レギュラー番組の収録前。
いつもの位置に座って、ゲームをしながら出番を待っていた。
俺のすぐ横には携帯。
いつアコから連絡が来ても気付けるように。
あの報道があってから、アコは明らからに落ちていた。
過呼吸になってからは落ちる一方で、無理に笑うその笑顔があまりに痛々しかった。
情緒も不安定で、急に泣き出すことも多くなった。
俺が守ると決めたのに、守りきれていない自分が情けない。
ブーーブーー ブーーブーー
携帯が鳴っていた。アコだ。
ゲームを置き電話に出る。
『はいよ。』
「…………」
『もしもし?アコ⁉︎どした?!』
また具合が悪くなったのかと声が少し大きくなった。
他のメンバーが心配そうにこちらを見る。
「カズさん…」
声が聞こえ安心した。
俺は手でメンバーに“大丈夫”とサインすると、あっちで話して来るとジェスチャーし隣室へと行った。
『はいよ。どした?』
「あの…わたし……。
今日の帰り、○○社の人に話しかけられて…」
チッ
つい舌打ちが出た。
『また同じやつか?くそ。もうアコに近付くなっつんだよ。何言われた?』
「んーん。何も言われてないよ。私は、大丈夫…」
アコの様子が何かおかしい。泣いてるのを隠そうとしてるのもバレバレ。もう少し話を聞いてやりたかったけど
コンコン
“ニノ、呼ばれたよ。先行ってっから。”
タイムオーバーだった。
『アコ、ごめん。も、行かなきゃ。』
「ん…。わたしは、大丈夫…。
カズさん…ごめんなさい。」
『アコ。終わったらすぐ連絡するから、待ってて。』
「カズさん………ありがとう」
『おぉ、じゃ後で。』
そう言って電話を耳から離し電話を切る瞬間
「ばいば…」
そう聞こえた気がした。