岩のようにこわばって、硬くなっていく顔。

頬も眉間も顎も喉も、顔中がこわばって痛い。



緊張した時に、ぐっと力が入る。

守るように。


そういう時は、すごく硬い表情と硬い声音で

色を失くしたように硬い言い方になるのを、

もう自分でも知っている。



父が怒りそう、何かを咎められそう

否定されそう、ケチを付けられそう

不機嫌になりそう、大きな声で怒鳴りそう

舌打ちされそう、威圧されそう

脅されそう、強制されそう


「そんなことで大丈夫か」

「それじゃあやっていけないぞ」

「〜させにゃいけないな」

「何やってるんだ」


そうやって目の前の私を見張って

否定する言葉を、批判する言葉を、

潰して壊して価値の無いモノにするような

心無い言葉をかけられる。


自分の価値観と思い込みで

切り刻んで踏み潰して抉り出して

今目の前に在る私を、ぐちゃぐちゃに殺してる。

その事にも気づかずに。



今は違うのに。

変わりゆく時を感じているのに。

分かった事もたくさんあるのに。

その記憶が消えない。消えない。


哀しいほどに

刻まれた傷は時折残酷なほど鮮明に蘇るのだ。




でも、そうやって

緊張と不安に覆われてしまう自分に

負けたくない。

それに浸ってしまうのは

今の自分が弱くて甘えてて、

現実と向き合いたくないから逃げてて、

そんな風にいまだに思ってる。

病気の自分を手放したくない。

辛いから仕方ないんだと思いたい。



だから自分を叱咤して、

頭でどうしたら自分をコントロールできるか

たくさん考えてシミュレーションして、

自分に言い聞かせて厳しくして

そのうちにどんどん身体と心がこわばって、

苦しくて怖くて嫌で辛くて、仕方なくなる。





…でもそのやり方はお父さんと一緒だ。


私をコントロールしようとした父と一緒だ。


そのやり方しか知らなかった。





でも今は違う

母が教えてくれた。

先生が教えてくれた。

友達や周りの人が、生き方で教えてくれた。





私は私を、操作しない。

私は私を、否定しない。

私は私を、批評しない。

私は私を、馬鹿にしない。


私は私に、優しくする。

私は私を、いつでも許す。

私は私が、楽しそうにすることを喜ぶ。

私は私を、あたたかく見守る。


私は私を、よく知ってる。

私は私を、好きだと思う。

私は私を、根拠なく信頼する。

私は私を、良い子だと思う。



私は私を、たくさん褒める。

私は私の、弱さを認める。

私は私の、持ってる強さを感じる。

私は私で、他の誰かとは違う。



私は私で、生きていく。

私は私の生き方を、慈しむ。

それでいいんだ。

そうしたいんだ。

そういう生き方を、していきたいんだ。




守るのではなく、そうしたいからそうする。

戦って傷つくのではなく、

身構えて受け入れるのでもなく、

そんなもんだ、と思う。



お天気も水も時も流れてて

月も星も太陽も輝いてて

鳥も猫も動物も人間も

生き物だから生きてて

えらいとかえらくないとかじゃなくて

生きてるのが普通で

楽しくなってたら良くて

それだけ。




私が「いいな」って思ったらそれでいい。

誰かじゃなくて

私が「いい」って思ったら

それでじゅうぶん。


楽しいとか気持ちいいとか

嬉しいとかわくわくするとか

面白いとか心地よいとか

そう思えるのを、喜ぼうよ。

ここまで来れたことを、喜ぼう。

あの辛い日々から

自由を手にした自分を

誇りに思おう。