生きてる…
「あ、起きました?具合悪くないですか?」
「あの…わたし……」
頭がフワフワする。
「二宮さんが連絡くれたんです。」
「そうだったんですか…。あの、カズさ……二宮さんは…?」
「二宮さんはお仕事です。どうしても抜けられなくて。」
「あの…私、なんだったんでしょうか。」
「過換気症候群…つまり過呼吸じゃないかって。でも、一応落ち着いたら病院受診した方がいいんじゃないかって、ドクターが言ってましたよ。」
「そうですか。すみませんでした、ご迷惑おかけして…」
「いいえ。それより…ふふ。二宮さんがとても心配してましたから、ご連絡してあげた方がいいと思いますよ。過呼吸じゃないかってことは伝えてありますけど、あれから3時間は経ってますから。」
「3時間⁉︎そんなに?」
「えぇ。それじゃあ、また何かありましたらいつでもご連絡下さい。」
「色々ありがとうございました。」
田中さんが去ったあと、早速カズさんに連絡をする。
長いコール音の後、
『もしもーし!アコちゃん?大丈夫?あ!こちら、ニノの携帯です!
“ニノに怒られても知んねーぞ”
いやだって、またなんかあったっって電話だったら大変じゃん!
あ、今ニノちょっといなくて!』
「あ、あの…大丈夫です。ご迷惑おかけしてすみせんでした。また後で掛け直しますので。」
『あ、うん!そーだよね!
“何勝手にやってんすか?”
あ、やべ!ニノ戻ってきた!ちがうんだよ~!アコちゃんからまた何かあったって電話だったら大変だと思って!
“俺はやめとけって言ったんだけどさー。”
“ごめんって、二ノー!俺も心配だったんだよー!”
もしもし、アコ?ちょ、掛け直すわ。』
少し経って折り返し電話がきた。
『あ、アコ、ごめんな。で、大丈夫か?過呼吸だって?も、平気?』
「うん、まだちょっと頭痛いけど…心配かけてごめんなさい。また私のせいで…、田中さんにバレちゃったね。」
『美希さん?あぁ、平気平気。美希さんは大丈夫だよ。味方、俺らの。それよりアコ、無理すんなよ。ごめんな、そっち行ってやれなくて。』
「んーん、大丈夫だよ。私は大丈夫。ごめんね、忙しいのに。お仕事頑張ってね。カズさんも無理しないで。」
『おぉ、あんがと。じゃそろそろ行くわ。また連絡する。』
カズさんとの電話を切った後、なんとも言えない淋しさに襲われ、また私は泣いた。
なんだか情緒不安定で全てが悲しく淋しく感じられた。
また過呼吸になるのではないかという不安も、大きなストレスだった。
わたしはこんなにも弱い人間だっただろうか。
強くいなくては。こんなんじゃ大切な人を守れない。
…強くいなくては。
.
私の過呼吸事件から1週間ほど経った頃。
私達はそれぞれの自宅へと戻っていた。
カズさんは忙しそうで連日深夜の帰宅だったが、私は徐々に日常を取り戻しつつあった。
そんなある日。
仕事の帰りに歩いていると、見覚えのある男の人とすれ違った。
その人はすれ違った途端、
「あ!」
と言って話しかけてきた。