※『強情にGO!』楽曲における勝手な解釈+妄想補完文
※緑青さんと言いますか倉安要素を多大に含みます。苦手な方は特にご注意
※青さん視点、勇者/緑さん、狩人/青さん
映像作品『ズッコケお宝パニック!』の設定を引用・RPG風設定。続・腹ペコ勇者様と狩人が行く!
これは、とある平和なRPG世界の物語。
今日もキャラクター陣はプレイヤー達に雑に振り回されつつも、マイペースに各々の役割を全うしておりました。
時折・プレイヤーも知らない秘密の関係を築いていたりするのですけれど。
* * *
勇者と狩人、共にお城へ招喚されたかと思えば、王命として与えられたのは、まさかのドラゴン討伐。
領内の村を襲う凶悪な魔物が現れたので二人で何とかして来いという、無茶苦茶な命令だった。
今更だが、なんてブラックな国政だろうか…。
王様と大臣はイチャイチャするのに忙しいらしい。
俺達の言い分なんて聞いてくれやしない。
王様は「ドラゴン族は珍しいから記念写真撮って来い」なんて陽気だし。
締まり屋さんの大臣は、国の対魔物予算を徹底的に削りたい方針だと迫って来る。
雀の涙ほどの支度金を渡されて、後は倒すまで帰って来るなとでも言わんばかりに丸投げされてしまった。
トボトボと揃ってお城を後にしながら、さて困ったねと顔を見合わせる。
しかし、さすがは勇者様。俺ほどは動揺を見せていない。
それどころか、既に『必要な物リスト』をまとめて準備を始めようとしてくれていた。
「何も急ぎの予定無いんやったら、今日のうちに出発しよか?欲しいモン言うてくれたら、適当に揃えとくし」
「手際ええなぁ…」
「さっさと済ませてデート再開したいだけや」
艶熱を帯びた妖しげな視線が、じっと此方を射貫く。
…そうなのだ。そもそも俺達は、今日はのんびりと勇者宅でのお家デートを堪能していたところ、まとめて呼び出されたのである。
勇者には休暇なんて無いとか言われたらしい。
一緒に居ると分かっていて邪魔をされた説も濃厚なので、その点でも彼はご機嫌斜め。
早々に準備を終えたらしい勇者様だったが、どうにも普段より荷物が多い。
てっきり戦闘に必要なアイテム類を念入りに集めたのかと思いきや、明らかに調理道具の数々である。
いや、確かに彼は料理上手でもあるけれど…。
「ドラゴンの肉って、食べたことあれへんねん」
「…へ?」
「レア食材やからなぁ、めっちゃ美味いんやて、新鮮なうちに即調理しときたいんや」
出たな、常に腹ペコ勇者様。
勇者という万能職は、どうやら相当燃費が悪いらしく、いつも何かモグモグしている。
しかも本人が料理も好むものだから、そのレパートリーは数知れず。
俺も狩人という職業上、狩りスキルには自信があるが、彼の食に対する情熱には敵わない。
「あぁ安心してや、独り占めしたりせえへんから」
「その心配はしてへんのやって」
この人は既に、倒せるか否かは問題では無く・倒した後の事で頭がいっぱいのようだ。
心強いというのか、美食への執着が凄まじいというのか…。
「そっちの別の荷物は?何持ってきたん?」
「コメは外されへんやろ、必携や」
白米をこよなく愛し、魔物討伐にそれらを抱えていく・本来は超インドア派の勇者殿。
いささか緊張感に欠けるものの、まぁ毎度こんな調子でゆるゆるなので、何とかなるだろう。多分。
グルメ旅なのか村人を救う為なのか、とりあえず勇者と狩人のプチ旅行が始まったのである。
* * *
思ったよりも近かった・該当の村へ到着。
まずはRPG定番の住民への聞き込みから始めて、意外とあっさり魔物の居場所も判明したので幸先良し。
まだ村人側にも大きな被害は無いようだと知って安心した。
…ただ、勇者だけは「調理場が併設されてる宿泊所を探してます」と真剣に聞き込んでいる。
食い気が全開に溢れているなぁ…。
「どないしよか、一泊くらい休んでから朝イチとかで向かおか?」
「いや、直ぐに行こ、今すぐ」
「お、おん…」
彼の発する圧が強烈だ。
ただしこれはファンタジー的なオーラでは無く、既に空腹であるという顕示。
「皆が穏やかに暮らせるように俺達が何とかせんとな!」とか、清々しい棒読み振りである。
時刻は陽も落ちる頃になり、地元の者でも足を踏み入れる事は無い森の奥深く。
だいぶ割愛するが、例のドラゴンに遭遇した後の話。見上げれば何フィートあっただろうか、大きさに圧倒されてしまった。
…しかしまぁ、何というか、色々有りまして。
──結論から言うと。勇者様は、念願の幻の食材にはあり付けなかったのである。
「…はぁ、肉…」
余程食べたかったというのが、ちくちくじわじわ・痛烈に伝わって来る。
宿に戻ってからも、気落ちどころか、切ない溜め息ばかり。ちなみに、夕食はしっかり平らげていたけれど。
ベッド端に座り込んで肩を落とす彼に、そっと歩み寄ると。自分もすぐ横に腰を下ろす。
「ごめんな、俺がワガママ言うたから」
「いや、俺が諦め切れてへんだけやから…気にせんでええよ」
俺達の戦力的には問題無かったのだが。
対象の様子がおかしいので観察してみれば、ドラゴンは既に怪我をしていた所為で、満足に動けずに荒ぶっていただけで。
近隣の村へは危害を加えるというより、近付かないでくれという警告であったと気付いたのだ。
そこで、俺が『見逃してあげて欲しい』とお願いしたのである。
「動物にも優しいもんなお前、動物っちゅうか魔物やけど」
「治してくれてありがとうなぁ、本来の棲み処に戻ってくれてよかった」
彼が回復魔法を使ってくれたおかげで、元気になって村の傍から去っていったのだ。
一件落着ではあるが、勇者殿にしてみれば現状なんの旨味も無かった訳で。
すっかり消沈してしまっている彼を宥めようと、そっと身を寄せる。
後で、街一番のお肉屋さんにでも連れて行ってみようか。それともお酒の方が良いかな、等々。
最近話題の、串の鶏肉をメインに扱ったお店があるのだが、そこに誘ってみようかなぁ…とか。
静かに彼の顔を覗き込むと、すぐに視線が交わるのだ。
「あっ…」
また、あの目だ。生々しい熱を纏わせた、真っ直ぐな欲をぶつけてくる眼。
何もされていないのに、ゾクゾクと身体の芯から悶えて動けなくなってしまうのは何故なのだろう。
「回復魔法って、結構大変なんや」
「…そ、そうなんや?」
残念ながら、狩人職は攻撃もしくはサポート的なスキルしか使えないもので。
その辺りがよく分からないのは申し訳無いが…。
「せやから、俺の方も癒してくれると嬉しいんやけど」
「えっと…?」
此方がマトモな反応を返そうとするよりも早く、腰部に彼の腕が回り、くるんと視界がヘンな動きをする。
押し倒されている事を理解する頃には、濃厚なキスで口を塞がれていたのだ。
「ふぁ…あ…っ」
身体中、情けないほど力が入らなくなっていく。ふわふわする感覚だけが広がっていって、どうしたらいいか分からない。
深くなるばかりの口付けに眩暈がしそうだ。
濡れ絡むような音が卑猥に響いて来ては、抗いようも無く痺れて…。
俺が彼を『癒す』には何をしたらいいのかと問う。
繰り返すが、自分は回復系のスキルは持ち合わせていないからと。
「ふふっ、そのトロけまくった顔で充分癒されるわ」
「…意味分からへん」
慣れた手付きで次々と衣服が剥かれていく。何となく恥ずかしくて身を捩れば、強く抱き締められる。
隙間無く密着する感じがたまらなく嬉しくて、結局自ら擦り寄ってしまう始末。
だってこの身体は、既に調教し倒されているようなものだ。
ほら、今この瞬間でさえも。腰奥が切なく疼いて打ち震える。
一番深いところで繋がってしまう・甘く激しい恍惚を知って…いや、教え込まれたから。
無意識に彼の顔の方へ伸ばした腕が絡め取られ、手の平や指先を甘噛みされた。怪しく舐られる。
その仕草が妙に色っぽくてヤラし過ぎだ。
…あぁ、「俺、食べられてまうんやなぁ」なんて、ぼんやりそんなことを考えて、また歓喜に悶える。
今夜は俺が『食材』なのだなと察しては、彼ならきっと上手に『調理』してくれるだろうという信頼もある。
せめて、明日帰るための体力は残しておいて頂けると嬉しいなぁとお願いしたのに。
…聞こえないふりをされました。
* * *
「王様達になんて説明しよか」
ぽつりと彼が呟いて、俺も思わず頭を抱えた。
ドラゴンを倒して来いとか言われたものの、諸事情で見逃しましたと説明したところで、絶対に納得しなさそう。
証拠になるようなものと言われても提示が難しいし。
いや、ちゃんと説明すれば分かってもらえるはず。
彼等も鬼では無いのだから…。
王城に戻ると、ありのまま・嘘偽り無くすっかりその通りに説明した。
魔物が強過ぎたから逃げ帰って来たのだろう、なんて言われたらどうしようかと思ったが。
「そうか、御苦労」と、あっさり労われたのである。
──しかし、そこで安心したのが甘かった。
大臣がサラリと「ほな、次の討伐先やけど」。
何の話をされているのか分からず、俺と勇者は、揃って疑問符を浮かべまくるしかなかった。
誰が一箇所だって言った?と言わんばかりに、玉座にふんぞり返る王様。
その横で『ドラゴン討伐、次の行き先について』を淡々と話し続ける大臣。
え、そんなにドラゴン族ってあちこちで暴れてるの?
レア種なんじゃなかったの?
ここで勇者殿が「肉…」と呟き。
その目が一瞬キラキラと輝いたのを、俺は見逃さなかった。
『PLAY AGAIN』?
-貴重なお時間を頂き、有難うございました。