日本では正社員を続けていくことがどれほど大変で、 非正規社員で働くこともまた、どれほど辛いのかという一冊です。(。´Д⊂)💦

 

 

著者は、 東京大学教授の本田由紀さんです。



突然ですが皆さんは、転職をされたことがありますか?
現在は大卒・正社員で就職した人の3割(高卒は4割)は、3年以内に離職をするそうです。

仕事を辞めた理由のトップ3は「仕事が合わない・ 労働時間・賃金」となっています。

私はどちらかというと、転職にはリスクを伴うイメージがありますが( 自分自身転職活動をしたことは一度もない)、世間一般の認識としては「転職」に関してはポジティブなイメージがあるのですね。びっくり
( 実際に転職をしたことのある人は全体の半分以上)

( 40代の8割近くは転職を経験している)
( 年代が若ければ若いほど、転職に対してのポジティブなイメージが高い)

大概の大企業における「退職金」は、勤続年数が20年以上を過ぎた途端に加算額が大きくなります。今まで少額加算だった退職金が、勤続20年を過ぎると年間で約100万加算となり、5年刻みで500万円ずつ増えていきます。(例)↓


(同じ正社員であっても大企業と中小企業では、退職金の相場も倍以上変わってきます)
よって正社員採用での転職が成功したとしても、最終的な退職金をトータルで考えた時には、 会社での勤続年数が少なければ、手取りが少なくなってしまう可能性があります。( 中小企業で10年づつ3社で働くと、3社トータルで手にする退職金は300万円台にしかならない)

団塊世代が享受した終身雇用時代においては、定年まで勤め上げることにより、まとまった退職金を手にしてきました。たとえ現役時代に住宅ローンや教育資金の捻出に精一杯だったとしても、定年退職で支給される退職金によって、老後の資金が確保されてきたのです。


いくら正社員での転職といえども、転職をすれば退職金の加算はまたゼロからのスタートになってしまいます。よって我々転職世代(40代の8割)が60代になった時には、まとまった退職金を手にする確率は(団塊世代と比べれば)少ないであろうと予想されます。


また非正規社員と正社員には、年収にも大きな違いがあり、その後の年金も大きく変わってきます。

同じ時間働いても、正社員と非正規社員の時給には倍以上の差があり、退職金や年金も含めれば3倍以上の差が生まれます。

特に扶養内で働く女性には103万円の壁があり、ひとたび女性が正社員を辞めてしまうと、将来支給される年金の額が全く異なってしまいます。

では、みんな歯を食いしばって今の会社に正社員として とどまり続ければいいのかといえば、「正社員だろうが非正規社員だろうが、みんなきつい」というのが現状です。

P155引用
このように、いずれの働き方においても、仕事に関わる重要な何かと引き換えに、別の重要な何かを手放さざるを得ないような状態が生じているのだ。そして手放した「何か」は極めて大きい。短時間労働者にとっての不安定性、 長時間労働者にとっての「きつさ」、中時間労働者にとっての将来や人間関係の面での閉塞性…。それらはどれも普通の人間にとって耐えがたいほどの限度に達しているように見える。

参照 ( 世界と比べてもぶっちぎりの労働時間である日本と韓国)

( 正社員には成績のノルマや人間関係、出世競争のプレッシャー、 長時間労働などがのしかかります)

筆者曰く、
P23引用
現在においては、これまで競争のターゲットとされてきた学力・受験・学歴などに加わる形で、別種の基準が新しい支配力を持つようになっている。それは、コミュニケーション・スキルや意欲、創造性、そして問題解決力など、感情や人格の深部に根ざすような曖昧で柔軟な諸能力~いわゆる人間力~である。

↑ こういう現象を著書は"ハイパー・メリトクラシー"と名づけました。

そんなハイパーメリトクラシーを会社で維持していくのは、婚活における「 学歴優秀で コミュ力が高く、常に前向きでやる気があって、どんな困難にもめげず、人間的にも魅力的な方💕」を要求されるのと同じぐらいの難易度じゃないですか?(要するに無理ゲー)

労働のハイパーメリトクラシーの要請に応え続けられる若者もいますが、その要請の過重に潰されてしまった若者は、 教育機関や職場からの離脱・退出を選択することになります。


P101
正社員は安定雇用と相対的高賃金の代表として、あらん限りのエネルギーと能力、そして時間を仕事に注ぎ込むことを求められがちである。

2年後には育児勤務の切れる私が抱える問題、「正社員としてフルタイムでとどまるのか、非正規社員として ゆるやかに仕事を続けるのか問題」は、私個人だけが抱える問題ではなく、(老若男女問わず)日本全体で軋んでいる問題なのだなあと 感じる一冊でした。