さらっと感想行きます。

(さらっと、って言っといていつも長いんだけどね)

 

これから見る予定で、ネタバレ一切見たくない人は回れ右。


ルイ15世とその愛人ジャンヌ・デュ・バリーの出会いから別れまでを描いたフランス映画でございます。

ハリウッド映画みたいな外連味もなく、そして実際にヴェルサイユ宮殿で撮影し衣装はシャネル、ルイ15世にジョニ―・デップ、主演は監督脚本を務めたマイウェンという...そのなんというか、豪華というかどこかもったいないというか(失礼)とにかく静かで質のいい「歴史純愛映画」に仕上がってます。
とにかくベルサイユ宮殿の内と外を余さず使ってるので絢爛豪華なことこの上なし。

で、ジャンヌ・デュ・バリーとくれば、ベルばら世代にとっては
「美貌で豊満で一目で男を虜にする娼婦上がりの魔性の女」的なイメージがあると思うんですが、...いや実際私もそうでした。
なんつうかこの映画見て逆に、ベルばらの説得力に感心したぐらいで。
なにがいいたいかというと、ジャンヌ役のマイウェンが、王を虜にする魔性の女にはどうしても見えないのね。
マイウェンが下手というわけじゃありません。さすが監督もやってるだけあって演技に説得力があるし、表情もたたずまいもうまい。
でもね、やっぱりね、
美女をとっかえひっかえできたルイ15世が、居並ぶ貴族の女性たちの中、ジャンヌから目を離せなくなったシーン、あそこに無理があるんですよ。
だってマイウェンさん、誰に似てるかと言えばフィフィなんだもの。
フィフィ嫌いじゃないけど、ジャンヌデュバリーかっていうと違うでしょ。
貧しかった少女のころ、知的な会話や書物に興味を持って、本の読み聞かせ係を仰せつかってた頃はちゃんと美しく知的な少女だったのに
いざマイウェン登場となると、途端に主役が貧相になってしまったというしぼみ感はぬぐえませんでした。

言葉少なに、目と態度で大物ぶりと孤独さを表現しているジョニーはさすがなんですが、
その彼が思わず見とれる初対面のシーンでは
「彼はおそらく見てくれだけの女には飽き飽きしていたので、彼女の内に秘めた知性とユーモアややさしさ、ヒトとしての深さを見抜いたのだろう」と無理やり納得させましたけどね。
なんでちゃんとした純フランス美人女優を使わなかったかなあ。

 

ところで国王の「公妾」になるには、さすがにただの街娼、平民ではダメなんです。ある程度地位のある夫がいないとダメ。で、そのころ愛人をやってたデュ・バリー伯爵と結婚することで、ジャンヌ・デュ・バリー伯爵夫人は王の公妾になることができたんでした。なんだか不思議。

全体に嫌いな映画ではないです。ベルばらではジャンヌはあくまで欲の塊でマリーアントワネットと敵対していた「娼婦上がりの下品な女」でしたが、
知的で人の心を読むのにたけた、王の孤独を一身に引き受けて心から愛した女性として描いている点は、私の知らない視点でした。なるほど、そういう見方もあるのかとね。
天然痘になった(もちろん恐ろしい伝染病)ルイ15世を抱きしめるところなんて、聖女のようでしたから。
それと、マリーアントワネットはなんか世間知らずのぽわんとしたお姫様としてしか描かれてなかったけど、とにかく、見た目は肖像画そっくり。
そして王太子(のちのルイ16世)。とにかく無駄にかっこいい。いらん美貌と背の高さでやたらキラキラ輝いてました。

聞くところによるとマイウェンの息子だとか。おい。身びいきやめてちゃんと役柄にあった俳優連れてきなさいよ。
伝え聞くところでは、実際のルイ16世は男性的魅力はあまりなく、アントワネットにも女性そのものにも無関心で、太り気味のさえない外見だったみたいですけどね。
きっと、この映画には出てこないフェルゼンと合体させて、マリーに浮気の必要がないようにしてあげたのね。(何のためだ)

まあ、マイウェンの見た目がもう少しどうにかなっていたなら、かなりいい線言ってる映画です。ただ、「ジョニー命exclamation ×2」の人にとっては、いまいち食い足りない映画かもね。

あ、彼のフランス語は見事でした。そりゃ、過去のパートナーがフランス人だし、しばらくフランスに住んでたしね。
それにしても、MINAMATAといい、ジョニーの作品選びは「売れ筋じゃなきゃ目もくれない」というところから離れて、私としては好感もちましたね。
見事な「孤独な王様」っぷりでした。