ボクの田舎(新潟県柏崎市)には、なじらねーーという言葉・方言がある。
うちの父母の世代はほとんど使わない。したがって、ボクから発信することは皆無だ。
ところが、高校の同窓会後の2次会では、比較的この単語が飛び交う。意訳すると「元気してた」「ずいぶん久しぶりですがお変わりありませんか」
おばあちゃんからしか聞けなかった単語を、いまこの年になって友達から質問されると、それだけで涙ぐましくなってくる。ある意味で相手に暖かい思いやりを投げかける言葉だ。
こちら側の表現だと「どうしてた」「元気だった」という意味だが、この僅か4文字が、大の大人を涙ぐませる力を持っている。
もちろん歴史的な背景が一番だ。
ボクの場合、おばあちゃんを感じる。ボクが小さい頃、大好きな母は外に働きに出ている。だから昼間家にいるのはおじいちゃん、おばあちゃん、ボク、弟。どうしてもコミュニケーションは密になる。でもどうしても気企画ないことが一つある。
ボクの母親への悪口だ。
それさえ除けば、やや厳しいがとても暖かい人だ。ボクらを慈しんでくれた。いわゆる嫁と姑の仲は孫には如何ともしがたい。首を横に振りたい場面でも、仕方なく、身を守るために縦に振ることもあった。あるいは返事を保留する。ノーアクションだ。
そうこうすることでお婆ちゃんは昼間の母親。夕方には本当の母親が帰宅する。台所で夕飯の支度をする母親とのコミュニケーションをしていると、テレビのニュースが聞こえないと訴える鬼ばばあ、でもボクはやめない、話し続ける、おばあちゃんはもうだんまり。言っても言っても聴く耳を持たない孫。会話は続く。
こういう背景もあって、『なじらね』と言葉をかけてくるおばあちゃん。この言葉は誰が発しているのか、なぜかやさしい。
いいね!
コメントする
シェア