今日の日経ビジネスオンラインに「対中制裁では解消しない、中国・知財強国の怖さ」という記事が開催されています。

日経ビジネスに知財の記事が載るのは珍しいです。

 

中国が技術移転を事実上強要していること、ライセンス情報を開示させる点など、いくつかの問題点指摘はその通りかと思います。

 

しかし、(1)中国特許庁が内国人と外国人で新規性の基準を変えてダブルスタンダードであるとか、(2)民間から出向した審査官が公開前の出願情報を漏らしているかもなど、偏見、言いがかりとしか思えない話もあります。

 

(1)の問題は、審査官が不足しているため、判断にばらつきがあるのでしょう。

あるいは、外国企業は特許(発明)を利用するのに対し、中国企業は実案(実用新型)を利用することが多く、進歩性の判断基準が異なるため、内国人に甘く見えるのかもしれません。

 

(2)ですが、実際には、日本出願後1年程度経ってから優先権主張をして中国へ出願するケース、あるいは日本でPCT出願を行い、国際公開後に中国へ移行するケースがほとんどと思います。

前者では、優先日から1年半すなわち、中国出願日から半年少々で公開される訳ですから、未公開情報の流出があったとしてもわずかでしょう。ましてや、後者のように国際公開された後ならば、出願書類に基づく流出は起こりえません。

 

また、中国の場合、早期に審査を受けるには、早期の公開が条件となります。すなわち、審査中の案件は全て公開済の発明になりますので、担当審査官が未公開の出願情報を漏らすことはできません。そして、自分が担当していない案件へ庁内でわざわざアクセスして、流出させる審査官が多数いるとは思えません。

 

マーケットやコストの問題があり、発明が実用化されるのか否かは、発明時にわからないのですから、ある程度の特許出願数が必要なのは論を待ちません。

中国が技術のキャッチアップを進めている以上、出願数を増やす政策は当然であり、知財の補助金や税金の減免が不公平というのは失当です。

 

この記事の著者は元経済産業官僚とのことですが、知財に詳しくない方が、バイアスのかかった記事を書いているように思えてなりませんでした。

 

以下、日経ビジネス記事の引用です。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/061800835/

 しかし、今の中国の知財問題の深刻さはこのような昔ながらの模倣品問題ではない。

 

 米国の制裁理由に挙げられているように、例えば、外国企業が中国に進出する際、中国企業との合弁が求められ、中国政府によって中国企業への技術移転が強要される。また、中国企業が外国企業から技術のライセンスを受けた場合、その改良技術は中国企業のものとなってしまう。つまり、外国企業の技術をマイナーチェンジしただけで中国企業の技術だと主張されてしまう。外国企業が不利な条件を飲まされる法制度になっているのだ。

 

 そして、それが製造強国を目指す国家戦略である「中国製造2025」のための手段の一つとなっているから根が深い。海外からの批判は高まっており、中国政府は「知財保護の強化」を打ち出して批判をかわそうと躍起だ。

 

 中国国家知識産権局によると、2016年に受理した特許出願件数は133.9万件、対前年比21.5%増で6年連続世界一となった。そしてそのほとんどが中国居住者による国内出願だ。ちなみに、世界の特許出願件数1位がZTE、2位がファーウェイで、ともに今、注目されている中国巨大IT企業だ。

 

 もちろんその背景には、中国の目覚ましい科学技術の躍進がある。研究開発費の総額は日本の17兆円に対して42兆円、研究者数も日本の68万人に対して162万人だ(2015年)。この豊富なヒトとカネを使って、量で圧倒している。その結果、引用される重要論文も分野によっては米国を凌ぐまでになっている。従って、特許出願件数も急増するのも当然ではある。

 

 しかし、その異常なほどの急増に、不自然さを感じざるを得ない。例えば、中国企業への特許出願を政府が大いに奨励している。そのこと自体は大いに結構だが、問題は中国人・中国企業による特許出願には補助金が出されているのだ。企業の出願料の負担を考えると、こうした内外の差別的扱いは許されるものではない。

 

 しかも、そもそも特許として認められるためには「新規性」の要件が必要なのは当然なのだが、その点の審査が中国・中国企業が出願した案件については甘いとの声もある。外国人・外国企業との間で二重基準(ダブル・スタンダード)になっているのではないかとの指摘も企業の間ではささやかれている。その結果、中国に進出している日本企業は「公知の事実」だと思っていたら、ある日突然、中国企業から特許侵害として訴えられるという事態もあり得るので要注意だ。

 

 こうして特許申請は急増しているが、これをさばくために、大量の特許審査官が必要になる。中国ではその数、1万数千人というから、日本の数十倍だ。今、中国の各地では特許審査のための組織が急速に拡充されている。人員不足を補うため、審査官の中には中国企業からの出向者も多く採用されている。そうすると、審査中の未公開案件の技術情報も駄々漏れになっているのではないかと疑いたくもなる。

 

 外国企業が中国で事業を展開する際に、中国当局に営業ライセンスを申請すると、さまざまな技術情報を提出させられる。例えば、化粧品では使用する原料の使用比率などの情報を開示させられる。それが中国の競合他社に流れているのではないか、とのうわさは絶えない。