執筆記事(商業界12月号) | お客さんが集まる元気なスポーツショップのつくり方
2011-01-21 20:19:48

執筆記事(商業界12月号)

テーマ:執筆記事

執筆記事(商業界12月号)


『地域スポーツ用品店の活路』


【市場分析】


スポーツ用品業界の「導入期」は、1950年代です。


野球用品を中心にして、市場が出来ていきます。


流通の主導権は卸売業者が握っていて、メーカーはまだまだ弱小企業の時期です。


「成長期」は、それからしばらく経った1970年代から1980年代です。


高度成長の波に乗り、スキー・ゴルフ・テニスなどのレジャー型スポーツが
ブームになり、一気に市場が膨らみました。


スポーツ用品が飛ぶように商品が売れたのはこの頃です。


多くのメーカーや輸入商社が成長し、流通の主導権を握ります。


大型のロードサイドショップもこの頃に出現して、流通構造を変えていきました。


「成熟期」は1980年代後半から1990年代前半になります。


1990年の市場規模は1.7兆円となり、ゴルフ用品4200億円、
スキー用品1700億円、テニス用品800億円と、3つのスポーツで市場の
4割を占めた時期でした。


ゴルフコンペも花盛りで、毎週のようにコースでプレイをする人も珍しくありません。

若者はスキーに一生懸命で、スキーゲレンデは滑るところがない位に混雑し、
リフト待ちで長蛇の列です。

テニスコートは、若者ばかりでなく奥様達の社交場として活況を呈します。


これらのブームに乗って、大型チェーンが一気に店舗を増やしていき、
あっというまに全国に出店をしていきます。



しかし、そんな時期は長くは続きません。


1990年代後半には、バブルがはじけて一気にスポーツ用品市場が
しぼんでいくことになります。


いわゆる「斜陽期に」入っていくのです。


特にスキー用品の急激な落ち込みが、業界に大打撃を与えます。


メーカーや問屋の倒産が相次ぎ、冬の時代の到来です。

スポーツショップも、どんどん消えていきます。



2000年代に入っても、しばらくはその傾向が続きましたが、最近ようやく
市場も落ち着きを取り戻したようです。


つまり、現在は「安定期」に入っています。


それでも、2009年の市場規模は1.3兆円、かつて市場を牽引した
ゴルフ用品は2500億円、スキー用品250億円、テニス用品580億円と、
大きく市場規模を落としたままです。


ですから、多くのメーカーは、かつてのような輝きを取り戻せずにいますし、
卸売業はどこに向かって行こうかと試行錯誤を繰り返しています。


小売業に関しては、大型チェーン店の伸びにより、全体の売上は少しずつ
伸びるようになりましたが、中小小売店の売上は相変わらず減り続けています。


毎年5%ほどの店舗が無くなっていて、この5年間で25%の店が消えてしまいました。


ネット通販の市場が拡大していることも、中小店苦戦の原因の一つです。


以前、スポーツ用品はネット販売に適さないと言われていましたが、
今や住宅や自家用車までネットで購入する時代です。


スポーツ用品が販売されるのは当たり前です。

この市場には価格を武器にした新規参入者も多いですが、従来のスポーツ店も
ネット販売に乗り出してきています。


多くの店は価格訴求に頼っている段階ですので、今後の成否は顧客のつかみ方に
あると思われます。


いずれにせよ、ネット販売は増え続けるでしょうが、店頭販売とは違う戦略が
必要になってくるでしょう。



このような状況の中でスポーツ用品業界の将来を考えた時、私は決して悲観的では
ありません。


むしろ、正しい業界の姿になって行く過程にあるのだと思っています。


スポーツ用品市場を押し上げたのは、時代のブームやトレンドになって売れた
という一面があります。


その結果、スポーツ用品の一部は「ファッション商品」になってしまいました。


特に、ウエアやシューズにその傾向が強く、今でも若者のトレンドを追っかけている
メーカーや小売店も少なからずあります。


しかし、そろそろこの手法から脱皮をした方が良いです。


スポーツ用品市場の中心顧客は「スポーツマン」です。


「運動選手」や「競技者」と言ってもいいでしょう。


ですから、彼らの「ニーズ」に応えるべき商品と売場を提供するのが業界の役目です。


その「ニーズ」とは、簡単に言えば「少しでも上達すること」「強くなること」
「健康に過ごせること」「楽しくプレイが出来ること」などではないでしょうか。


それが、スポーツの基本です。


これらのニーズに合った商品開発、市場開発、顧客開発をすることが出来れば、
まだまだスポーツ用品市場の将来は明るいと思われます。


実は、そのために重要な役割を果たすのは地域の中小スポーツ店なのです。


なぜなら、地域のスポーツ店はしっかりと地域の「スポーツマン」を捕らえている
からです。


その「スポーツマン」にスポーツの楽しさを伝えることが出来るのは中小の
スポーツ店です。


さらには、スポーツクラブやチームの支援を通じて、地域のコミュニティー作りに
貢献することも出来ます。


そのスポーツ店の数が毎年減っていることに、業界はもっと危機感を持つべきです。


効率的に売上を伸ばすために、大型スポーツチェーンにばかり力を注ぐのは
決して得策ではありません。


地域のスポーツ店に活力を持っていただくことが、業界再生の道なのです。


では、この地域スポーツ店が今後取るべき戦略は、どんなものであればいいのでしょうか




【具体的戦略】


まずは、今一番業績に苦しんでいる「地域一番店」の戦略について述べます。


地域一番店の多くは、複数店舗を持って営業しています。


そして、複数の地域にまたがって店舗を展開しています。


取扱商品は、スポーツ用品全般です(業界では、これを総合スポーツ店と呼んでいます)。


年間売上は10億円以上の店が多いでしょう。


今、こうした地域一番店の多くが経営に苦しんでいて、この数年間で市場から
退場した店もいくつかありますし、現在再建中のお店もあります。


では、どうして、このような地域一番店の経営が苦しいのでしょう。


その原因は、地域一番店となるまでの過程にあります。


地域一番店となったお店も最初から地域一番だったわけではありません。


その始まりは、きっとパパママストアであったでしょう。


無我夢中で商売をしているうちに、お客様も増え、売上も大きくなっていきます。


意欲のある店は、もう一店お店を出して商圏を拡げようと考えます。


すると、また売上が増えて、もう一店出店することになります。


このようにして、次々とお店を出して、気がついたら地域一番店といわれる店に
なっていたというわけです。


しかし、この地域一番店となったときから苦闘が始まります。なぜでしょう。


それは、この出店の仕方に問題があるからです。


本店を足がかりに新しい店を出すときは、それなりのショップコンセプトを
決めて出店したに違いありません。


新店舗の内装や外装は新しくします。


一方、中身の方は、取扱商品を少し変えるぐらいで、店の運営スタイルは本店と
同じです。


それでも、本店の知名度が及ぶ範囲内での出店なので、順調に売上が伸びます。


また次の出店です。


こうして、最初の何店舗かが、順調に行きます。


そうなると、メーカーや問屋が次から次へとやって来てもてはやします。


その結果、勢いに乗って、二桁にものぼる出店をしてしまうのです。


ところが、この店は、多店舗化に対する確かな戦略があったわけではありません。


成り行きでそうなったともいえます。


ただ本店と同じような店を、他のエリアに作っただけといってもいいでしょう。


そうすると、知らないうちに、在庫がふくらんで行きます。


店舗の運営費用もかさんで来ます。


やがて、財務的に苦しくなってしまい、仕入れた商品の支払さえ出来なくなります。


さらには、「ヒト」の問題が起こります。


最初の出店の頃は、お店のスタッフは本店で鍛えられた人が配属されます。


多店舗化をしても、本店で学んだ人が新店をキリモリできるうちは、大丈夫です。


でも、出店の数が増えてくると、だんだんスタッフの力が弱まってきます。


とくに、店長クラスの人が育ちません。


すると、当然、新しい店舗の販売力が低下します。


これが、多店舗化による経営悪化のパターンです。


こうなった以上、いまさら同じことをしていても問題は解決しません。


そのためには、商品戦略を思いきって変更することです。


商品戦略の変更とは、総合スポーツ店としての品揃えをやめることです。


実は、こうした店は、どれだけ売場スペースがあっても足りません。


だからこそ、大型スポーツチェーンが展開している倉庫のような店が現れるのです。


総合スポーツの品揃えは、大手に任せておきましょう。


それよりも、地域一番店は取扱いスポーツの数を絞り込むことです。


たとえば、サッカーとか、陸上、野球、テニス、バスケット、バレーボール、
フィットネス、ゴルフなど、年間を通して需要のあるスポーツの中から数種目に
絞り込むといいでしょう。


地域一番店のとるべき対策は、まだあります。それは、店舗運営能力の強化です。


商品を絞り込んでも、店舗運営能力が弱ければ売上は伸びません。


その強化のためには、店長に店舗運営権限の多くを移してしまうといいです。


たとえば、店長は全社経営戦略にもとづいて、販売戦略や利益計画を立案します。


今まで本部で行っていた仕事です。商品の仕入れ権限も持ってもらいます。


広告宣伝やイベントの企画もまかせます。資金の運用にも責任があります。


こうなると、店長の能力が今までと同じでは、お店が運営できません。


会社は、店長を教育する必要が出てきます。


とくに「経営」について十分に教育しなければなりません。


財務諸表が読める力だって必要になってきます。


このように、権限を移すと人材が社内で育ちます。


勇気をもって組織を変えていきましょう。




問題は、全国に15,000店ある小規模のスポーツ店です。


地域一番店が今後とるべき方法の一つは、取扱い種目を絞ることでした。


実は、小規模スポーツ店の場合も、同じなのです。


種目を絞ることが、今後とるべき方向としては効果的です。


それも、2種目とか3種目とかではなく、1種目に絞るのがいいでしょう。


「ちょっと待ってほしい! それでは売上が減ってしまう。」という声が聞こえて
きそうです。


気持ちはわかりますが、今のままのスタイルで続ける方が、売上が下がっていく
可能性があります。


どうしてでしょうか。それは、何でもかんでも売ろうとしているからです。


店のスペースが20坪や30坪くらいしかない場合、大した量の商品を置くことは
出来ません。


それにもかかわらず、あれもこれも置いて売っていますから、お客様はあれも
これもと買いに来ます。


欲しいのは、店に置いてある商品ばかりではありません。


それどころか、置いてない商品の方が多いです。


すると、置いてない商品が売れると思って、それを仕入れてしまいます。


ところが、その商品は売れずに残ってしまうのです。


そんなことを繰り返して、気がついたら、店は商品であふれかえっています。


つまり、何でも売っている店は、何も売れない店になってしまうのです。


ですから、ここは思い切って取扱い種目を絞り込んでしまいましょう。


そうすれば、店の性格がはっきりして今までとは違った特徴のある店作りが
出来るようになるのです。


では、どんな種目に絞るといいでしょう。


それは、いうまでもなく、今、あなたの店で一番売上の多い種目がいいに
決まっています。


店は、その強みを活かしてこそ、業績があがります。


しかし、絞りきれない場合はどうしたらいいでしょうか。


そのときは、競技人口や参加人口の多いスポーツを狙うといいでしょう。


そのスポーツが自分の好きなものであることも、条件の一つです。


とはいっても、現在の取扱い種目を絞って、他の種目をやめるとなると、
何もしなければ今までの売上よりも下がる可能性もあります。


そこで、今まで以上の売上や利益が出来るように考えなくてはなりません。
考えることは2つあります。


一つは、商圏を拡げることです。


あなたのお店の商圏が、半径5kmだとします。


種目を絞った場合、商圏を15~20kmのように現在の何倍も広くとらえる必要が
あります。


そうなると、今まで以上に広い範囲のお客様に、お店のことを知って
もらわなくてはなりません。


そのためには、クチコミを利用するのもいいでしょう。


ホームページも活用します。


なるべく費用をかけずに、多くのヒトに知ってもらうことが必要です。


そして、考えることのもう一つは、「売りもの」をもつことです。


とにかく、絞った種目でお客様の評判を立てる必要があります。


まずは、「品揃え」で評判を得ることです。


こだわりのある商品や、貴重な商品などで特徴を出します。


これは、今まで蓄えてきた「目利き」とか「情報」を活かすことです。


つぎは、「修理加工技術」でお客をうならせます。


「日本一のガット張り技術」とか、「日本一のグローブ修理技術」とか、
きわだった技術を提供すればいいのです。


また、「ノウハウや知識」も売りものになります。


「正しいランニングシューズの選び方」とか「強くなるためのトレーニング方法」とか
お客様のためになる情報を提供するのです。


このような「売りもの」を持つことは、商圏が広がることにもつながります。


そして、こうした取扱い品目を絞った店は、大きな都市でないと成功しないと
思っておられるかも知れませんが、決してそんなことはありません。


現実に、全国から注文が押し寄せて、てんてこ舞いをしている片田舎のスポーツ店が
あります。


その店には、それなりのノウハウがあるとはいえ、腹をくくって商売をしている
からこそ、成功をしているのです。


そうした例はたくさんあります。ですから、種目や競技の絞り込みで、
専門スポーツ店の道を切り開いていくことを考えてください。


それから、もっと重要なことがあります。それは、「売り方」です。


つまり、店にとって商品やサービスも大切ですが、より一層お客様に重点を置ことが
必要です。


例えば、どうしたらより多くのお客様が来店していただけるかとか、どうしたら
より多くのお客様にファンになっていただけるか、ということを考えていきます。


そのポイントは「関係作り」です。


広告やチラシのような「マス」ではなく、「個客」ごとに対応します。


クチコミも活用します。


今の時代は、そのための便利なツールがあります。


それは、ブログであったり、ホームページであったり、ソーシャルネットワークで
あったり、インターネットが大きな力になってくれます。


また、デジタルの活用だけでもいけません。


アナログ的な活動、例えばお客様への手紙とか、ニュースレターなどの力も借ります。


要は、お客様一人ひとりの顔を見ながら商売をすることです。


このような手法は手間隙がかかりますが、小規模の店だからこそ出来ることなのです。


その強みを活かして「スポーツマン」のニーズに応え、地域が元気になるために
尽力して行くことが、地域スポーツ店の戦略であり、生きる道なのではないでしょうか。



【以上】


スポーツ店専門コンサルタント梅本泰則さんをフォロー

ブログの更新情報が受け取れて、アクセスが簡単になります

コメント

[コメントする]

Ameba人気のブログ