O side









「ん…、」
「今日はまたこの辺りが凝ってますね。」




肩甲骨の辺りを暖かい櫻井さんの指が
ぐわわわーっとなぞる。


「んーーっ、、そこ気持ちがいいです。」
「それは良かったです。」




オイルで滑りが良くなってるからか
ぐわーっ、つーか
るわーっ、つーか。


ぬるーってんじゃなくて
とぅるーってんでもなくて


とにかく


「あー…っ、、そこが……」
「良いですか?」




櫻井さんの施術もいいんだけど




「だっ…」
「痛い?…少し強すぎましたね。すみません。」
「ん、驚いただけで大丈夫です。」
「じゃあ、これくらいで。」
「んーー、、っ、、すごっ…」
「ふふっ……」




櫻井さんの……
この少し低い声が心地いい。


今回はオレが寝てないからか
あまりの気持ち良さに声が漏れるし、その度に櫻井さんから確認されるように声を掛けてもらってすごく嬉しい。




前回も、

こんな感じにしてくれてたのかな。




オレが寝てても関係なく?



だから気持ち良くて寝ちゃってたってのもあるんだろーけど。……ならさ、…なら、この人ってスゲーいい人だぞ。






その時、背骨を沿って腰の方へと
櫻井さんの手のひらが流れて行った。


最後に腰骨の方にサラリと指の腹が触れる。


「ぅ…っ、ふふふっ、」
「…?」
「くっ …擽ったッッ ふふふっ」
「擽ったいですか?…、えっと、ここも凝ってますけど、どうしますか?」



そう言う櫻井さんの手のひらは腰の上で
指先の方は腰骨の辺りまで届いてる。



櫻井さんて手が大きい?
それとも指なのか……。

男の腰に手を当てて
そんなとこまで指って届くもん…?



その指が
一瞬だけクッと曲がって
腰骨の当たりを掴むように覆われた。


「んふふっ 腰っ 骨んとこっ、」
「あ、すみません。」



オレの声に反応してくれて、

すぐに櫻井さんの手のひらが離れていった。

途端に腰の辺りが涼しくなって
思わずふるりと肩が揺れる。



「え、そんなに擽ったかったですが?」



一段と低くなった櫻井さんの声。

怒ってはないと思うけど
うつ伏せで寝てて表情が見えない。



「いや、寒くなったなって。」
「あ、なら、部屋の温度をあげます。」
「じゃなくて。」
「…?」
「櫻井さんの手がなくなって、スーッと冷えたって言うか。…ほら、櫻井さんの手のひらがすげーあったかくて気持ちがいーから。なんかこう、なくなって寂しくなったって言うか・・・。」



少しの沈黙。



自分でもこんなに喋れるんだって驚いた。

ほら、櫻井さんの顔が見えねーし。
怒らせたら嫌だなって思ったというか。
機嫌、悪くなって欲しくねーなって。

だって、こんなに一生懸命マッサージしてくれてんだし。



にしても沈黙があまりにも長くて
何も言ってくれない櫻井さんは
いま、一体どんな表情をしてんだろう。




「ん。。。櫻井さん・・・?」


痺れを切らして起き上がった。

丸い顔を入れるところから顔をはずして、

ベッドの方に片手を付いて上体を逸らした。

見上げた時に目に入った櫻井さんは、
右手で自分の口元を覆ってて、

もう片方は自分の腰に当てている。


え?


オレ、そんな変なこと言った?
驚いてんだよな。
え?



「櫻井さん…? ごめん、オレ、なんか変なこと言いました?」
「…いえ、こちらこそすみません。」




ポーカーフェイス。



最初に会ったばかりの時みたいに
櫻井さんはまた、

笑顔を無くした表情に戻っていた。







こりゃイケメンですわ( ˇωˇ )