理佐side


こんなに一人の女の子に心を動かされたのは初めてだった。

こんなに一人の女の子のことを知りたいと思ったのは初めてだった。

小林さんと出会った日から頭の中はその子のことでいっぱい。
教師としては本当にいけないことだとわかっている。
でも、この気持ちは納まることを知らない。

そして、この気持ちが何なのかすらいまだにわからない。

小林さんのことをもっと知りたい。もっと、もっと・・・
だから、こういうことをしたらどういう反応をするだろう。とか、こんなことをしたらどんな表情を見せてくれるだろうとか。こんなことしか考えない。

そして、とうとう呼び出してしまった。

今、目の前に小林さんが座っている。

うん、かわいい。

小林さんに何を聞こうか・・・っと、その前に・・・・
ちょっとドッキリをしようと思う。

ガチ説教ドッキリ。さて、どんな反応するかな・・・・


由「本当にすみませんでした・・・以後気を付けるので・・・あのっ」


結果、私の予想通り・・・小林さんのガチ謝り・・・・

なんてまじめな子なんだ・・・私の学生時代なんて先生に対して頭下げた覚えがない。

理「いいよ。顔上げて!そんなにかしこまらなくていいよ!私も全然怒ってないし、冗談・・・って、え!?な、泣いてるの!?」

ふと顔を見ると、小林さんの目から涙があふれていた。

どうしよう・・・泣かせてしまった・・・どうしようどうしよう・・・

理「ご、ごめん!ほんとにごめん!!泣かせるつもりじゃ・・・・」

どうにか泣き止んでほしくて小林さんの背中をさする。

でも・・・それが嫌だったのか、さらに涙が・・・・
やばいやばいやばい。
私は背中をさすることしか思いつかず、しばらくそうしていると

由「ちが、うんですっ・・」

理「え?・・・・」

ち、ちがうって何が・・・?


由「わたし・・・わたなべせんせいにっ、きらわれたんじゃないかって、・・・・」


私に、嫌われる?

私から嫌われたと思ったから、泣いてたってこと・・・・?


由「でもっせんせいだけには、きらわれたくなくてっ・・・おねがいだからっ・・・」

理「・・・・・・・・」


”きらいにならいでっ・・・”


その瞬間、私の中で何かが切れた。

立ち上がろうとした彼女を無理やり抱きしめる。


理「ごめんね。急に・・・嫌だったら振りほどいていいから・・・・」

由「そんなこと、できるわけ・・・ないじゃないですか・・・・・」


あぁ、かわいいなぁ。

彼女から発せられる言葉一つ一つが”愛しく”思う。


え、・・・・いと、しい?・・・いとしい・・・・愛しい・・・・


あぁそうか。やっとわかった。

私は彼女のことが好きなんだ。好きで好きで大好きで。

もう、どうしようもないくらい愛してしまっているんだ。

今まで抑えていた気持ちが自分の中であふれていく。


由「嫌いに、なりましたか・・・私のこと・・・」

小林さんは本当に私が怒って、自分のことを嫌いになったと思ったらしい。
なんて純粋な子なんだろうか。
そんなこと、あるわけがない。

だって、こんなにも愛してしまったのだから。

小林さんの体が微かに震えていると思ったら、再び彼女の目から涙があふれていた。

由「うぅ・・よかった・・・・」


泣いている姿を見ても、かわいいと思ってしまう私は重症なのだろうか。

彼女の背中を優しく叩いていると、


由「せんせっ、・・・好きです・・・」


一瞬耳を疑った。
私は手の動きを止める。


理「それって・・・どういう好きなの・・・・」

由「え?わ、わからないですけど・・・・でも・・・」


”どうしようもないくらい・・・好きなんです。”


理「そっ、か・・・・・うん、私もね、好きだよ。小林さんのこと」

わからない、か・・・・
私は生徒相手に何を期待していたんだろうか。

きっと私の好きと、小林さんの好きは違う。

由「ふふっ、すごい・・・嬉しいです・・・」

彼女の小さな手が私の背中にまわり、キュッと服を握る。

彼女の行動はいちいち私の胸を高鳴らせる。


小林さんも少しは落ち着いたみたいで、元の席に戻る。

っていうか、今回呼んだ理由は小林さんを怒るためでも、泣かせるためでもない。

彼女のことをもっと知るためだ。
まぁ、おかげで自分の気持ちに気づいたけど・・・・

すると小林さんが質問があるって言うから、真面目に答えようと思って彼女の目を見る。


由「”恋”ってなんですか?」



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小林side


由「”恋”ってなんですか?」


しばらく沈黙が流れる。
なんか恥ずかしくなってきた・・・・

渡邉先生を見るとキョトンとした顔で私を見つめる。

理「・・・・・ぷっ」

由「え?・・・」

理「あっはっは!・・はー、面白すぎて涙出てきた・・」

先生はお腹を抱えて笑い、涙を流している。

由「せんせいっ!!もうっ//こっちは真面目に質問してるんですよ!!//」

理「ごめんごめん!小林さんからそんな質問がくるとは思ってなくてね・・・」

由「・・・なんか・・・恋ってどんな感情なのか・・・よくわかんなくて・・・」

理「うーん・・・恋ねぇ・・・」

由「辞書とかでも調べてみたんですけど、まだはっきりとは・・・」

理「ブフッッ!!辞書で調べたの!?あっはっは!」

由「笑わないでください//!!!」

理「ごめんって、・・・えーっとじゃあ、小林さんは誰かに対して特別な気持ちを持ったことはある?」

由「特別な、気持ち?・・・」

特別な気持ちって何だろう・・・

由「と、特別な気持ちって・・・例えばどんな感じなんですか?」

理「うーん・・・例えば・・・ある人に対して、胸が痛くなったりとか?」

え・・・・胸が・・痛くなる・・・・
それって・・・・

理「痛くなるって言っても、病気的な感じじゃなくてね」

私・・・もしかして・・・

理「・・・・心当たりがあるって感じだね、」

由「それって・・・特定の人しか起こらないですよね・・・」

理「・・・うん。よくわかってんじゃん・・・」

渡邉先生が机に肘をかけ、前のめりになる。

先生の顔が近づき、また、胸が痛くなる。


”それが恋だよ”