶋有志さんはキャストコメントの時点であのオチを知らずに喋ってるんですよ!!! これは作中のキーヤと同じ状況ですし、意図的にしろたまたまにしろ、結末を知らせずに演じさせたのは大正解。ウルトラCですよ。
踏まえてキャストコメントを聞くと趣があって深みが増す事間違いなし。

良い作品と出会わせて頂きました。


蛇足
最近話題になっているからふと思いついたんですけど、ソーシャルゲームFate/Grand Orderの二部一章に登場する進化した人類ヤガの青年パツシィとプレイヤーキャラのぐだ子にキーヤとレムが重なる部分があって比較すると面白いのではと思いました。
箇条書きにすると共通項が案外と多いのでより永3の世界や二人の関係性を掘り下げる一助になりそう。

ここはちょっとと思った部分
・ウィンドウと文字の余白が乏しい
・ウィンドウにシステムコマンドが集約されているところ
・立ち絵が表示された時にウィンドウが透過される仕様
(キーヤの白衣が文字と重なると若干読みづらい)
・ボイスのオンオフ機能がほしい。
・寝起きのレムの発声が思いの外はっきりしていた事。
(変なところに面白さを見出してしまって申し訳無くなって声を消したくなった)