コロナウイルスが流行していた時、患者さんが病院に入院する場合は全員ルーチンにコロナの鼻腔検査が行われていました。これは院内感染予防の観点で、入院している他の患者さんにうつさないための予防的措置でした。当時は患者さんの数も多く、死亡率も高かったのでやむを得ない部分はありました。そもそもコロナウイルスが流行する前はこのような検査をルーチンに行っていませんでした。

 

しかし、一度始められた行動が習慣となってしまうと止め時を考えられないままに続けられることとなります。コロナの流行が過ぎ、死亡率も低下し、5類感染症に移行している現在も入院時コロナ検査を全員に行うべきなのでしょうか? どういう状況になったらルーチン検査を中止するのか考えておく必要があります。管理者会議でそのことを議題にしました。

 

このことを考えていて今回感じたことがあります。組織が硬直化していく原因は、一度始められた習慣にたいし疑問を持たずに「そういうものだ」と思い込むところから始まるのだと思います。そしてベテランと呼ばれる職員ほどその罠にかかりやすくなります。その習慣に疑問をもつのは大抵の場合、新人や他の組織から移動してきた人です。

 

私が大学で研修医を指導していた時、研修医が素朴に感じた疑問を口に出したことがありました。「どうしてこういうやり方をするのですか?」

その時、気が付きました。私たちが常識として習慣化されていることが常に正しいとは限りません。状況が変わればやり方を新しくする必要があります。しかし、多くのベテラン職員は「うちの部署ではこういうやり方ですることになっているの」とその素朴な疑問を否定してしまうのです。こうして組織が硬直化してダメになっていくのだと感じました。

 

研修医に気が付かされました。やはり新人が感じた素朴な疑問は重要です。

 

病院内で同じように習慣化されているけれど誰も疑問に思っていないことがたくさんあります。一度習慣化されたものを変えていくことは大変です。ベテラン職員の反対にあうからです。大きなエネルギーを必要としますが、理論的に説明して変えていく必要があります。