学生さんのいないW通りは クリープを入れないコーヒーみたい(なんて古い!と自分でも呆れながら)なのですが、年に一度くらいは 静かなW通りであってもいいでしょう。
    
    昨日 この通り沿いにあるW松竹の前を通り抜ける際 この休日に観られる映画をチェックしておきました。こちらに引っ越して3回目の新年を迎えたというのに 気になるわりには 入ったことのない映画館。
という訳で 今日は思い切って 観ようかとチェックした作品を観ることにしたのです…
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   この映画です。
知らなかったのですが 凄い作品だったのです。
まず 3時間弱のドキュメンタリーの中に声が殆ど入っていない…会話は日曜の昼食後と散歩の時間だけ許され 俗世間から完全に隔絶された世界。
カトリック教会の中でも厳しい戒律で知られるカルトジオ会の男子修道院「グランド・シャルトルーズ修道院」
映画は ひたすら 修道士の清貧な日常を淡々と伝えています。ナレーションも音楽も全くありません。撮影用ライトも使わず あるのは 自然の光と自然の音と 必要最低限の雑音だけです。雪が降りしきる音、小川のせせらぎ、鳥の囀り、足音、ペンを走らせる音、薪を切る音、ノコギリの音…そして鐘の音と祈りの声…こんな風に正確には2時間49分修道院を中心に四季が過ぎていきます。

    いろいろな機材を使って 大勢のスタッフを動員してどんな映画でもできてしまうこの時代に 監督一人で修道院の人達と生活を共にし 何ヶ月もかけて撮影された映像です。

解説には進歩、発展、テクノロジーのもとで道を見失った現代社会に対する痛烈な批判と、今日の物資文明を原点から見直そうとする思いが根底にある…と書かれていますが…確かにそう思う反面カトリック教会というものは このような厳しい戒律に耐えられる 選ばれた人間のみしか入ることのできないものなのかと考えてしまいました。どんな宗教にせよ、門が大きく開かれていて 寛大に許して下さる神が そこに居られるのなら…と思います。アンドレ・ジイドの「狭き門」を思い出します。こちらはプロテスタントですが…

   ちなみに 私たちは この映画が魅惑的なシャルトリューズ・リキュールの作られている修道院だという事を知っていたから観ようと思ったのです。
(お恥ずかしい限りです。)

 ただ…その自然の光のみで 撮られた映像は まるで西洋絵画を観ているかのような…それは 感動の連続でした。