83歳男性

 

4か月持続する咳

 

当院は初診患者さんです。他院で糖尿病を管理されており、糖尿病の主治医に咳が続いていることを相談すると咳止めが処方されていたとのことです。お薬手帳を見ると過去3か月にわたって同じ薬が処方されています。症状が増悪傾向のため主治医に咳の症状を訴えると「私は糖尿病の医者なので咳の症状は診られない」と言われたそうです。昨日の夜に、咳が急激に悪くなったため別の救急病院を受診したところ胸部のCTを撮影されて「異常なし」として帰宅となりました。

 

困った患者さんが当院を受診しました。診察室に入室後、聴診器をあてなくても胸部からヒューヒューと音がしています。「喘息/肺気腫混合病態」を考える状態です。

 

β刺激薬の吸入を行いました。1回目の吸入で「咳が楽になった」といわれました。聴診器ではまだヒューヒューと音がしているため2回目の吸入を行いました。呼吸機能検査では混合性肺障害を示しています。慢性管理としての吸入薬を開始しました。明日もまた診察する予定です。

 

一般的には糖尿病専門医を取得するには内科専門医の資格が必要です。糖尿病の専門医でも呼吸器の疾患の診断くらいは出来なくてはいけません。(治療は呼吸器内科の専門医に任せるにしても・・・) 特に田舎は医者の数が少ないので幅広い診療が出来る医者が必要です。

 

糖尿病の医者だから呼吸器疾患の診断はできないなどとは言えないはずなのです。また4か月持続する咳に咳止めだけを処方して喘息/肺気腫の診断すらできないというのは恥ずかしいことだと思います。救急病院でも画像に異常がないとして帰宅させられていますが、画像で異常のない呼吸器疾患を考えなかったのか不思議です。胸部の診察を行えば乾性ラ音が聴取できています。それだけで喘息/肺気腫混合病態を疑えるはずですが。

 

高度医療機関になると専門が細分化され自分の専門以外は診られないということはよくある話なのです。日本の地域医療にプライマリケア医が少ないためこのような医療が行われるのです。