東洋経済オンラインに、リクルートキャリアで知財人材等のコンサルティングを行っている方の記事が掲載されました。

知財部門は特許の権利化よりも戦略へシフトすべき、知財部門は最終的に事業へ貢献することが目的、知財部門長が経営に携わるべき、と言った論調です。

 

概ねその通りかと思います。

 

だた、研究開発も、知財や法務も専門性の高い職種です。3年程度知財部門を経験しただけでは、基本的な考え方は理解できても、十分な知識経験や実務能力は身につきません。

そのような方が、特許事務所へ出願を依頼して、その原稿をチェックする仕事ができるのでしょうか。

調査やライセンス契約についても同様です。

 

そもそも経営とは、知財法務だけでなく、研究開発、生産、物流、販売、マーケティング、人事、財務会計など全体を俯瞰することで、仕事をスムーズに進め、会社の利益を極大化することです。

 

知財部門長を役員にして、知財重視の経営をすれば業績がアップするという単純なものではありません。

 

経営戦略を立てるのは取締役会及びそれを補佐する経営企画部門です。大きな会社であれば、事業部長と事業部企画部が戦略を練るかもしれません。

 

その戦略方針に対して、開発部門、生産部門、知財部門、人事部門、総務部門などが実働部隊として動くのであって、知財部門が経営戦略にまで関与すべきというのは、知財部門側の願望に近いのではないでしょうか。

知財部門が経営企画部門に協力することはあっても、経営戦略まで担当することは、ほとんどの会社で要求されていないでしょう。

 

パテントトロール、特許管理会社など知財そのもので利益をあげている会社であれば、知財重視の経営も当然です。

しかし、例えばITを本業をしている会社が、ITよりも知財重視の経営をするというのは、少々本末転倒です。

 

経営者は知財「も」重要とは考えていても、知財戦略重視の経営という、バランスを欠いたことは考えていないでしょう。経営とは全体の最適化です。

 

https://toyokeizai.net/articles/-/225730

会社が持つ知的財産について注目が集まっている。たとえば自動車業界ではEV(電気自動車)や自動運転などこれまでにない、新しい車種の開発が進んでいる。まったく新しい技術を必要とするため、そこにIT系や総合電機といったプレーヤーが参入してきている。異業種の新たな技術が入り込む状況下、それまで持っていた特許技術の中で、大きな使い途のあまりなかった技術が重要な技術として見直されるケースも出ている。

 

そこでまず、神庭氏は知財部のメンバーに、「より事業に貢献するために必要な機能は何かを洗い出す」ことを宣言した。部内のリーダーたちと徹底的に議論を続けること約8カ月。神庭氏が議論に費やした時間はトータル150時間に及んだ。「リーダーたちは、おそらくその倍くらいは話し合っているだろう」(神庭氏)という。

そうした議論を経た結果、必要な機能として、「戦略策定」「知財力」「決めたことをやり遂げるPDCA」の3つを洗い出した。知財力とは、特許を効果的に活用する力、権利範囲を広げられるように特許を書く力などで、これらを強化していく方針を決めた。

しかし、根本的な考え方と行動を変えるには、時間が必要だった。

「戦略策定に時間を割きたかったので、メンバーに『出願業務は特許事務所に任せたら』と言ったんです。大反対に遭いました(笑)。でも、極端な言い方をすれば、企業で働く知財担当者は『出願のプロ』ではなく、『戦略のプロ』になるべきだと思うんです。事業を理解し、事業に成果をもたらす戦略を考えることにこそ、価値があると思うのです」(神庭氏)。

 

一般的に、法務・知財職に就いている人材の評価は、その非常に高い専門性にあると思われがちである。しかし、今まで100人を超える法務・知財職の方の転職支援を行ってきた経験から言うと、転職市場において評価されるのは必ずしも専門知識だけではない。むしろ、近年求められている人材は、事業・開発活動の「水先案内人」で、社会の変化に応じて知財が果たす役割を再定義できる人材だ。