人生を大成させる心得とは?

こんな言葉はどうですか



人生は順逆の連続という。


順逆をこえるとは、
順境にも逆境にも
負けない自分を創るということである。

聖路加国際病院の日野原重明先生――。
この方の百年の人生にも、
順境逆境は繰り返されたろう。

それを超え、いまなお
使命に生きておられるお姿には
神々しさがある。


1970年、
日航機よど号ハイジャック事件があった。
日野原先生はその機中にいた。
58歳だった。


事件4日目、乗客は全員無事、
韓国・金浦空港で解放された。
靴底で大地を踏みしめると、
「無事地上に生還した」の思いが膨らみ、

これからの人生は
与えられたもの、
人のために生きよう、
という決意に繋がっていったという。

帰国した日野原先生を、
1000人を超す人たちからの
お見舞いやお花が待っていた。

その礼状に奥さまが書き添えられた。

「いつの日か、いづこの場所かで、どなたかに、
この受けました大きなお恵みの一部でも
お返しできればと願っております」


この言葉が日野原先生第二の人生の指針となった。


昨年末、NHKテレビで
日野原先生のドキュメント番組が放映された。

インフルエンザで39度の熱がありながら、
子供達との約束だから、
と地方講演に向かわれる姿をテレビは映し出していた。


その先生が作られた俳句がある。

“百歳はゴールではなく関所だよ

人生の順逆にほほえみを持って
立ち向かわんとする姿が、この句に表われている。



「順境にいても安んじ、
逆境にいても安んじ、
常に坦蕩々として苦しめるところなし。
これを真楽というなり。
萬の苦を逃れて、
真楽を得るを学問のめあてとす」

中江藤樹の言葉である。

順境の時、人はつい慢心しがちになる。
順境にあって傲慢にならず、
謙虚に心を落ち着かせている。

逆境の時もへこたれず、
心が安定している。
どんな状況でも心が平らかでゆったりとし、
状況に振り回されない。
それを真の楽しみという。

この真の楽しみを得るために、
そういう人物になるために学ぶのだ、
と藤樹は学問の要訣を説いている。

人生を大成させる人は一様に、
この要訣を体得した人であろう。

私たちもまた、
こういう学を修めたいものである。

「人生を大成させるための心得とは?」

『小さな修養論』より

ひとことキーワード

人生は順逆の連続。

順逆をこえるとは、
順境にも逆境にも
負けない自分を創るということである。

石井ゆきお選